ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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満員電車ほんとひで。


22話 心まで鋼鉄に

俺は、スミの襟首を掴んでいた。

 

「せ、先生……?」

 

「お前……!お前!」

 

「あ、あの、でも、その」

 

正直ぶん殴りたい。

 

……だが、俺はあらかじめ、人質のガキを物置に閉じ込めておいたと言っておかなかった。

 

ガキに構うなとも、ガキを接待するなとも、俺は言っておかなかったのだ。

 

言っておいた決まりを破ったから罰するのは当然だろう。

 

だが、言わなかったが察しろ!と言うのは、理不尽である訳で。

 

と言うより、立場の高い人間による「察しろ!」とか「不文律がー」とか、そう言ったもので苦しんできた俺が、愛するジュラ娘達に対してそんなことを強いることはできないな。

 

……よし、落ち着こう。

 

「ご、ごめんなさいっ!先生が怒るとは思っていました!でも、子供を暗い物置に閉じ込めるなんて、見てられなくて!私、私……!」

 

俺は、泣きながら謝るスミの頭を撫でる。

 

「……分かった、もういい。あらかじめ情報を周知させておかなかった俺が悪い」

 

「い、いえ!私が悪いんです……」

 

「……一つ聞かせろ。俺が怒ると知っていて、こんな馬鹿なことをした理由はなんだ?」

 

「……何もない暗い部屋に、子供が一人で閉じ込められて泣いているんですよ?助けない理由は、ありません」

 

ふむ……。

 

「先生のことは好きです、愛しています。先生のためなら何でもできます。……でも!泣いている人を見捨てることは、できません!」

 

「それで、皆を危険に晒しても、か?」

 

「その時は……!命懸けで戦います!みんなを、貴方を守る!そして、人々も助ける!誰も見捨てたりなんてしない!!!」

 

ああ、クソ。

 

最高にカッコいい、『主人公』だ。

 

 

 

なってしまったからには仕方がない。

 

進んだ時計の針は、神にさえ戻せないのだから。

 

割り切る。

 

今までやってきたように。

 

そう、そうだ。

 

人間、生きていればどこかで、必ず無理をしなきゃならない場面がくる。

 

どんな恵まれた立場に生まれようとも、努力をしなくてはいけない時が、耐え忍ばなくてはならない時が、必ず訪れるのだ。

 

それに対してジタバタと抵抗するのは下策も下策。立ち向かうべき困難から逃げ続けても、何も問題は解決しない。

 

今が踏ん張りどきだ。

 

ジュラ娘達全員と、一生不自由なく生活できるだけの『資材集め』と、どこか遠くの人が来ないところ……『安住の地探し』を。

 

この二つさえ済ませれば、プラントで好きなだけ欲しいものを手にして、毎日美味いものを食い、ジュラ娘達と遊んで暮らせるんだ……!

 

今こそ、今こそが、頑張り時だ。

 

そう……、そうだ。

 

全てを終わらせれば、この世界の国と敵対しようが、嫌われようが、何だって良いのだ。

 

やり抜こう。

 

戦おう。

 

できる限りのことをしよう。

 

 

 

まず、予定通りにダイナー・フォーチュンへと向かう。

 

このダイナーは、シティ・ライコウとシティ・マリィを繋ぐ道の中心地点から一本逸れたところにある。

 

シティ・ライコウとシティ・マリィの間には、アポカリプスの巣があるらしく、ここを避けて通った場合の最短ルートの中心にあるところが、ダイナー・フォーチュンと言う訳だ。

 

ここは、ダイナーの名の通り、食事処でもあるそうだが、交通の要所のために宿屋などもあり、更には、近隣の村々から買付をしにくる人々も多い市場の意味合いも強いらしい。

 

前に立ち寄ったエンジ村も、このダイナー・フォーチュンの市場から食品や衣類などを買い取っているようだ。

 

因みに、エンジ村は、アバドナの甲殻などを売って生計を立てているそうだ。

 

まあ確かに、狩猟がメインの生活では人口も増えないか……。

 

「先生、目的地に到着しました」

 

っと。

 

「ああ、分かった」

 

俺は、報告に来たスミを撫でてやる。

 

「あ、あの……、さっきは、その」

 

「もう良いよ、怒ってない。大丈夫だ」

 

「わ、私、先生に生意気なことを……」

 

「大丈夫。正しいのはスミの方だ、自信を持て。……ただ、甘い考えだけでは生きていけない世界であると、それだけは覚えていてほしい」

 

「は、はいっ!」

 

さて、と。

 

降りるか。

 

外部カメラで見ていた限り、このダイナーは飲食店だったのだろう。

 

スターカフェと書かれた看板に、ダイナー・フォーチュンと刻まれている。

 

そして、そのダイナー・フォーチュンの周りにも、建物が何軒か原形をとどめており、「トモダチマート」「蛸烧ギンタロ」「统者バーガー」などという店舗が並ぶ。

 

相変わらず、血と臓物の腐ったような匂いが漂っているが、ガスマスクをオンラインにすると臭いがフィルタリングされて消える。快適だな。

 

パッと見た感じでは、ダイナー・フォーチュンは飲食店らしく、煮炊きの煙が上がっている。

 

広場では大型のアポカリプスの解体が行われており、血液はベコベコの鍋に回収され、肉は切り分けられてダイナーの裏に運ばれて……、骨や牙はコンビニに送られた。

 

コンビニの方は……、武器屋だろうか?

 

店舗の中には入っていないからよく分からないが、店の外でアポカリプスの骨を削って矢に加工している女がいる。

 

それと、驚いたのは、不毛の大地であるはずのこの世界に植物があることだ。

 

……いや、どうだろうか?

 

大型のキノコみたいな何かと、球状のサボテンのような……、何かだ。植物……、なのか?

 

よく分からない、後で聞いてみよう。

 

降りる。

 

当然の如く、ひみつきちの周りに人だかり。

 

おお、凄いな。

 

人が百人以上いる。

 

まず降りるのは、俺のSPであるモース。その次に秘書のスミ。

 

その次に俺だ。

 

だが、その背後から、更に数名の護衛が俺の左右を固める。

 

ステゴサウルスのステゴ、アンキロサウルスのアン、タペジャラのペイジ。

 

俺自身は、顔を隠すガスマスクを付けて、ストールなどで地肌を極力覆っている。全て、防弾生地でできたものだ。

 

ソシャゲキャラらしいド派手な格好の美女、なんかヤバそうな武装した俺。

 

どっからどう見ても頭のおかしい集団だ。

 

「行くぞ」

 

「「「「はい」」」」

 

さて……、市場はどんな様子だろうか?

 




プログラマ転生が書ける波が来ている。

今のうちに書き溜め書き溜め……。


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