ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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風邪かもしれん。


13話 震えるな、瞳凝らせよ

クソ!

 

なにが実戦経験だ!

 

この世界はゲームじゃないんだぞ?!

 

例え、安全のように見えても、無理はしないべきだった!

 

戦術なんて不要で、ただ、最大火力とジュラ娘の大人数ですり潰すのが最適だったんだ!

 

俺は、バックヤードから現れた大量のゾンビもどきに射撃しながら、内心で叫んだ。

 

失敗だ、失態だ。

 

調子に乗った。

 

クソ、クソ、クソ!

 

だが。

 

俺は、ハンドガンのリロードと共に、大きく息を吸って、吐いた。

 

よし、切り替えよう。

 

やってしまったものは仕方ない。

 

寧ろ、リカバリが利く失敗で良かったとも言える。

 

ミスをしたことはトラウマ……とまでは言わないが、長く記憶できる。

 

強く印象に残るのだ。

 

そしてそれは、再発防止に繋がる。

 

例えば、だ。

 

「暴力はいけない!」などと口ではよく言うが、結局、暴力を軽々しく振るう人間は割と多い。

 

そう言った人間は、何故そんなことをするのか?

 

「暴力」について正しく理解していないからだ。

 

そんな奴は、とっても厳しいフルコン空手道場に一年間閉じ込めて毎日ボコボコにされれば、本当の意味で「暴力は良くない」と理解できるだろう。

 

俺も同じだ。

 

実体験、痛み。

 

肝胆が芯から冷えるような恐怖と苦痛を以てこそ、人という愚かな生き物は学ぶのだ。

 

「命がかかっている」と言うことを正しく理解していなかった。

 

もちろん、表面的には分かっていたのだが、こうしてピンチに陥り、頭ではなく心で理解した。

 

俺は、自分の命だけでなく、ジュラ娘達の命も預かっているのだ。

 

なれば今後は、このような油断はしない。

 

それこそ、肝に銘じる、というやつだ。

 

はあ……、さて。

 

バックヤード、倉庫から現れたのは、十体を超えるゾンビのようなもの。

 

「アフリカの恵まれないコドモタチ」の如く、ガリガリに痩せ細った人型で。

 

その癖、人体ではありえないほどの白肌。これは恐らく、アバドナや、叫び猿と同じクリーチャーである証拠だろう。

 

白濁した瞳、裂けた口。皮膚は崩れ落ちており、鼻も耳もない。

 

しかして、皮膚の下から覗く肉も、人間ではありえない白色。

 

これを見てジュラ娘も敵だと認識したらしく……。

 

「行きマース!」

 

『ガギャギャギャギャ?!!!』

 

メロがチェーンソーで袈裟斬りに。

 

「気持ち悪ーい!来ないでよー!」

 

レクスが大剣でぶん殴り。

 

「ダーリンには指一本触れさせないんだからっ!」

 

マイが箒で吹き飛ばす。

 

俺は数発めくら撃ちに発砲してから、ダッシュで逃げる。

 

撃つ、逃げる、撃つ、リロード。

 

「クソが!まだいるのかよ?!!」

 

「まだ来るヨー!」

 

クソ!

 

大変にクソ!

 

しゃあねえな!

 

使ったことなんざないし、こんなところで使うのは危険だが……。

 

「手榴弾いくぞ!」

 

ピンを抜いて、投げる!

 

「走れエェッ!!!!」

 

叫ぶ!

 

そして、走る!

 

確か、ピンを抜いてから十秒で爆発だったか?

 

なら、あと、四、三、二の……。

 

轟音!

 

爆轟!

 

爆風を背に受けながら走る!

 

そして……!

 

「見えた!出口だ!」

 

ジュラ娘達が出迎えてくれた!

 

ん?

 

何かを叫んでいるな。

 

手榴弾で耳が麻痺しているから、うまく聞き取れない……。

 

ええと、背後に指をさして……?

 

口の動きを見ると……。

 

『う、し、ろ』……?

