「セイ、何か変なことは起きてないか?」
「あ、アルフレッド先輩!大丈夫です!」
俺に話しかけてきたのは、先輩騎士のアルフレッドさん。
アルフレッド先輩は、火の国の貴族の三男坊から、『騎士』の加護を活かして聖堂騎士団に入団し、それから七年目のベテランだ!
確かに、加護の話をすれば、俺の『聖騎士』の加護の方が格上だ。
けど、アルフレッド先輩からは、学ぶべきところが山ほどある。
学のない異世界人だからって見下すようなことはしちゃダメだな。
この世界の人はこの世界の人なりに頑張ってるし……、そもそも論だが、学ぶべきところなんて自分で見つけるもんだ。何でも教えてもらおうって甘ったれた姿勢は駄目なんだよな。
今日も、無事に宿屋まで辿り着いたので、巡礼者と共に休む。
宿屋と言っても、個室の宿屋なんて貴族向けの金持ち宿だけだ。
普通の宿屋は、大部屋一つだな。
流石に、色々と不都合だから、ちょっとした天幕のようなもので、パーティションみたいにして女子と区切る。
俺の『聖属性魔法』で汚れを弾き飛ばし、宿屋のキッチンを借りて料理をする……。
料理と言っても、簡単なものだけどな。
ライ麦パンと、バターで作ったペミカンを溶かして味を整えたスープ。
味はまあ、最低限のレベルは維持していると思う。アルフレッド先輩は、「旅先でこんなにうまいスープが飲めるなんて最高だ!」と喜んでいるが……。
「良いか、セイ?今回のような護衛の時は、護衛される人々の様子に気を配るんだぞ。我々に遠慮して、体調が悪いのに無理をする巡礼者も少なくない。そう言う時は〜……」
「はい!勉強になります、先輩!」
夜は、アルフレッド先輩に為になる話を聞く。
アルフレッド先輩は、騎士として巡礼者の護衛を中心に、七年間も戦い続けてきたんだ。
色んなことを知っている。
俺は、アルフレッド先輩のことをとても尊敬しているんだ!
朝は、朝日が登る前くらいに起きて、身体が鈍らないように軽く訓練をする。
「そらっ!どうした!」
「ぐわっ!もう一回お願いします!」
朝の訓練では、アルフレッド先輩にお願いして、稽古をつけてもらっている。
加護ありなら100%勝てるが、無しなら100%俺が負けるからな。
やっぱり、ベテランって凄い。
騎士という、いつ死んでもおかしくない仕事を、七年間も続けているってことは……、ずっと生き残ってきたってことだ。
それって、めちゃくちゃ凄いことだろ?
それに、アルフレッド先輩は優しい人だしな。
「セイ、どうだ?仕事は慣れたか?」
「はい!皆さん優しいんで!」
「ははっ、そりゃそうだ。お前にはみんな期待してるからな。『聖騎士』の加護と言えば、この聖堂騎士団の初代総長と同じ加護なんだよ」
「そうなんですか」
「それに、お前自身も良い若者だからな。最上位加護を授かったというのに、油断や慢心がない……。これは凄いことだぞ」
「それは……、俺は、俺より凄い男を知っているからですよ」
「サー・アークのことか?お前の憧れだって言う……?」
「はい!あいつは凄い奴なんです!」
「確かに、サー・アークは凄まじい戦士であると同時に、学問にも長けた超人だな。うまいスープの素である『ペミカン』も、サー・アークが開発したとか……」
「はい、そうなんですよ!俺は、いつかあいつに追いつきたいんです!」
「ははは、そりゃ良いな。頑張れよ!」
「はいっ!」
俺は幸せだ。
良い先輩と、尊敬する上司と。
憧れの、背を追いかける目標がいて。
先輩も、子供が産まれたから、任務が終わったら嫁さんと子供に会いたいって。
みんな、幸せだったんだ。
なのに、先輩は、何で死ななきゃならなかったんだ?
雨が降っている。
「先輩……、どうして、なんで、こんな……」
血溜まりに倒れ込む先輩、アルフレッド先輩。
はらわたが裂けて、ぶち撒けられている。
即死だ。
どんなに凄い魔法でも、死んだ人を蘇らせることはできない。
俺の、聖属性魔法の回復でも、失った命は二度と戻ってこないんだ。
「悪の聖堂騎士団め!暗黒騎士シーズウィ様の名の元、『天誅』を下すぅ!!!」
先輩の死骸が、踏み躙られる。
相手は、魔族だ。
恐らくは野盗だろう、薄汚い格好の獣人。
ああ、ああ……。
「退けろ」
「あぁん?!」
「その汚い足を……、俺の先輩から退けろって言ってるんだよ!!!」
聖属性魔法、発動……!
「奔れ白炎!描け白道!『ディバイン・レイ』!!!」
魔族の上半身が焼き消える。
聖属性魔法、即ち、俺が邪悪と認定した全てを焼き尽くす白き炎!
「き、貴様!同志をよくも!『暗黒の力』を喰らえぇっ!!!『ダークネス・カッター』!!!」
「無駄だ」
「そ、そんな!『暗黒の力』が、かき消され……!」
「消えろ」
「ぐわあああ!!!」
先輩の懐には、聖堂騎士団の総長に向けた報告書があった。
内容は簡単だ。
先輩は、『聖騎士』である俺の保護者として守ることと同時に……。
最近現れた強力な力を持つ魔族の、調査をしていたと……。
『暗黒騎士』が他者に与える『暗黒の力』……。
『暗黒の力』を使って、既存権益全てに『天誅』を下す『革命』……。
許せない……。
そんな、そんな物のために、先輩は……!
人生、あらかじめ無料体験版を配信しておくべきだろ。
こんなクソゲーだと知っていればDLしなかったのに。
まあそれは別にいいんだけど、サイバーパンク学園が20話書けた。
今は田舎剣士書いてる。
読者さんからは「好きに生き、理不尽に死ぬ。それが必然だ」と暖かい声援をいただいており、つまりは書きたいものを書けと言われています。
ですが、やっぱりそろそろ何か完結させたい!そう言う気持ちは当然ある訳です。
が、ムンムンと湧いてくる新作への欲求!
書きたい……、書きたいぞ!救済ものを!!!
たまにはスチームパンクとかやってみませんか?魔法ありで。
スチームパンク的世界でぇ、悪の独裁者に捨て駒にされた女の子兵士を助ける話とかどうです?
十代半ばくらいの本屋さんとかの美少女が、高校を中退させられて無理矢理徴兵されて、適当な型落ち装備を持たされて敵陣に置いてきぼりにされて、その隙にお偉いさんは外国に亡命してる……、みたいな。
問題は、ゲーム世界転生となると、そのゲーム分の設定をしっかり組まなきゃならんことなのよね。俺みたいなその時のノリと勢いでライブ感の赴くままオリチャー発動させちゃうタイプの作者には向かないのだ……。