ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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体調不良で遅れました。



35話 一つの終わり、そして始まり

この街にいる利点がないので、出ていくことにした。

 

「えっちょっ、まっ、待って!待ってくださいマジで!!!」

 

「そんな急に……!」

 

「そ、それ程までに奉仕依頼を受けたくないのですか?」

 

囮三体が何かしらを喚いているが、そんなことを言われても……、って感じ。

 

何か難しいこと言ったか俺は?

 

ただ単に、復興がどうこうとか理由をつけるのは結構だが、エネミーを配置してくれないんならここにいる意味がないから移動するって、それだけの話だろうが。

 

「お待ちください、エドワードさん。今回は八魔将の討伐なので、王都から莫大な賞金が出ますよ?それを受け取る為にも……」

 

クララが言った。

 

はあ、金。

 

それ、ララシャ様に捧げて喜んでもらえるのか?

 

意味ないでしょ、金属の塊とか。

 

無価値だよ。

 

「要らん」

 

「そう仰られましても……。本当によろしいのですか?一生遊んで暮らせるほどの……」

 

既に一生遊んで暮らしたし、実際今も遊んで暮らしているし……。

 

あ、これは嫌味だぞ。

 

あの程度のエネミーでは、「お遊び」にしかならないっていう。

 

「それに、爵位も……」

 

爵位?

 

権力とかってやつか?

 

……そんなもん、何の足しになるんだ?

 

「要らん」

 

……何でも良いや。

 

とにかく、まずはララシャ様だ。

 

ララシャ様を普通の人間くらいの大きさにしてから、それからは……。

 

うーん、ララシャ様と新婚旅行とか?

 

いや、結婚してもう千年くらいは過ぎてるけど、精神的には新婚だからな。

 

ララシャ様は、今は弱体化しているから大人しいけど、人型サイズになる頃には相当に力も戻るし、口出しもしてくるだろうな。

 

基本的に、俺はやりたいことを思いつけない空っぽな人間だからなあ。

 

もう、何もやりたくないのだ。

 

戦いは気が狂うほどやったし、戦い以外もやった。

 

やりたいことはもう思い浮かばない。

 

後はもう、ララシャ様の望みを叶えることくらいしか、俺にはない。

 

その辺、ララシャ様みたいな神は凄いと思うわ。

 

俺はどう頑張っても人間だから、やりたいことを全てやってしまうともう何も思い浮かばなくなり、永遠に暇しなきゃならなくなる。

 

けれど、神や長命種は、暇潰しの仕方を熟知している。

 

精神構造が違うんだろうなあ、羨ましい。

 

俺がぼんやりとそんなことを考えていると……。

 

「わ、わかった!特例として奉仕依頼は免除しよう!」

 

と、ギルド長が焦りつつそう言ってきた。

 

うーん……。

 

俺はそこまで社会不適合者に見えるのだろうか?

 

奉仕依頼だか何だか知らないが、それをやるメリットがあるならやるぞ俺は。

 

ただ単に、懲罰の為とか、更生の為とか、そんなお題目で回されてくる仕事にメリットはないだろうと思って避けているだけで。

 

「結構だ」

 

さて、移動するか……。

 

金は要らないが、金になりそうな話題のところにはホーンも集まるはず。

 

やはり、専門家のヤコに訊ねるべきだな。

 

「ヤコはどこだ?行き先について相談したいんだが」

 

「いやまず、パーティメンバーである私達に相談するのが普通でしょう?!!!」

 

あ?

 

あー……。

 

「じゃあ、パーティ解散で良いぞ」

 

「ぐぬ……!それを言われると……!」

 

ごちゃごちゃ喚いているシーリスだが、俺はこいつがいてもいなくても困らないんだよな。

 

「……私はエドワードさんについて行きます。この国、サーライア王国の『特別執行員』として」

 

クララが、意を決したように前に出る。

 

「そ、そうだ!あの時はピンチだったからスルーしてましたけど!クララさんって、勇者パーティだったんですか?!!」

 

「そうだよ!あたし、知らなかったんだけど?!」

 

ふむ……?

