本当にすいません。
二人の女を乗せて、オルガンで街へと移動した。
街まで二日とのことだったが、オルガンは、休みなしで一昼夜、あらゆる悪路を風のように駆け抜ける神馬。
ほんの二、三時間で街へと到着した……。
「エドワード様!とても、とても……、凄かったですわ!」
「そうか」
「あんなにも速くて逞しい馬は、父の領軍にもいないでしょう!わたくし、驚きましたわ!」
「そうか」
そうやって、会話……会話?をしつつも、伯爵家の館とやらに向かう。
しばらく歩き、街の中心部へ。
この街は、辺境の開拓地、「ルーカスター」と言うらしい。
で、ここの領主が、「グッドウィル伯爵」と……。
国の名前は「サーライア王国」だとか。
まあ、その辺の設定はどうでも良い。
ただ俺が言いたいのは、この街が異様に小綺麗だと言うことに尽きる。
ムーザランは、そもそもまともな街なんて残っていない、滅びかけの世界だったので参考にはならないが……。
だがそれでも、微かに残った地球の知識を参照すると、馬車を使う程度の文明の癖に、ここまで美しい街を維持しているのはおかしいと確信できる。
隣のサニーに聞くと、上下水道の完備、塗装された街道、教育の充実と、色々とおかしいことがよく分かってしまう。
その辺にツッコミを入れると……。
「この国の建国王たるヨシヤ・アラタニ様は、教育の充実とインフラ整備を徹底させたのです」
と返ってきた。
い、意味分からん……。
「ヨシヤ様は、ニホンという異世界からいらっしゃったそうですよ」
はーーー?
なんだそりゃ……。
教育やらインフラやらと言い始めるってことは……、少なくとも、それらの恩恵を受けて育った2000年代以降の人間だろうか……?
致命的な環境汚染により、サイボーグ化やVR世界での生活を余儀なくされた2200年代の人間の発想ではないな。
俺と同じ2200年代の人間なら、まず第一に自然環境の保護を考えるはずだ。
再生不能なリソースを食い潰して発展しようというのは、古い考え……。
いや、その辺の考察はどうでもいいな。
歪な進化を遂げた特異な世界だとだけ認識しておけば良いのだ。
俺の記憶によると、中近世の文明は不衛生で治安も悪いとあるからな。
歪だろうが何だろうが、過ごしやすいのならそれでいい。
館に着いた。
「おお、サニー!どうした、随分と早い到着だが……?」
サニーを迎えたのは、中年の、熊のような大男。
サニーと同じ金髪碧眼、しかし、サニーの倍はあろうかと言う巨体に、筋肉をがっしりと乗せた戦士だ。
「お父様!」
は?
あ、そうなの。
似てねー……。
「実は先程、盗賊に襲われて……」
「な、なんだと?!」
「ですがその時、こちらの方に助けていただいたのです!」
「そうなのか!」
「直接は見ておりませんけれど、武装した盗賊十人を瞬く間に倒した達人なのですよ!」
「なるほど!」
「他にも〜……」
「すごいな!」
あれ、話通じてんのか?
まあ良いや……。
「話は分かった!私は、ソライル・サダラーン・グッドウィル伯爵!この街の領主だ!」
あ、通じてたのか。
「俺はエドワードだ」
「エドワード君か!娘を守ってくれたようだな!ありがとう!!!」
声でか……。
「そっすね、じゃ」
帰ろうとする……。
「まあまあ!待ちたまえ!」
めんどいな……。
「そろそろ昼食の時間だ!是非、同席してくれ!」
「結構だ」
「そう言うな!私は強き者の話を聞くのが好きなのだ!」
まあ、見た感じではお前よりは強いが……。
「面倒だからパスで」
「ふむ……、そうか。真面目な話、君の人品を見定めなければ褒美をやれんのだ。できれば、少しだけでも話を……」
「して何になる?語ることなどもう何もない」
そう、もう何もな……。
「まあ、そう言うな、我が剣よ。ここで領主の信を得ねば、今後に差し障りが出るかもしれんぞ?少しばかりならよいだろう?」
と、ララシャ様。
「はぁいララシャ様!……気が変わった、馳走になろう」
「お、おう、そうか」
体調こわるる〜。
最近は気候がガバガバなので、僕の肉体もガバガバです。
みなさんもお気をつけて。