全然休んだ気がしないんだけど……。
《邪なる聖剣》
《神々への敵対者、選ばれし冒涜者のみが手にするという冒涜の大剣。
涜神の徒にも英雄が必要なのだ。真の意味で、神をも恐れぬ冒涜の英雄が……。
この武器は、物理攻撃力を持たないが、暗黒属性と神聖属性を併せ持つ。》
《汞の鞭刀》
《星の民の秘技により生み出された、流体金属の剣。
星の民の住む『黒き星』には、光も水も肉もない、ただ闇と鉄と土があるという。
そして水銀とは、彼らの水そのものである。
うねる剣先は、見切ることが困難。
また、パリィなどの影響も受けない。》
《眼魔の盾》
《単眼巨人の瞳を模して作られた中盾。
単眼巨人の瞳には邪視の力があり、見られた者は病毒に侵されてしまうという。
だがその邪視の力を、聖墓蛮人達は崇めた。聖墓に眠る聖者の遺骸を踏み躙りつつ……。》
《腹断ちの大鉈》
《北方の民が使う処刑用の大鉈。
北方の民は、罪人の処刑の際、罪人の首ではなく腹を断つ。
彼らの信ずる教えでは、生命は腹に宿るとされており、腹を断つことは完全なる死を与えることを指す。
処刑の刃は重く、そして凍結属性の力を持つ。》
「「「「おおおおおっ!!!!」」」」
何なんだこいつら。
キモ……。
なんかこう、この世界に来てよく思うんだが、テンション高い奴ってキモいよな。
ムーザランでは皆クッソ暗かったんで、こう、陽気な奴を見るとイラついてくる。
だがまあ、武具を取り扱う手つきに淀みはないのが救いか。
これで、適当な仕事をするような連中なら殺していた。
「いかがでしょうか?グランドマスターの皆様?」
隣に立つヤコが、完璧な作り笑顔でそう訊ねる。
ここは、グランドマスターの……ええと、ガーランドと言ったか?
そいつの工房だ。
工房とは言うが、大きさといい堅牢な作りといい、最早砦のような感じだった。と言うより、この街にある建物全てがそうだ。
石畳がズラッと並び、石でできた防壁のような建物が、樹木の年輪のように丸く広がっていっているような形。
この閉塞感溢れる石造りの建物群は、ドワーフからすると最高の寛ぎ空間らしい。
俺とララシャ様が泊まった高級宿は、外国人用にふかふかのベッドが置かれていたが、この国に住むドワーフ達は基本的に「石のベッド」で寝ているんだそうだ。
石の上で寝るとか拷問か?俺も昔、ムーザランでよくやらされたなあ……などと思うが、ドワーフはそれが気持ちいいんだとか。
つまり、この石の要塞のような工房も、ドワーフからすると住み良い空間なのだろう。
俺はビールを飲……え?これ、歓待されてるんだよな?
何で商談なのに「紅茶です」みたいな雰囲気でビールが出されてるんだ?意味分からんなドワーフ……。
まあとにかく、出されたビールを飲みながら、その様を眺める。
「これらの武具は、こちらのエドワード・ムーンエッジ様による提供でして……」
「うおおおおっ!こんな神器は三百年ぶりじゃぞ!」
「何と……、何と芸術的な魔法回路なのだ?!うっ、ううう……!素晴らし過ぎて涙が出てきた!」
「オオーゥ!!!最高!最高!最高!最高ー!!!!」
「あぁ〜……!良いのう、良いのう!この剣に込められた刀匠の意思!執念!ん狂気ぃ……!堪らん〜!!!」
「あ、あの、皆様?」
「見ろ!鉄姫の!この盾、盾でありながら武器としても使えるぞ!こういう仕掛け武具は、大抵はどっちつかずのナマクラになるものだが、これは違う!」
「何を!こちらの剣も見よ!闇の力と聖なる力が同時にある!しかも、それでいて、物理的な刃はない!これはどう言う仕掛けなのか、皆目見当もつかぬ!」
「あの〜……?」
商談をしようとするヤコだが、グランドマスター達は自分勝手に武具を眺める。
興奮し過ぎで、商談どころではない。
「………………」
ヤコは、作り笑いのまま黙り込んだ。
イラついて……、は、いないようだな。
