ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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鶏ハムを作りたいのだが、低温調理が怖くて二の足を踏んでいる。


17話 確かなものが、何にもないね

俺は、自責の念に押し潰されて泣いてしまったアノマの肩を抱きしめ、そのままひみつきちの中へと押し込んだ。

 

俺には、泣いている少女を見て興奮するような変態性癖はない。

 

ただ、憐れみと……。

 

俺の命令よりも、己の善意を優先してしまうという、ジュラ娘の不安定さに危機感を抱いた……。

 

やはり、ジュラ娘は、俺の生命線であることには変わりないのだが、100%の完全な信頼を向けてはいけないな。

 

どこまでいっても、他人は他人なのだから。

 

全て思い通りに動く人間なんていないんだ。例えそれが愛する人々や家族であろうと。

 

しかし……、それにしたって、これは……。

 

とりあえず、移動だ。

 

エンジ村を離れるぞ。

 

 

 

エンジ村から充分に離れた地点で停車。

 

ジュラ娘を集める。

 

そして、今回のアノマのやったことを全員に話して、「こういうことになるから、この世界の人々と関わり合いになってはいけないのだ」と教え込む。

 

しかし……。

 

「先生の言いたいことは分かりました。でも私は、実際に目の前で困っている人がいた時……、その指示を守れるかは、分かりません……」

 

と、このような意見が多かった。

 

やはり、ジュラ娘は善意の人だ。

 

そして、まともな人間の思考をしている。

 

『まとも』な人間なら、ガリガリに痩せ細った子供が道端にいれば、通報したり、何か食べ物を与えたり、そういうことをするだろう。

 

まともな人間には善意があるからな。

 

だが、俺のような冷たい社会人は、「関わり合いになりたくない」とその場を離れるだろう。

 

飽食の大国、日本で、ガリガリに痩せた子供なんて、十中八九虐待だ。そうでなければ難病か?

 

どっちにしろ、性根が腐り切った大多数の凡人は、面倒ごとだと思って見なかったことにするだろう。

 

俺もそうだ、面倒に巻き込まれたくない。

 

つまり、おかしいのは俺と、この世界の方だ。

 

善意ある人間が損をするのは、どう考えてもおかしい。

 

それが社会というものだと言われれば、何も言い返せないが……。

 

だが少なくとも、道徳的に見れば正しいのはジュラ娘であるからして、強く文句は言えない。

 

ジュラ娘に嫌われるのも問題があるし、あくまでも「君達のことを思って言っているんだよ」というスタンスを維持しつつ、厳重注意をして今日は終わった……。

 

「うっ、ううっ、先生ー!」

 

「よしよし、良い子だね、大丈夫だからね」

 

アノマとの慰めックスも忘れずに。

 

 

 

エンジ村からしばらく移動した地点。

 

俺達はここで休憩をしていた。

 

目的地は特にないのだが、道のりを真っ直ぐ辿れば『ダイナー・フォーチュン』なるところにたどり着くらしい。

 

ダイナー・フォーチュンは、沢山のアキンド達が集まっている物資交換所兼、旅人達の休憩所であるそうだ。

 

要するにドライブインみたいなものだろうな。

 

そこに寄って、簡単な取引と情報収集をしようと言うのが、今の目標だ。

 

エンジ村では、あまり情報が得られなかったからな。

 

最終的には『シティ』に行って、更なる情報収集をしたいものだが……、慎重にやると決めたことだし、いきなり大々的に動くのはやめておこう。

 

どの道、こうも砂だらけの砂漠世界では、道路から外れて移動することはできないんだ。

 

道なりに進むしかない。

 

それに、シティで水を購入したいしな。

 

汚染水でも何でも良い。ひみつきちのプラントで再構成して浄化するんだから。

 

その辺の砂を水に変換するには、流石にエネルギーがかかり過ぎる。

 

ゲームの内部的にも、『動物性素材』『植物性素材』『無機素材』『希土素材』という四種類の素材を使っていたからな。

 

この中から更に細分化されたものが『育成アイテム』であり、使用することによりジュラ娘のレベル限界突破をする、みたいな設定がある。

 

で、別系統の素材をまた別系統の素材に変換しようとすると、3つアイテムを消費して2つに変換される……、みたいなのがある。ソシャゲあるあるだ。

 

だから節約できるところは節約して……、そうだ、それよりも、予備のプラントや様々な装置を作らなければ。

 

このひみつきちにあるプラント一つがなくなれば全てが終わりだなんて、冷静に考えればヤバ過ぎる。

 

無論、2121年の未来のシステムで、予備パーツがある上で、ナノマシンによる自動的な保守点検がなされるとしても、それでもなお俺は不安だ。

 

ジュラ娘達の命も預かっている以上、警戒に警戒を重ねて、石橋を叩いて渡る必要がある。

 

当面の目標は、資材集めだな。

 

全国津々浦々、ゴミ拾いの旅と行こうか。

 

そんなことを思いながら、アイスコーヒーの入ったマグカップを傾けていると……。

 

「センセ、この先に何か建物があるよ!」

 

と、飛行系ジュラ娘が上から声をかけてきてくれた。

 

「建物とは?」

 

「多分、ガソリンスタンドかな……?アタシはそういうの分かんないしー」

 

偵察をしていたプテラは、そう言って俺の手からアイスコーヒーを盗んで飲んだ。

 

「うひっ、苦〜!」

 

が、ブラックは飲めないようだ。

 

ガソリンスタンド、か……。

 

俺がそう悩んでいると……。

 

「んーっ♡口直し〜♡」

 

プテラに、口内を蹂躙するかのようなディープキスをされた。

 

コーヒーと、蜜のように甘い唾液が絡み合う……。

 

まあ別に不快ではないので、好きにさせておこう。

 

で、ガソリンスタンドだが。

 

流石に、最早石油などは一滴も残っていないだろう。

 

エンジ村でも、この世界では陸鳥のような家畜に乗って移動するのがポピュラーであると聞いたからな。

 

となると廃墟となるだろうが……。

 

「んぷぁ……♡」

 

プテラを引き剥がすと、先程までナメクジの交尾のように絡み合っていた舌と舌が、淫靡で粘着質な音を立てつつ剥がれた。

 

キラキラと、砂漠の太陽に照らされる唾液のアーチを眺めながらも、俺はこう言った。

 

「何か良い素材はありそうだったか?」

 




ぼく氏、いつもあまり何も考えてないけど、基本的に中世ナーロッパ舞台!というと十二世紀前後くらいをイメージして書いてます。

けど、今プロットを組み立てているハードコアファンタジーものは、大体九世紀前後をモデルにしたいなーと思います。

九世紀ハードコアファンタジーだとどうなるか?んー、そうですね、皆さんが思っている以上にショボい規模の話になると思いますよ。

石造りのドラクエみたいな城はなく、基本的に砦と館の中間みたいな城で小規模な感じ。

人も少ないし、中央集権国家じゃないし、人々はもっと野蛮で迷信を信じている。

村の外れに魔女や祈祷師が住み、村人達はそれに畏怖と敬意を持つ。ほら、表では「魔女様!お願いします!村の牛が病気なのです!」と謙り、裏では「おぞましい魔女め……」「しっ!やめろ!呪われたらどうするんだ?!」みたいな?

こういう感じの世界観を、無理矢理ナーロッパにしようと暗躍する気狂いが主人公です。


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