ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あー……。


37話 州臣

「おじピ〜、えへへへへぇ」

 

休憩中の俺に抱きついて、ぐりぐりと頬擦りしてくるのは、州臣摩子……。

 

ピンク色の髪をパーマをかけてカールさせた、派手派手な美少女だ。

 

メイク用品を与えたことにより、ばっちりメイクを決めている摩子は、生半可なモデルよりも美人である。

 

だがまあ……。

 

「こらこら、くっつくな」

 

「えー!あたし、おじピの嫁なんだけどー?!」

 

「結婚した覚えはねえなあ」

 

「じゃー、しよ!」

 

「いやぁ、恋人とかそう言うのはめんどくさくてさあ……」

 

「むー!いいじゃーん!」

 

おお……、三十代の俺が、女子高生ギャルといちゃついている……。

 

どう言う状況なんだこれは……。

 

「あー……、おじピの匂い、すっごく安心するぅ〜」

 

俺の髪の匂いを思い切り吸う摩子。

 

こんなのもう犯罪だろ。

 

「何やってるんだ、ほら、座りな」

 

隣の椅子に座らせようとするが……。

 

「やーだー!おじピとくっつきたいー!」

 

と、駄々をこねる。

 

子供か?

 

子供だったな。

 

高校生なんてまだまだ子供だ。

 

「どうしたんだ?今日は一段と甘えん坊だな?」

 

「う……、ごめんねえ」

 

話を聞く。

 

「なんか……、最近、寂しいんだぁ」

 

「ふむ……、どうしてかな?」

 

「前の襲撃の時……、あたしの友達がね、死んじゃって、ね……」

 

「そうか……」

 

「あ、あたし、ね?いつも、頑張ってるんだよ?でも、でも……」

 

うーん、この子、かなり無理してたもんな。

 

明るく元気に振る舞っていたが、そろそろ限界か。

 

優しくて真面目で良い子ほど、精神を病みやすいのだ。

 

なんだか不公平な気がするよなそれって……。

 

「よしよし、おいで」

 

俺は、摩子を抱きしめて慰めておく。

 

「ね、おじピ?」

 

「んー?」

 

「おじピはさ、いなくなんないよね?ずっと、一緒だよね?」

 

「そうだな」

 

「そうだよね……?」

 

「ああ、そうだ」

 

 

 

「……落ち着いたか?」

 

「……うん」

 

俺の膝の上に、向かい合うようにして座っている摩子。

 

散々泣いた後は、また俺の匂いを嗅ぎ始めた。

 

なんだろうかこれは……、父性愛とか求められてるんだろうか?

 

「お父さんが恋しいのか?」

 

「うーん、分かんない。うち、パパいないし」

 

あっ……。

 

なんか地雷だったかこれ。

 

「いや、その……、すまない」

 

「ん、大丈夫だよー。でもねー……、そう言われるとそうカモ?おじピみたいな、かっこよくて優しいパパがいてくれたらなぁ……って思うよー?」

 

そう言って、強く抱きついてくる摩子。

 

可愛い。

 

可愛いんだが……、危ういなあ。

 

依存気質だ。

 

根本的に、自分に自信がないのだろう。

 

例えば、この子はとても美人なのだが、自分に自信がない故に、濃いメイクをする。自分のことを美人だと思っていないのだ。

 

気配りが良くできて、誰にでも合わせられるのは確かに美点だが、裏を返せば確固たる自分を持たないとも言えるな。

 

弱い子なんだ。

 

カウンセリングとか完全に専門外だから勘弁して欲しいんだが……、俺の身の回りの世話を一番やってくれているのが摩子だからなあ。

 

毎朝起こしに来て、俺のスケジュール管理をして、雑用を一手に引き受けてくれている……。

 

となるとこちらも、多少は気を遣ってやらねばなるまい。

 

犬でも主人には敬意を払うのだ、犬以下の行為はしちゃならないな。

 

「よしよし、何も怖いことなんてないぞ。俺がずっとそばにいるからな」

 

「うんっ!あ、あのねっ……?」

 

「ん?どうした?」

 

「パパって、呼んでもいーい?」

 

パパ(意味深)ってこと?