 

振り向く。

 

すると。

 

『グオオオオッ!!!!』

 

黒色の化け物が、鉤爪を振り下ろすところだった。

 

反射的に転がって避けられたのは、奇跡と言って良いだろう。

 

化け物……。

 

人と爬虫類を掛け合わせたような、鱗の生えた人型。

 

前傾した体躯、肥大化し、鋭い鉤爪の生えた両腕を前に垂らしている。

 

酸性の涎の垂れる、黄色い牙がずらりと並ぶ口。

 

三つの瞳は、別々の方向をぎょろりと見ている。

 

大きさは2mと少しくらいか。

 

「何っ……だよテメーはよぉ?!!!」

 

転がったせいで体勢を崩している俺に、レクスが覆いかぶさる。

 

「レクスっ?!!」

 

「痛ッ……!だ、大丈夫!」

 

そう思った瞬間、レクスに飛んできた化け物の鉤爪。

 

その一撃で、レクスの背中が斬られたらしく、血液が舞う。

 

「クソがぁっ!!!」

 

俺は、レクスの脇から銃を伸ばして発砲。

 

『ギィッ?!』

 

当たったようだが……、致命傷には程遠い。

 

出血はしたようだが、光の線となった弾丸が、表皮の鱗に弾かれて逸れたのが見えた。

 

「先生、行くよお〜!」

 

レクスは、背中の痛みを堪えつつも、俺を抱きしめたまま走り出した。

 

そして、脱出……。

 

それと入れ違いに。

 

「テメェ……、よくもやりやがったなァ!!!」

 

ジュラ娘『最強の存在』……。

 

ティラノサウルスのティラが、黒い化け物に相対した。

 

『グオオオオッ!!!』

 

化け物は、刃渡りが50cmはあるであろう鉤爪を、凄まじい速さで振るう。

 

だが……。

 

「遅えッ!!!」

 

ティラの方が速い。

 

プリズムの如く輝く粒子が集まり……、ティラの手には、2mを超える刃渡りの、竜の鱗や牙を加工して作ったかのような蛮刀大剣が握られていた。

 

その見た目からして、100kgは優に超えているであろう巨大な剣を、小枝でも振り回すかのように、片手で振り抜く。

 

『ギャオオオオッ?!!!』

 

マグナム弾など目じゃない、未来の超高威力なハンドガンを受けてもほぼ無傷だった黒い化け物の、その堅牢そうな腕が。

 

あっさりと、ごくあっさりと切断された。

 

「死ね……!《デストラクション・ファング》!!!」

 

驚いたのか?化け物はどうやら、怯んだようだ。

 

その瞬間に叩き込まれる、必殺の技。

 

ジュラ娘の『ダイノ・スキル』……。

 

★★★★★(ダイナミックレア)のティラが持つ、三つのスキルのうち一つ。

 

破壊の牙こと、《デストラクション・ファング》は。

 

ゲーム内では、ATKの500%ダメージを単体に与える、シンプルかつ強力なスキルだった。

 

現実では……。

 

「何だありゃ?!」

 

紅蓮の焔が、ティラノサウルスの頭の形になり……。

 

『ギャ』

 

黒い化け物を、断末魔を残すことすら許さずに、一瞬で丸呑みした。

 

ついでに、化け物が立っていた地面も、隕石が着弾したかのようにガッツリ抉れて。

 

スーパーマーケットも、巨大な竜に齧られたかのように、建物と床に歯形を残して「削ぎ取られ」た。

 

そしてその断面は、超高温により炭化し真っ黒に……。

 

何アレ怖……。

 




ウィッチャー、面白いんだけど現代のゲームと比べると親切さが足りないな。まあそれはしゃーない。

助けた奴が後で盗賊になって人を殺していた!みたいなの、嫌いだけど好きです。俺もこういうハードコアファンタジー書きたい。

既存作品のTRPGものと被るんじゃね?とは思ったけど、それぞれ違うタイプのサイコパスですから安心してください。

TRPGもの主人公
→自分が主人公。あくまで自分中心で、周りはサブキャラ。世界を『章』で捉えており、長生きしても自分が主人公、ナンバリングタイトルで主人公続投と思い込んでいるキチガイ。
「俺が主人公だ、俺が英雄だ。最大最高の、世界の頂点だ」

ハードコアファンタジーもの主人公
→自分は主人公の一人。自分の物語はもう終わった。あとは他の主人公の話で、自分はお助けキャラ。世界を『部』で捉えており、ナンバリングタイトルで舞台設定そのままで主人公変更と思い込んでいるキチガイ。
「私の物語はとうに終わっている。空条承太郎のように、頼れるサブキャラクターとして世界を見守ろう」

TRPGもの主人公は、あくまでも英雄ロールプレイする半邪神マンなので、実は悪いことしてない人に危害は加えないし有益だったりする。

しかし、ハードコアファンタジーもの主人公は、お助けキャラと称して碌でもない「お助け行為」をしてくるし、世界側を変えてくるのでクソ。被害甚大。


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