ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あぬす。


25話 生きる為ならガキも殺す

ポトフを食い終わったその時、横合いから俺の頭に向かって矢が飛んできた。

 

まあ普通に掴み取る。

 

……この世界の人間は、俺達現代日本人と比べれば、「学識」の類は全然ない。

 

だが逆に、身体の丈夫さや、狩りの知識や痛みへの耐性などは現代人を上回るし、そして何より「知能」そのものは、そう大きく変わらないのだ。

 

彼らにないのは知識だけで、知能はしっかりとある。頭はちゃんと使ってくるのだ。

 

だから、俺のような格上の仕留め方もしっかりと知っているのだろう。

 

騎馬から降りて、兜を外して食事をしている最中に、頭を狙って遠距離攻撃を仕掛けてくる……。

 

非常に理にかなっている。

 

洗練された奇襲だ。

 

「きぃいいえええええっ!!!!!」

 

「お、ランスチャージ」

 

近くの森から飛び出してきたのは、鎧を錆止めの黒塗料で黒塗りにした盗賊騎士。

 

よく鍛えられた肢体、軍馬に跨り、フルプレートの重さの乗ったランス突撃。

 

こりゃ、騎馬に乗っていない状態なら、普通の騎士なら殺されてるな。

 

「だが、俺は普通じゃないんだな」

 

瞳孔が縦に割れる。

 

目元に血管が浮かび上がり、瞳が赤く発光する!

 

ネオ・ヒューマンとしての力は、人の形を保ったままでも、人を遥かに超えた身体能力を発揮できるのだ!

 

……まあ、もちろん、変異して人間やめた方が何倍も強くなれるけど。

 

それでもまあ、目が赤く発光する程度の変異でも、人体の十倍くらいの性能は出るってことだ。

 

そんな感じで、俺は、側にある朱槍を思い切り振るう。

 

「が!あ、あ……、無念……!」

 

ランスを弾くと同時に、すれ違いざまにランスごと、フルプレートアーマーを着込んだ盗賊騎士の胴体を両断し、殺害した。

 

完全に人外の力だが、聖堂騎士団の総長殿も加護ありならこれくらい余裕でやるのでセーフだ!

 

「クロウ!馬!」

 

「お、おうっ!」

 

クロウは、盗賊騎士の軍馬を捕らえた。

 

軍馬なら、庶民の年収二、三年分は余裕でする。いい拾い物だな。

 

「鉄剣生成、方位固定……、射出。『エペタム・シュート』」

 

「「「「ぐああっ!!!」」」」

 

残りの野盗共も、カマラの魔術によって作り出された鉄の剣で胸を貫かれたりして、死んだ。

 

「よーし、剥ぎ取るぞー」

 

全く、ボーナスが向こうから来てくれるとは、今日はツイてるな!

 

「あびゃあ〜!創作意欲が掻き立てられるゥッ!!!すみませんサー・アーク!私は今すぐに、先ほどの御身の勇姿を歌にせねばならないので、馬車に籠らせていただきますっ!」

 

で、俺の指示を無視して、吟遊詩人のアオイドスはそのまま、信じられない速度で馬車に飛び込んでいった……。

 

 

 

「……可哀想にな」

 

カマラは、胸から鉄の剣を生やして死んでいる、十四歳ほどの少年の死骸を見て、そう呟いた。

 

そう、このガキも盗賊の一員だったのである。

 

見習いだったのだろう、装いを見るに、元逃亡奴隷などだろうか?

 

だが、向かってくる以上は殺すしかなかったし、殺さなくてはならなかった。

 

俺はもう完全に慣れていて、女子供でも無表情で殺せるが、カマラはそうではない。

 

「馬鹿だ、本当に……。他に道があっただろうに」

 

「いや、ねぇよ。逃亡奴隷なら、盗賊か、盗賊以下の何かくらいにしかなれん。身分がない流民ってのは、それくらいに悲惨なんだ」

 

「それでもっ……!ああ、クソ……!気分が悪い!ガキを殺すなんて!」

 

「そうだな」

 

ぐしゃっと、カマラの頭を撫でてやる。

 

相変わらず、油っぽいしっとりとした髪だ。

 