慣れているんだろう。
そりゃそうだ、この程度のことでイラついていては、客商売なんぞできんだろうからな。
そして、たっぷり一時間ほど待たされた後……。
「素晴らしい!これならば、いくらでも鑑定書を書いてやろう!」
グランドマスター達は、そう言って。
「ありがとうございま———え?」
礼を言うヤコを押し退け、俺の手を握ってきた。
「何だ?交渉ならこっちに……」
俺がヤコの方に目を向けるが、ドワーフ達は俺の手を掴んで離さない。
「何を言うか!これらの武具の持ち主は貴殿じゃろう?!」
……ふむ。
「商人と金勘定の話などせんわ!そんなものはどうでもよい!話すならば、このような武具を扱える『勇者』と話すぞい!」
なるほどな。
まあ、そりゃそうか。
仲介者である商人よりも、持ち主の方と話そうとする。
確かに、職人気質というべきか……。
そういえば、前に会ったドワーフから聞いたな。
ドワーフの価値観では、武具を上手く作れる職人が偉いが……、それを使いこなす「戦士」もまた、尊ばれるのだとか。
とすると、俺はこの世界の平均レベルと比べれば良い感じなのだし、俺も尊ばれると言うことか。
「ああ……!手を握るだけで分かる!星の海!月の牙!流転する漆黒、月の傍にある星喰らい!なんと……、何と素晴らしい……!!!」
ガーランドだったか?ドワーフはいきなり、膝をついて、咽び泣き始めた。
頭おかしいんじゃないのか?
だから、プレイヤー置いてきぼりポエムやめろっていつも言ってるだろ。
カッコいいが抽象的でよく分からん単語を置きまくって、後はユーザーが考察してくださいみたいなの、今時流行らんからやめろ。GMの吟遊は刑法で禁止されている犯罪だぞ。
「それだけではない!貴公っ!」
ええと……、センジュだったか?
ムラマサ家のセンジュか、どこかで聞いたことがある響きだが……。
まあ、十中八九、建国王ヨシヤの関係だろう。
あいつマジで碌なことしないな……。
その、センジュとか言う女が飛び出てきた。
そして、叫ぶ。
「貴公はもしや……、新たなる『勇者』なのではないかっ?!」
と。
「知らん」
「世に暗黒の『魔王』現れし時、必ずや『勇者』が降臨する……!言い伝え通りじゃ!」
話を聞けよ。
「そして!勇者とは、必ずや『外側の世界』か、現れると言う!やはり……、貴公こそ勇者なのじゃな?!!!」
「知らん」
「誤魔化さんでもいい!妾には分かる!貴公……、信じられぬ戦士にして、魔導を極め、神に愛される……、凡そ人の思いつく頂点のそれすら遥かに超える『超戦士』よ!」
そんな往年の少年漫画みたいなこと言われても……。
「会いたかった……、会いたかったぞ!妾の家系、センジュ家は、勇者にしてのちの建国王たるヨシヤ・スカイ様の愛剣の内一振り、『魔刀ムラマサ』を鍛えた初代様から続く、刀鍛冶の家系!妾もいつか、妾の勇者様の武具を鍛えたいと夢を……!」
知らん……。
どうでもいい……。
いきなりプロフを貼られても困る。
SNSのユーザーページに訳分からん長文プロフを書いてる奴、俺は嫌いなんだよね。
それに……。
「それだけの腕があるとは思えない」
はっきりと言ってやろう。
俺の武器を鍛えるなど、お前らには無理だ、と。
最近は物語の統合性を取ることばかり重視していて、気軽な気持ちで書けていないな……。
なーんも考えずに十万文字くらいで終わる短編でも書いてみるか……?
R18にしちゃうのもアリかな。
いつものカス主人公、チート魔法使い、ヤンス系三下ヒロイン、ハーレムめ……。
召喚士にするか。召喚魔法で地球の物品も召喚できちゃう設定で。戦闘ではオーディンとかを最終的に呼び出して斬鉄剣あいてはしぬ、とか。
ヤンス系三下ヒロインは押しかけ弟子で。「師匠!」とか言って勝手についてくるバカ女。
世界観はいつものガチ中世ナーロッパで。
……あーもう、ダメだ最近は。
力が出ない。