ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あーーー。


16話 I wonder where you are my friend

エンジ村の村長とやらに会いに行った。

 

……笑わなかったことを褒めて欲しい。

 

いや、本当に。

 

何せ見た目が、完全に、例のポストアポカリプス拳法漫画の「種籾じいさん」だったから……。

 

俺は世紀末救世主とかじゃないんだが……。

 

そんな村長から話を聞いたが、分かったことは少ない。

 

まず第一に、この世界はそんなに人が多くないと言うこと。

 

エンジ村が特別貧相という訳ではなく、どこもこんなものなんだとか。

 

但し、『シティ』と呼ばれる場所がいくつかあり、そこにはたくさんの人がいるとか。

 

この村から東の方向に『シティ・ライコウ』というところがあって、そこから来るカリュード……狩人がたまにこの辺にも来るとかなんだとか。

 

また、乗り物はこの世界には存在しないのかポピュラーではないのか、そんな感じらしく、基本的には『チバシリ』という鳥?みたいなのに乗って移動するらしい。

 

噂によると、シティの支配階級であるノブリス(貴人って意味か?)は、馬車のようなものに乗って移動するんだとか。

 

ガソリン車は、そもそもガソリンがないから存在しないってことか?

 

EV車も……、電気はないのだろうか?

 

幸い、この辺は一年中この調子で暑いらしいから、煮炊き以外では燃料も要らないんだとか。

 

夜は相当な寒さだが、身を寄せ合って眠るんだそうだ。

 

燃料は、薪ではなく、半固形の粘土ような何かを燃やすらしい。これは、ある種のクリーチャーの血液を加工したものなんだそうだ。

 

後は……、そう。

 

銃器は珍しいが、生産はされているらしく、マネーがあれば買えるとか。

 

食料は基本的にクリーチャーを焼いて食べるか、クリーチャーを原材料として作られる栄養バーみたいなのがあるらしい。味?地獄そのものだったよ。

 

栄養バーは『リョーショク』と言い、シティには必ずこのリョーショクを作る設備と、水の湧く『オアシス』があるんだそうだ。その二つがシティの条件なんだと。

 

シティ……、シティかあ……。

 

うーん、どうだろうか?

 

あまり近寄りたくはないが……。

 

いや、だが、調査をしたいというのは本当だしな。

 

不用意な接触をして話が拗れると面倒だが。

 

シティ・ライコウとやらについてさらに詳しく訊ねる。

 

村長もあまり詳しくは知らないようだが……。

 

『リョーショク』が作れる。

 

『オアシス』がある。

 

人がたくさんいる。

 

それ以外に……。

 

『武器工場』がある。

 

『農業』が盛ん。

 

ということが聞き出せた。

 

ふむ……、なるほど。

 

大体分かった。

 

 

 

そうして、俺が村を移動しようとなった時……。

 

「どうした?!」

 

ひみつきちの隣に、人集りができていた。

 

村人に囲まれているのは……、カンブリア紀の海中捕食者、アノマロカリスのアノマだ。

 

赤い髪をオカッパ、つまりはボブカットにしている、オーバーオールを着たヤンチャな少女。

 

村人は……。

 

「くれ!そのリョーショクをくれ!」

 

「俺にもくれ!」

 

「うちには子供がいるの!お願い!お願いします!」

 

と、アノマに縋り付いている。

 

「ひ、ひいっ!分かったよぅ!アノマのおやつならあげる!あげるからぁ!」

 

あいつ……、まさか。

 

「おい、アノマ!何をやった?!」

 

俺は、アノマを問い詰めた。

 

「せ、先生……」

 

「何をやった、言え」

 

「わ、私は、ただ、おやつを分けてあげただけよ……?」

 

や、やりやがった……!