 

そういえばそんな話もあったな。

 

「申し訳ありません。私は、特別執行員であるだけでなく、実はもう一つの使命があったのです……」

 

「「使命?」」

 

「詳しくは話せないのですが、サーライア王国の王家には、『転移者』を感知する方法があるのです。そして、このルーカスターに、転移者の反応を見つけて……」

 

「その調査でやってきたって訳だね?」

 

「はい。ですが……、反応がおかしく、一度大きく現れてから急に反応が消えました。その為、調査員として私がここへ参じたのです」

 

「「ふむふむ」」

 

「そして、ルーカスターにはその時、圧倒的な強さを誇る異邦人がいると聞き……、見極める為にこのパーティに参入しました」

 

「で、どうですか?見極めた結果は」

 

「……人品は今までのどの英雄よりも劣りますが、逆にその強さは今までのどの英雄よりも優ります。ですが、遵法意識があることや、話し合いによる解決を試みる辺り、制御不能の混沌とは思いません」

 

「「つまり?」」

 

「これからも私が、勇者パーティの一員として、勇者エドワードを制御していこうと思います」

 

はあ、制御。

 

人をマシーンのように言うなあ。

 

……だがまあ、心は半ば失っている自覚があるので言い返せないのだが。

 

「「ゆ、勇者パーティ〜?!!!」」

 

シーリスとアニスが叫び声を上げる。

 

「勇者パーティの一員なら、英雄になれますよねっ!」

 

「孤児院へ送るお金も……、それどころか、国中の恵まれない子供達を助けられるかも!」

 

この光景を色めき立つ、と言うのだろうか?

 

興奮し始めたシーリスとアニスは、俺の手を強く握り、これからもよろしく頼むと言ってきた。

 

二人とも、目の色が違うと言うか、欲に眩んだ感じに見えるが……。

 

まあ、好きにしろ。

 

足元に犬が纏わりつくくらい、別にデメリットはない。

 

 

 

引き止めようとしてくるギルドから退出して、外に一歩踏み出した。

 

そこには……。

 

「お帰りなさいませ!ア・ナ・タ♡」

 

ヤコが待ち構えていた。

 

赤毛狐獣人の商人、ヤコだ。

 

ヤコは、自然な流れで俺の腕を抱く。

 

無駄に大きい胸で俺の腕を挟んで、猫撫で声で話しかけてくる。

 

「いやぁ、やっぱり逃げないで正解でした!魔王軍とは言え、ドラゴンを鎧袖一触で仕留める旦那様なら勝てると分かっていましたから!」

 

ふむ。

 

「お陰様で損害はゼロ!それどころか、一番早く動いた商会として、復興事業に大きく食い込めました!」

 

なるほど。

 

「領主様への覚えも良く、御用商人の座まで得られるなんて最高ですーっ!」

 

「領主の?この領地に金があるとは思えないが」

 

俺は思わずそう言った。

 

「まあ、失礼ですがそれは確かですね。ですが……」

 

ですが?

 

「領主あらせられるソライル様は、あの剣聖バルシュ様の弟子でいらっしゃいますから!商人を受け付けない剣聖様の閥へ食い込めるのは、わたくし共としては、一時の儲けよりも余程嬉しい結果です!」

 

ふむ……。

 

なんか、そういう政治的な話とかあるんだな。

 

ムーザランでは文字通り全てが崩壊していたから、そういう謀とかを見ると新鮮な気持ちになる。

 

「……ところで、旦那様?もしかしなくても、街を出るつもりでは?」

 

おお、察しが良いな。

 

「ああ、そうだ。行き先をどうするか、相談がしたい」

 




とりあえずここまで。

あと五話くらいの書き溜めはありますが、それは二章が書け次第投稿します。

次からは田舎剣士の続きを投げますね。

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