「んっ、もっと撫でろゴリラ!僕は……、僕は辛いんだ!今晩は強めに抱きしめてくれないと、眠らないからな!!!」

 

「分かった、分かったよ」

 

「抱っこしろ!あとチューしろ!そして、優しい言葉をかけて慰めろ!!!」

 

「おーよしよし」

 

そう言って俺はカマラを抱き上げて、背中に背負った。

 

そして、穴を掘り……。

 

盗賊共の死骸を埋めてやった。

 

略式だが、聖句を読んでやる……。

 

「死者の魂が迷うことなく天に召されますよう……」

 

と、気がつくと隣で、シスターのグレイシアも祈りを捧げていた。

 

「グレイシア……」

 

「サー・アーク!わたくし、とても、とても感動いたしました……!悪しき盗賊にまで慈悲をおかけになる、素晴らしいお方……!」

 

目がキラキラと輝くグレイシア。

 

まあ、シスターだからなあ。

 

結構俗っぽいところもあるけど、信仰はガチだぞ。

 

あ、あとこれもあるか。

 

「そ、それに、サー・アークは、わたくしが触れても壊れない初めての男性ですし……♡素敵ですよ♡」

 

俺の全身に、変な女を引っ掛けるフックがついてる説ー。

 

まあエレメンツ教は実は重婚を明確に禁じてはいないからな!

 

グレイシアは嫁の貰い手なさそうだし、貰ってやるか……。

 

顔は可愛いからな、顔は。

 

因みにグレイシアも戦っていたらしく、脳漿のこびりついたモーニングスター(棍棒)を抱え、返り血まみれになりながら会話をしているぞ。

 

うーん!殺伐!

 

けどこの世界ではグレイシアとかマジで善人の部類だからね……。

 

ナチュラルに、「盗賊とか死んで当然では?」みたいな雰囲気出してるけど、これが普通なんだ……。

 

むしろ、殺した盗賊を野晒しにせずに、しっかり埋めてくれる辺り、かなり有情。

 

俺も、彼女の信仰に直接楯突かないように、言葉を選んで色んなことを教えているが……、まだまだだな。

 

だが……、逃亡奴隷か……。

 

この世界では、奴隷になれることもまだ有情で、奴隷になるような身分の人が『奴隷ですらなくなる』のが拙いんだよなあ。

 

意外と寛容で、魔族でも改宗すればある程度は社会に受け入れられるし、何の技能もない存在でも奴隷の立場なら生存は保証される。

 

むしろ、よく働く奴隷は貴重な財産扱いで大事にされるくらいだ。男の獣人とか馬並の値段するし。

 

よく、アニメとかで描かれる、無意味な回転する棒を押して、モヒカンに鞭で打たれてるのが日本の奴隷のイメージだが……、使える財産にそんなことする主人は滅多にいないんだよなあ……。

 

むしろ、軽率に奴隷を解放したりする方が拙いんだよな。

 

社会制度が奴隷解放に追いついてないってのもあるが、教育もろくに受けていない奴隷を「解放」などしたら、治安が大変なことになるに決まっている。

 

奴隷はまだ良くて、奴隷は「奴隷である」という身分に守られている部分があるからな。

 

奴隷が奴隷ですらなくなれば、それはモンスターと同じような、人外の何かと見做される。

 

奴隷になるしかない奴、奴隷で満足してる奴、そう言う奴も多い。

 

とにかく、この世界ではまだまだ、奴隷という存在は必要不可欠だと言っておこう。

 

……それに、東方の騎馬民族みたいに、奴隷とか捕虜とか取らないで即座にぶっ殺す奴らよりはまだ文明的だしな!

 




サイバーパンク学園もの、ちょこちょこ書いて今17話まで行きました。

まだ全然プロローグっすね。

ソシャゲみたいなノリで行きたいので、プロローグをちょいと書いたらキャラストーリーとか書きたいかも。

いっそ、ストーリーの節目節目でアンケートを出して、次のストーリーをどうするか民意を問うのとかどうです?

例えば、
1.本編ストーリーを進める
2.◯◯ちゃんのキャラストーリー
3.××ちゃんのキャラストーリー
4.過去回想

みたいな感じでアンケートを取るとか……?

やる夫スレみたいだな。


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