 

まあ別に構わんが……。

 

「良いよ」

 

「パパっ♡」

 

うーん、違法の香り。

 

「はあ……、もうほんとに大変だよ〜……。パパのお陰で、なんとかやっていけてるけど……、あたしら、もう限界……」

 

確かに、心身共に強い他の幹部格の子達と比べれば、摩子は常人だな。

 

「あの……ね?あたしが言える立場じゃないけどさ、みんな女の子なんだー。ちょっとで良いから、甘えさせてくれる……?」

 

うーん、可愛い。

 

上目遣いでそんなセリフを言われると、大抵の男はいきり立つぞ。

 

「もちろんだ」

 

「そ、それとね、お願いがあるの」

 

「何だ?」

 

「『ママを探して』……!」

 

ふむ……。

 

「無理を言ってるのは分かってるよ。けど、ママは、ママだけは……!」

 

あー……。

 

この子は、精神的には弱いがわがままは言わない良い子だ。それは、今までの付き合いからよく分かっている。

 

それでも、このご時世に、世界の崩壊からもう半年以上過ぎた今頃にこんなことを言うなんて、相当に母親が好きなんだろう。

 

「だが、もう半年が……」

 

「違うの!聞いて!あたしのママはね、駅前のキャバで働いてるの!」

 

「ふむ」

 

「それでね、前に駅前に薪を取りに行った時、遠征部の光ちゃんに頼んでおいたんだよね……。そしたら、これがママのお店に」

 

メモ帳だ。

 

何々……?

 

摩子ちゃんへ

摩子ちゃん、連絡できなくてゴメンね。

ママは、お店の人達と自衛隊の駐屯地に避難することになりました。

摩子ちゃんがこれを見ているなら、摩子ちゃんも自衛隊の駐屯地へ来てください。

自衛隊の駐屯地の場所は、ここから東に二駅分くらいです。

どうか、無事でいてください。

州臣涼子

 

「なるほど……」

 

「自衛隊の駐屯地には、まだ人がいるって噂があるの!だから、お願い!ママに会いたいの!」

 

まあ、前にサリアが言っていたように、国を作る……と言えば大袈裟だが、人を集めることは確定なんだ。

 

遠征部門はもう解体したからな、狩人部門に自衛隊の駐屯地を訪ねるようにお願いするのは酷だろうし……。

 

話の通じない獣の応対はやりたくないが、流石に、人間との会話は俺がやるべきだな。

 

第一、銃器で武装した女子高生が現れても、自衛隊さんも困惑するだろう。

 

やはり、俺が行く必要があるな……。

 

市民体育館と自衛隊駐屯地、か。

 




今は、女の子達とコミュりながら、ミッションを貰う感じっすね。



それはともかく、新作が25話書けた。

エグエグ中世ヨーロッパ十字軍遠征直後くらいの世界に、高校生がクラス転移して生き抜く話。

今作、なんか書いてるうちに、なろう小説アンチみたいな話になっちゃった。

現代日本の価値観を押し付けるチート主人公(笑)さんと、あくまでも現地に溶け込んでいくクラスメイトと主人公……みたいな対比になってる。

例えば、主人公は、呪いに困っている貴族の子女に、「いやそれ病気だからー」みたいな正論は吐かずに、「いやあこれは呪いですね、聖地に巡礼すると治りますよ!(転地療法)」みたいなことを言う感じ。

しかし、なろうチート主人公(笑)さんは、現代日本の価値観のまま、奴隷商人にいきなり攻撃して、奴隷の女の子(異民族)をいきなりその場で解放しようとしたりする。

そういう対比を描いていきます。

いつもの、万能チート持ち無敵サイコパス主人公が、強権と腕力で無理矢理改革するのではなく、あくまでも「一騎当千」レベルの武力チートのみで、周囲のクラスメイトと協力しながら、異世界で過ごす話になると思いますね。


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