ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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15話 そっとしておいてくれ

ジュラ娘達に謝罪し、禊を済ませた俺は、当初の予定通りにエンジ村という村に向かう。

 

もちろん、反省点を活かして、十人を超えるジュラ娘をスーパーマーケットに派遣して、物資が破壊されるのを覚悟の上で化け物……、この世界ではアポカリプスと呼ばれるそれらを叩き潰した。

 

まあ、余計なことをしなければ、倒すだけなら簡単なんだよ。

 

物資はそこそこ駄目になってしまったが仕方ない。

 

タンクが後衛を守りつつ、アタッカーがクリーチャー共を蹴散らし、後ろからヒーラーが回復する。

 

これなら、何が出ようとそうそう負けることはない。

 

そして、完全に残敵が排除されたスーパーマーケットから、物資を根こそぎもらっていった。

 

……あ、因みに、缶詰を開けて食べてみたが、鉄の味がしたぞ。食えないこともない、って感じか。まあ、アポカリプスの肉よりかはマシかなあ。

 

 

 

さて。

 

エンジ村。

 

村ならば、少なめに見積もっても百人くらいはいそうだな。

 

容量の足りない昔のゲームでもあるまいし、村人数人で村です!などとは言い張らないはずだ。

 

何百万人もいる都市ならば、ひみつきちで乗り入れるのにも躊躇する。

 

一万人くらいが一気に攻めてきたら、ジュラ娘達も対応できないかもしれないからな。

 

だが、相手が村レベルなら、攻撃されたとしてもジュラ娘の処理能力を超えることはないだろう。

 

なのでそのまま、ひみつきちで乗り入れることとする。

 

……そもそも、道路から外れると移動が困難だから、どの道ひみつきちで乗り入れることになるのだが。

 

ひみつきちのスペックなら、道路のない砂漠を走っても問題ないが、GPSもないこの世界で、道路から外れて行動すれば、即座に迷うだろうからな。

 

まあ、街一つくらいなら、どうにか避けて通り過ぎることも不可能ではないだろうが……。

 

いや、駄目だ駄目だ。

 

そういった愚行を二度と犯してたまるものか!

 

ジュラ娘全員で行動するぞ!

 

 

 

さて、ポツポツと、廃墟が多い領域に来たな。

 

エンジ村も近いんじゃないだろうか?

 

まだこの辺は廃墟だろうが……。

 

……ん?

 

外部モニタに反応。

 

これは……?

 

「子供、か?」

 

数人の、見窄らしい格好をした子供がこちらを見ている。

 

村から遊びに来た悪ガキ、とかかな?

 

話を聞いてみようか。

 

俺は、ひみつきちのAIに停止を命令する。

 

そして、護衛を連れて下車。

 

「おい、そこのガキ」

 

俺は声をかける。

 

やや高圧的だが、あまり下手に出るのもおかしいからな。

 

この世界はかなり貧しいようだし、こんなデカい乗り物に乗っている金持ちそうな奴が下手に出てきたら気持ち悪いし怪しいだろう?

 

まあ、既にどうしようもなく怪しくはあるのだが……。

 

それでも、南方から調査に来た金持ち兵団の『恐竜旅団』というスタンスで行くことにしているので、今更方向は変えられない。

 

「ひっ……!」

 

ガキ共は怯えた表情を見せる。

 

俺はサディストではないので、怯えたガキを見て喜ぶ趣味はない。

 

早く用事を済ませよう。

 

八歳くらいのガキ数人を背中に庇う、十二、三歳くらいのガキ。

 

砂で薄汚れた肌を、飾り気のない砂色の貫頭衣で包む、黒髪の少女。

 

パッと見た印象は、俺が子供の頃に大流行りしていたジャプンのポストアポカリプス拳法ものの漫画、『極斗の拳』に出てくる一般市民キャラの格好って感じだ。

 

懐かしいな、あの漫画……。

 

やっぱりこの世界も、棘付きのレザー肩パッドのモヒカンが襲い掛かって来たりするのだろうか?

 

怖過ぎる。

 

種籾が取られてしまいそうだ。

 

「な、何か用なの?」

 

おっと、質問をしなくては。

 

「この辺りにエンジ村というところがあるそうだな」

 

「えっ……?!む、村に何の用?!」

 

「我々は恐竜旅団。南から来た武装調査隊だ。このイーストポリスという地区について調べている」

 

ハハッ、自分で言ってて訳わかんねー……。

 

何だよ、武装調査隊って。

 

そんなんアリなのか?

 

だが、これ以上に思いつかないからな。

 

「よ、よくわかんない……」

 

おっと、知能レベル。

 

「この辺りを調べている。俺達は兵士だ」

 

「へい、し?何それ……?」

 

「戦う人間だ」

 

「戦う……?カリュードのこと?」

 

カリュードって何だよ……。

 

カリュード、カリュード……、ああ、狩人(かりうど)か?

 

この世界の言葉は、意味不明な訛りやらがあって分かりにくいな。

 

「そんなところだ」

 

「何で調べてるの?」

 

「上司の……、あー、偉い人からの命令だ。仕事だよ」

 

「シゴトなんだ……。分かった、村のことなら村長に聞いて」

 

「村長はどこにいる?」

 

「あそこの家」

 

……は?

 

冗談きついぜ。

 

ここがエンジ村だってのかよ?!

 

廃墟と何が違うんだ?!

 

……落ち着こう。

 

俺は、周囲を見回す……。

 

すると、建物の中に、ちらほらと人がいることが分かる。遠巻きにこちらを見ているのだ。

 

……だが、人数は二十人に満たない。

 

そうか……、ここが村なのか……。

 

既に村に到着していたんだな……。

 

人数も少ない。

 

流石に、昔のフォミコンゲームほどではないが、それでも、村人全員で三十人にも満たないのは、どう考えても少な過ぎる。

 

俺の生まれた地域も結構な過疎地域だったが、それでも数千人は住民がいたんだが……。

 

となると、この世界の人類はかなり少ないのか……?

 

いや、この辺りが過疎地域だと言うだけで、都会と定義できる地域があるのやも……。

 

……データが足りない以上、断言できることはないな。

 

仮説はいくらでも立てられるし、人間的な直感というか、この世界の荒廃ぶりをこうして見れば、希望なんて一切ないことは理解できてしまう。

 

だが、俺だって博士号を持っているからな。

 

つまりは、自分の目で見て納得できるいくつものデータがなければ、何事も断言はできないのだ。

 

もしかしたら、局地的に栄えている都市もあるかもしれないだろう?

 

いや、それはまあ、この荒廃ぶりを見れば、感情的には「そんなことはあり得ない!」と言いたくなってしまうが。

 

しかし、可能性がゼロじゃない限り、我々学者としては、この世界が完全に滅んでいると断言はできないんだよ。

 

データなしに偏見で語ることはできないだ。

 

SNSで大騒ぎしている自称学者じゃあるまいしな。

 

よし……、では、村長とやらに話を聞いてみようか。

 




ウィッチャーがクソ面白くて困る。

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