この一ヶ月間、腰を振っていた記憶しかない。
流石は野生の生き物と言うべきか……。
ジュラ娘達の欲求は、かなり強かった。
……とは言え、このままここで搾り取られるだけの日々を過ごせば、俺は早々に干物になってしまう。
良い加減、動き出すべきだろう。
俺は、隣で、裸のまま寝ているスミを起こして、野営場に向かう……。
「スミー、起きろー」
「んぇ……?先生?おはようのチューしてください〜」
「ん……、ほら、これで良いか?」
「えへへ……、もう一回お願いしましゅ」
「ほらほら、いくらでもしてやるから起きろー」
「ふぁ〜い」
「「「「おはよー!先生!」」」」
「はーい、おはよー」
完全に女子校のノリ。
おじさん、ついてけないよ……。
まあ、今はおじさんじゃないけどさあ。
何かこう……、アレだよね。
キャピキャピしてるよね。
死語?そうね。
さあ……、さっさと動くぞ。
今動かないと、ダラダラと延々に動けなくなりそうだしな。
えーっと……。
「トロ、リッケ、マメ!ちょっと来い!」
「うむ」「はい」「何アルカ?」
トロオドンのトロ、トリケラトプスのリッケ、マメンチサウルスのマメ。
この辺りは、まだ頭が回る方だ。
……しっかし、マメンチサウルスの原産地が中国だからって、中華娘にするのは安易過ぎて笑ったなあ。
まあ、それはさておき……。
「報告を聞きたい」
と、俺は言った。
「分かった。まず、これを見てくれ」
トロが差し出した資料を見る。
結果、半径二十キロ圏内に何もなし、とのことだった。
正確には、たまに廃墟は見つかるのだが、廃墟にはマジで何にもないそうだ。
しかし、北東十八キロ地点にある廃墟に、人がいたような痕跡を発見、とある……。
「人の痕跡とは?」
「うむ。それは、戦闘の跡だ」
聞くところによると、荒野には、ちょくちょく例の白バッタがいるようだ。
その白バッタを始末したような痕跡があるとのこと。
「始末した痕跡って?具体的には?」
「あの白いバッタの血液がぶち撒けられていたが、死体そのものは見つからなかったのだよ。恐らく、何者かが持ち帰ったのだろう」
「持ち帰った?」
「ああ。引き摺った跡もないようだし、どうやら、バッタの死体を『抱えて』帰ったようだな。知能がある存在の可能性が高い」
なるほど。
四足の獣であれば、獲物を抱えて持ち帰るなんてことはやらないな。砂が付くのを承知で、咥えて引き摺って帰るはず。
「あ、それと、老師の健康診断の結果アル」
む。
「……え?健康なのか、俺は?」
「そうアルネ。あんなにタバコ吸ってたのに、肺はピカピカ、歯も真っ白。下の方もビンビンの若者アル!」
「下の方とか言わんでくれっかなあ?」
イメージが……。
マメはお医者さんキャラであり、ジョークをよく言う設定だったが、こうして会ってみるとめちゃくちゃ下ネタ言いやがる。
「老師がビンビンな方が、ワタシ達は嬉しいアルヨ?」
「女の子がそういうこと言うなよ」
「外見年齢的に女の子って感じでもないアルし……」
そうかな?
そうかも。
とにかく、何かいることは理解した。
翼竜を集めて、偵察隊にして北東に飛ばす。
カメラを持たせておいた。
知的生命体を見つけても、撮影するだけで接触はするなと厳命。
プテラノドン、タペジャラ、シノプテルスをスリーマンセルで派遣した。
ああ、因みに、翼竜種のジュラ娘は、側頭部から翼が生えているぞ。
航空力学的には飛べないフォルムだが、その辺は、ジュラ娘の万能パワーである『ダイナミック・パワー』でどうにかしました!の一言で終わる。
ツッコミはしてはならない。
そして、一時間後……。
「帰還したぽよー!」
黄色い髪を隠しツーブロックにしたギャル風の美女……、プテラノドンのプテラが報告してきた。
「体感四十キロ地点くらいに、人がいたよー!はい、写真!」
デジカメを手渡されたので、データを見てみると……。
小さな廃墟に……、いや、ある程度改修された廃墟に、薄汚れた人がいたのだ。
廃墟はどうやら、風化した看板から察するに、ラーメン屋だったのだろう。
看板に書いてあるのは日本語に近い言語で、「ヨシダ製麵廠」と書かれている。味噌ラーメンの店だったらしい。
が、その看板には、カタカナで「コウエキ」と「モヘン」と刻まれていた。
建物自体は、屋根が抜けているところに、何かしらの生き物の革を使った天幕を打ち付けてあり、窓は全て開いている。いや、そもそも、窓がない。
家の前には、石を組んで作られた煮炊き場があり、そこで例の白バッタを焼いているようだ。
四十歳ほどのババアと、二十歳足らずの若い男がいて、バッタを食っている。食えるのかこれ?
ババア、男、共に薄汚い砂だらけの格好をしていた。
竹槍のように尖らせた鉄パイプが武器らしいな。傍に置いてある。
それと、男の方は弓のようなものも持っている。
接触禁止を命じられていたので、建物の中は見れなかったとのこと。
「よし、よくやった」
「えへへぇ」
俺は、翼竜偵察隊を撫で回す。
うお、ツーブロックのところジョリジョリだ。
ジョリジョリ……。
「センセ、ジョリジョリ気になっちゃう系?」
「ん、ああ、そうだな。撫で心地が良くてな」
「そなの?もっと撫でてオッケーだよ!」
「おう」
ふむ……、『コウエキ』か。
つまり、交易のことだろう。
なら、人はもっといるはずだ……。
探してみようか。
知り合いの作者、みんな大体病んでて草も生えない。
やっぱイライラがないと小説なんて書けないんやね。