ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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サイバーパンクもの、書きたいが多分需要はない。


9話 この世界は酷いなあ

「はあーーーっ……」

 

クソデカため息を吐く蓮華。

 

まあ、そうなるな。

 

「分かってんだよそんなことは〜!この国の人間が『魔族』と呼ぶ奴らが、単なる異民族だってことくらいは!」

 

そう、そうなのだ。

 

『魔族』とか『魔王軍』とかと呼ぶから、「あーなんかヤバい奴らなんだなー」みたいに思われるだけで、実際のところ、相手はただの人間なのだ!

 

「良いか、おさらいするぞ。この世界のことについてだ」

 

読み終えた本をぱたんと畳んだ蓮華は、俺の分の紅茶……的な薬草茶的な何かを淹れて差し出してきた。

 

それを受け取り一口飲むと、蓮華は、若干重めに口を開く……。

 

「まずこの世界の歴史から行こうか。僕がなけなしのコミュ力を振り絞って集めた情報を拝聴するのだ」

 

「はい」

 

「っつっても、語れるほどの歴史はないがな。文明とは「文書」を「明示する」と書くように、記録がなけりゃ僕もお手上げだ。だから、分かってることのみを端的に言うぞ」

 

大学ノートが開かれる。どうやら、学校で使っていたものを流用しているらしい。

 

「……まず最初、この世界も普通に原始時代があった。進化論という理論は当然ないし異端だが、少なくとも洞窟で暮らしていたという記述は学問書にあったな」

 

「ふむ」

 

「で、その後、地球のヨーロッパと同じように、大きな川や海の沿岸に都市ができ始めて……、最終的にローマみたいな大帝国ができた」

 

「『古代魔法文明』、か」

 

「ああそうだ、現代よりもよほど洗練された魔法と、優れた官僚組織による、世界最大の大帝国。今この大陸に存在している四大国こと、『火の国』『水の国』『風の国』『土の国』四つ全てを合わせた面積よりも更に広い領域を支配していた、偉大なる大帝国だ」

 

「だが……、古代魔法文明は滅びた、と?」

 

「ああ、ローマと同じく滅んだ。何故滅んだかは明確な理由がないが、僕が調べた限りでは、インフラの劣化や経済の低迷、それに伴う国威の低下と文明の変化……。理由を挙げると枚挙にいとまがないな」

 

「あ、そりゃ何となくわかるわ。インフラってのは基本的に、施工すんのはまあどうにかなるんだが、保守点検すんのが楽じゃないんだよ」

 

「あー、そういやお前、インフラ系の国家資格も持ってたもんな……。ま、そんな感じだ。で、滅びた大帝国がそれぞれ独立して、その最中に大帝国の洗練された文化や魔法は散逸、と……」

 

「いやぁ、ローマローマ」

 

「マジでローマなんだよなあ……。周辺の国家が『うちはあの大帝国の正統なる後継だ!』とか言い張ってる辺りとかもマジで……」

 

なるほどねえ。

 

俺は、紅茶を呷る。

 

いやあ、こいつもよく喋るようになってきたなあ、などと思いながら、続きを促した……。

 

「……で、古代魔法文明が滅びた要因の一つに、今最も権威を持っている組織である『エレメンツ教』が関わってくる訳だ」

 

「ふむ」

 

「エレメンツ教は、四大聖霊とその上に座す神を信仰する一神教の宗教組織なのは良いな?」

 

「ああ。俺らが世話になっている修道騎士団である『聖堂騎士団』の人らも、このエレメンツ教の麾下にある組織なんだよな?」

 

「ああそうだ。……古代魔法文明では、世界は多神教でな。だが、このエレメンツ教が、他の全ての宗教を駆逐しつつある」

 

「そりゃまた、何でだ?」

 

「『加護』の力だ」

 

あー……。

 

「本来はこの『加護』とかいうシステムは、各宗教の選ばれた聖人のみが受けられる特別な儀式だったんだよ。だがそれを簡略化して、誰でも『洗礼を受ければ加護が得られますよ』という形に貶め、ついでに自分らの権力としたのが、このエレメンツ教だ」

 

なるほどな。

 

そりゃ、こんだけの実益があれば、誰でも信仰するわなあ。

 

「エレメンツ教の主神は『イダエーア』と言うんだが……、古代魔法文明の洗礼を司る神『イーデ』が原型だろうな」

 

「洗礼を司る神が力を持ち過ぎて、主神扱いされるようになった、と」

 

「多分な。あ、バリバリ異端だから言いふらしたら死ぬかもしれんぞ。口には出さんどけ」

 

「おう」

 

紅茶で唇を湿らせた蓮華は、更に言葉を続けた。

 

「で……、今この国……ってか、この周辺の地域の国が戦っている『魔王軍』とか『魔族』って呼ばれる奴らは……、地球で例えれば、そう……」

 

「「中近東のイスラム系人」」

 

なんだよなあ……。

 

「はあ……、やっぱり分かるか?そうなんだよ……、『魔族』ってのは、異教徒の他人種人類なんだよなあ……」

 

人喰いの化け物!とかではないんだよね。

 

「『魔族』ってのは、南方に住む民族の総称だ。見た目は確かに、エルフ耳だの小人だのとファンタジーだが、ちゃんと農業やって家畜を育てて人と同じものを飲み食いして生きてる。それどころか、人間とも生殖可能だ」

 

うぇあ……。

 

もう完全に、こっち側が蛮族じゃん。

 

「因みに、僕の見た限りの話だが、魔族側の方がむしろ古代魔法文明の遺産を多めに継承していて、より先進的な工業力があるっぽいぞ!もう笑えねーなこれ!わはは!」

 

「笑いごっちゃねえぞー」

 

「そうだよ!!!笑えねーんだよ!!!しかも、この国のバカ騎士共、十字軍遠征みたいなことバンバンやって略奪しまくり、『聖杯』だの『聖槍』だの、魔族側が保管していた古代魔法文明の遺産を略奪するに飽き足らず、魔族を奴隷化して売り捌いたり、やりたい放題やってんだよ!!!」

 

「ヒェーッ」

 

「ヒェーッじゃないよこのアホ!!!どうすんだこれ?!どうすんだマジで?!!!」

 

うーん、どうしようかねえ……?

 




でも見たいでしょ?

ジェフティみたいな爪先立ちロボ脚サイボーグ美少女が浮遊移動してるところとかさあ!!!

電童みたいなタイヤアームの美少女とか!バーチャロンみたいなバイザーアイの美少女とかぁ!!!

恥ずかしがり屋だから常に顔の前にホログラム映像を出して顔を隠す子とかぁ!!!

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