ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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19話 今は動けない、それが運命だけど

「な、なんだあ?!!あいつ、撃ってきたぞ?!!」

 

「クソがあああ!!!シティ・ライコウの市長のガキがいるんだぞ?!どうして撃ってくるんだあっ?!!」

 

「ま、まさかアイツら、俺達と同じ『スジモノ』なんじゃ……?!!」

 

「俺達から人質を奪って、シティ・ライコウからマネーを奪うってことか?!!」

 

「ゆ、許せねェ〜!!!このガキを攫うのに、俺達『バッテンド』がどれだけ苦労したと思っていやがる?!!!」

 

ふむ、話を整理しよう。

 

アイツらは『バッテンド』という、所謂ギャングチームのような存在。ここいらでは最大の勢力を持つ悪党共。

 

主な収入源は略奪に強盗、そして誘拐と薬物。

 

本人達も重度の薬物中毒者で、タガが外れた外道ばかりとのこと。

 

『スジモノ』とは、犯罪者の総称のようなもので、ヤクザも、盗賊も強盗も、詐欺師やスリも全部スジモノと呼ばれる……。

 

……と、エンジ村で聞いていた。

 

そして、この世界には殺人を罰する法律がないから、こういう悪党は殺しても殺されても何もない、とも。

 

「ダメーーーっ!!!」

 

スミが、銃を乱射する俺の腕を掴む。

 

「何考えてるんですか先生?!子供に当たったらどうするつもりなんです?!!」

 

「黙れ!今は問答をしている場合じゃないだろ?!」

 

「やめてください……!先生は優しい人です!」

 

全く……。

 

これだから、ジュラ娘は……。

 

まあ、目眩しにはなったか。

 

俺は、とあるジュラ娘に対してハンドサインを送った。

 

その瞬間!

 

「『テムデグレル・ムング』」

 

煙玉が爆ぜる!

 

刺激物質が含まれた煙に包まれたスジモノ共は、目や喉を掻きむしりながら逃げ惑った……。

 

その隙に、白いフードと外套に黒いマスクをした女が、人質のガキを掴んでこちら側に離脱してくる!

 

「よくやった、ジノー!!!」

 

そう、テリジノザウルスの、ジノーだ。

 

テリジノザウルスはモンゴル辺りで発見された恐竜で、鋭く長い爪を持つ存在。

 

その爪で何をしてきたのかはまだ分かっていないのだが、このジュラ娘のゲームでは、モンゴル出身で馬賊×暗殺者っぽい存在であるとキャラ付けされていた。

 

本編では敵キャラっぽい立ち位置で初登場し、ぽわぽわのやさしいせかいであるジュラ娘世界で、数少ないクールキャラとして描かれている……。

 

もちろんジュラ娘であるからして、根本的な部分はどうしようもないくらいの善人なのだが、目的のためなら仲間とも戦うような苛烈さを持ち合わせている!

 

つまり、汚い手も積極的に使う、ある意味では俺が最も信頼できるジュラ娘であるのだ!

 

ジノーは、鉄の爪でスジモノのパイプ銃を破壊し、胴体に蹴りを入れて吹っ飛ばしつつも、ガキを抱えてタンクの背後に滑り込んでくる。

 

この間、僅か数秒!

 

プロの早業である!

 

「今だ!やれ!」

 

「「「「はいっ!」」」」

 

人質さえ奪えばこちらのもの。

 

あとは数の暴力で、スジモノ共を抑え込んだ……。

 

 

 

俺は、捕まえたスジモノを砂漠のど真ん中に放置することにした。

 

本当は、禍根を残さないように殺しておきたかったのだが、ジュラ娘達が猛反対する為、間接的に殺すことにしたのだ。

 

「で、でも、先生……。あのままじゃ、あの人達……」

 

スミロドンのスミが、そう言って獣耳をペタンと寝かせて、俺に考えを翻すようにと提案してくる。

 

だが、こればかりは譲れない。

 

「じゃあ、あいつらに今まで殺されてきた人達の前で、『悪人だけど殺すのは良くない』と言えるのか、お前は?」

 

俺は厳しい口調でそう言ってやる。

 

優しさと甘さは違う、と。

 

「で、でも!生きていれば償うことも!」

 

「失われた命の対価は命でしか支払えないはずだ。命が尊いならば、それを奪う奴はどうやって償える?償う方法がないだろう?」

 

「それは……っ!」

 

「俺個人の意見としては、禍根を残さないように殺しておきたいということになる。それは否定しない」

 

「駄目です……!貴方にそんなことは、させられません!」

 

「じゃあ、こうするしかないだろうよ。身動き取れなくして砂漠に放置する。裁くのは俺たちではなく、この世界の『運命』だ」

 

「ど、どういう意味ですか?」

 

簡単な話だろうに。

 

「もし、あいつらが、通りがかった人に助けてもらえたならば、それは生き残る運命にあったということだ。逆に死ねば、死ぬ運命にあったということだ」

 

「それは……、どうなん、ですか?」

 

「運命を左右するのは、奴らの普段の行いだ。もしあいつらが普段から良いことをしていれば、友達や家族が探しにきてくれて助かる。悪い奴なら見捨てられて死ぬ。何かおかしいか?」

 

「……うぅ、おかしくないです」

 

「じゃあ、そういうことで」

 

 

 

首から下を砂に埋めたスジモノ共を放置して、俺達は撤収の準備を改めて……。

 

「良くやったわ!お母様にも働きを伝えておいてあげる!さあ、私をシティ・ライコウに送りなさい!」

 

あーーー????

 

なんか居るぞ。

 

これはアレか。

 

人質だった金髪のガキ……。

 

頭が痛い、吐き気がする。

 

俺は胃を抑えて深呼吸した。

 

「それと、私を助けたフードの女は、私の直属の護衛にしてあげるわ!ありがたく思いなさい!」

 

あっちょっとやばい。

 

ゲロ吐きそう。

 

胃薬ごくごく。

 

……落ち着いた。流石は2121年の薬だな、即効で効く。

 

「大変です!先生、攫われた子をお家に返してあげましょう!」

 

善意100%キラキラ笑顔のスミ。

 

うーん、眩しいなあ。

 

「見なかったことにして、適当な近くの街で放置するのはどうだ?」

 

「ダメですよ?!!」

 

駄目か……、そうかあ……。

 

よし、では、前向きに考えよう。

 

ジュラ娘に見られている以上、無抵抗の少女を殺害もしくは放逐すれば、信頼度大幅ダウンは避けられない。

 

信頼できる相手に預けるのがベストだが、常日頃から「この世界の人間を信用するな」と教えている俺が、その辺の適当な奴に人質のガキをスルーパスすれば、それもまた信頼度ダウンの原因となるだろう。

 

おまけに、ジュラ娘は、気持ち悪いくらいに善人なだけで、知能は人並みかそれ以上。

 

それどころか、一部のジュラ娘は俺よりも賢い始末。

 

口先で転がしてどうにかしよう、みたいな、正攻法ではない邪道で行くと、手痛いしっぺ返しが待っているであろうことは想像に難くない。

 

となればこちらも、逆らいにくい正論でゴリ押しして、ダメージを最小限に抑えるべき、か。

 




休みじゃー!

そろそろ鍋の季節だね。

赤辛の鍋の素がめっちゃんまいので毎年あれです。

おすすめの鍋とかある?

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