「まだいたのか、シュ、シュズキ?とやら。貴様はもう、消えて良いぞ」
「そ、そんな!何でいきなり?!騎士さん達!どうして!」
「勇者共も、養ってやった恩を忘れ、聖堂騎士団に擦り寄って退去しおった。まあ、養ってやった分の金は返してきた故、追うことはせんが……。だが、貴様はなんだ?」
「なんだ、って……言われても」
「何の技能がある訳でもなく、人並み以下に使用人の餓鬼がやるような簡単な仕事をして糊口を凌いでいるそうだな?」
「そ、そうだ!僕はちゃんと……!」
「要らんのだ、そんなものは。何故我々が、いつまで経っても餓鬼の遣い程度の仕事しかできぬデクの棒を飼わなければならない?邪魔だ、消えろ」
「そ、そ、そんな!待って!待ってください!僕は……!」
「そして、その指輪は我が国の財産だ、返せ!」
「ああっ!翻訳の指輪がっ?!それがないと、僕はこの国の言葉を!」
「ふざけおって……!もう三年が過ぎたと言うのに、言葉も覚えていないのか?!貴様のような甘ったれを見ておると、虫唾が走るわ!消えよ!」
「ぐあっ!あああーっ!」
「く、くそ、くそおっ!何で、何で僕だけがこんな辛い思いを……!」
『力が欲しいか……?』
「お、お前は……、何だ?!」
『矮小なる者よ、力が欲しいか?自らを苦しめた者に復讐する、闇の力が欲しいか?』
「は……、ははは!やっぱりそうか!僕は、なろう小説みたいに、チート主人公だったんだ!今まで僕を虐げてきた奴らに、復讐するんだっ!!!力を……、力を寄越せえええっ!!!!」
『契約はなされた。ゆけ……、《暗黒騎士》よ!』
「ははははは!ははははははは!はーっはっはっはっはっは!!!!!!」
×××××××××××××××
「あー、なんか嫌な予感するわ」
「おいやめろ!ゴリラの野生の勘とか当たるだろ?!!」
「いや、今すぐ来る感じじゃないんだが、なんか後々響きそうな見落としがあったような……」
「やめろっつってんだろボケ!不安になるだろ!夜眠れなくなっちゃうだろ!!!」
「おっ、じゃあ、隣で寝てやるかぁ〜?」
「あぁ?毎晩隣で腕枕してくれてんだろ?今更恥ずかしさとかねーよ」
「ああ、はい」
「あと、寝る時はちゃんと抱きしめろよ?言っておくが僕のメンタルは赤ちゃん並みだ、たくさん可愛がって褒めてよしよししろ」
なんでこいつ、胸を張ってこんな情けないことをドヤ顔で言えるんだろうか。
どう言う神経してるんだ……?
「頭もちゃんと撫でてくれなきゃ怒るからな!それと、朝は優しく起こせ!起こす時はチューしても良いぞ?む、むしろ、今チューしてもいい!僕とイチャイチャできる権利を与えてやろう!」
何だこいつ……。
おもしれーな。
こいつといると退屈しないわー。
「さて、じゃあ、奴隷でも買うか……」
俺達は、従者を得る為に、奴隷売りに会いに行った。
騎士だからな、従者は二人くらい連れていないとおかしい。
「で、最終的に何人くらい買うんだ?」
「んー、俺達含めて八人くらいで良いんじゃないのか?」
「八人?どこからきたその数字」
「テンプル騎士団も創立時は八人だったろ?」
「あー……、そうだったな。だが、騎士団なんてやるつもりなのか?」
「やらんやらん。だがもう、夜の見張りで交代で徹夜は嫌だろう?」
「それもそうだ。ネオ・ヒューマンだから、飲食も睡眠も排泄も不要だが、かと言って寝ないと精神の方がやられるからな……。あと単純に暇」
そうなのだ。
夜中、松明もつけずに移動してたら完全不審者なので、いきなり攻撃されても文句は言えない。
だから、夜は野営していたのだが……。
まあ、出るわ出るわ。
モンスターに野生の獣、そして夜盗。
仕方がないので交互に寝て、夜間の見張りをしていたのだ。
が、まあ、もちろん、二人で足りるはずもなく。
どうにか人員を増やしたいなと思う次第である訳だ。
「で、金はあるのか?この世界では奴隷も一財産だ。買うとすると、馬の半値くらいはするらしいぞ」
「馬の値段が、安い荷馬でも金貨3パラードはするんだったか?」
「ああ、この世界の街の労働者の平均年収が大体金貨2パラードだから、地球で例えれば馬はかなりの高級車みたいなもんだ」
平均年収が五百万円くらいだとすると……、地球で例えれば、この世界の馬は最低でもポルシェくらいはするってことだ。怖……。
なんで、庶民は専ら、もっと安いロバやラバ、牛とか、陸鳥とかを使うんだな。
砂漠の方ではラクダや大蜥蜴も使われていると聞くが、詳細は不明である。けどなんかシルクロードがあるそうだ。
「だがその辺は安心しろ。金は持ってる。60パラードほど」
「はあっ?!お、お前、何したんだよ?!そんな大金、どこから持ってきた?!」
「総長殿にクソデカ変異白馬をプレゼントしたら、60パラードをポン!とくれたぜ!」
「ああー……、まあ、そうなるか。確かに、プラーナ級の馬なら、それだけの大枚叩いても欲しくなるだろうよ」
「そう言うこと。だから、金の心配は当分要らんな」
「分かった、じゃあ、誰を買うかだが……」
『ちょっとそこの!同郷でしょ?!助けなさいよ!』
『おう!デカいの!某も助けてくれ!』
「アレ、買うべきなんじゃないのか?」
幻想入りからの博麗神社居候、そして霊夢とイチャイチャは全オタクが一度は妄想したはず。学校にテロリストと同じくらいメジャーな妄想。