 

「はあーーーっ……、どうするか……」

 

頭を抱える。

 

どうするか……。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「……その『ごめんなさい』は、何に対してのごめんなさいなんだ?」

 

もし、意味もなくとりあえず謝っておこう、などという考え方をされたなら、俺は流石に堪えきれんぞ。

 

「え、えっと、先生が、『この世界の人とおしゃべりしちゃダメ』って約束を……」

 

ふむ……、そこは理解してるのか。

 

「何故、こんなことをした?」

 

俺は、亡者のように近寄る村人を、護衛のタンク系ジュラ娘に押し退けさせながら、アノマに訊ねる。

 

努めて優しげに、怒りを押し殺して。

 

「だって、かわいそうだったから……。お腹すいたって、子供達が……!みんな、あんなに痩せてて!」

 

ああ、なるほど。

 

流石は、SNSで『やさしいせかい』と言われまくっている世界から来たジュラ娘だ。

 

いかにも、だな。

 

「つまりお前は、善意で、美味しいお菓子をあげてしまったのか」

 

「うん……」

 

俺は、バックパックから、村長に売ってもらった一本のリョーショクを出す。

 

「食え」

 

「え?」

 

「食え」

 

リョーショクは、赤黒く四角い栄養バーで、チョコプロテインバーのようにねっとりしている。

 

それを一口、アノマは齧った。

 

「う……?!!!ゔぉええっ!苦い!臭い!不味いっ!!!」

 

その瞬間、アノマは嘔吐した。

 

「ひ、酷いよ、先生……」

 

「アノマ、それ、なんだと思う?」

 

「分かんないよ!何この不味いの?!そもそも、食べ物じゃないでしょこれ?!」

 

「それはな、この世界の人のご飯なんだ」

 

俺がそう告げる。

 

「え……?」

 

アノマは、それを聞いて呆けたような声を出すが……。

 

「……え?嘘、嘘だよね?」

 

段々と顔が青くなっていった。

 

「嘘じゃない。この世界の人はみんな、お前が吐き出した『食べ物じゃないもの』を食べて一生を過ごすんだ」

 

「じゃあ、私、私は」

 

「アノマ……、お前は最低なことをした。これを食べている人達に、美味しいお菓子を与えてしまったんだ」

 

「わ、私、違う、そんなつもりじゃ……!」

 

「ああ、分かっている。お前は良い子だ。親切のつもりだったんだよな?……だが、この世界の人達は、美味しいお菓子の味を知ったのに、これから一緒アレを食べ続けなきゃならない」

 

「わ、私、は……」

 

「こういうことがあるから、この世界の人とは話しちゃいけないと言っておいたんだ」

 

「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!!」

 

「もう良い、怒ってないよ。帰ろう、な?」

 

しゃがんで、アノマと目を合わせながら、肩を叩いてそう言った俺に。

 

アノマは。

 

「……うん、分かった」

 

と、か細い声で追従した。

 




ウィッチャーでシリ編やるの、主人公が強過ぎて別キャラの描写を濃くして誤魔化そうとする俺に似ている……。



ウィッチャーをやればやるほど、ハードコアファンタジーもののネタが生まれてゆく……。

ハードコア主人公もの、ハードコアファンタジー世界に転生したのに、「いや僕はライトファンタジーがいいです」とか言って、最終的に「せや!この世界をライトファンタジーにしよう!」と言って活動を始めるんだよね。

レベルアップ術式(クソ禁術)を作って、レベルアップ術式を使うモンスター狩人(冒険者的なシステム)を組織し、クエストを作って配布する……。

で、本人は、古代から生きている一般通過エルフなので、喋り方が古めかしくて神秘的。そして、長きに渡るぼっち生活で表情もあまり変わらない。

主人公「えっ君そんなつまんねーことまだやってんの?草ァ!」
↓(現代語訳)
主人公「貴公……、未だにそのような下らぬことをしているのか?笑止……」

みたいに聞こえる訳よ。

で、「わーい!クエストだー!」とか言いながら、ありとあらゆる面倒ごとに首突っ込んでたら、なんか気づいたらカリスマ大英雄になっちゃってたって話。

それから数百年後。主人公の活躍が英雄譚となって久しい現代(九世紀イギリス風ハードコアファンタジー世界)に、主人公がお助けキャラを自称して、その辺で色々なやつの後方彼氏ヅラしながら見守る……、みたいな話になると思います。

イカれてやがる。

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