ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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体調!悪過ぎるぞ!

もう本当に嫌。いつ治るのこれ。


32話 氏居

薄墨色の黒髪を所謂姫カットで清潔に纏めた、穏やかな表情の少女。

 

氏居雪姫。

 

鳥の巣のようにモサモサなブラウンのショートカット、機械油の汚れが頬についている、不思議そうな顔をした少女。

 

伊坂奈凪。

 

この二人は、このコミュニティを支える、縁の下の力持ちだ。

 

雪姫が『修復』のスキルでこの学校全ての施設を保全して、奈凪が『工廠』のスキルで全体の戦闘能力を高めた。

 

リーダー格の子達が、強力なスキルを持つ人格者であるから忘れがちだが、この世界は厳しいのだ。

 

スキルのレアリティは、コモンが六割、レアが三割、エピックが一割……。

 

スキルの数も、一つしか持ってない人が六割、二つが三割、三つが一割……。

 

三割六分の人は、コモンスキルを一つしか所持していない計算になる。

 

ついでに言えば、コモンスキルというのは何割か「死にスキル」だった。

 

例えば、『怪力』ならまだ良い。

 

コモンスキル『怪力』は、その人間の肉体の理論上の限界値の筋力を追加で得る、というスキルだからだ。

 

とは言え、「人間の限界」であるからして、格闘漫画のように素手で鋼鉄を捻じ曲げる!みたいなことは完全に無理だが。

 

個人差はあるが大体、スキルレベルが1で、ステータスの力量の数値が+10くらいになる。

 

+10と馬鹿にすることなかれ。

 

ステータスはどうやら、人類の平均値が10らしい。

 

つまりこういうことだ。

 

×××××××××××××××

平均的人間

存在階位:1

力量:10

精密:10

強度:10

知能:10

能力:「?」

×××××××××××××××

 

要するに、怪力のスキルは、人の二倍の筋力を得ることになる訳だな。

 

筋力というのは一元的な数値で表せるものではないのでなんとも言えんが、『怪力』持ちの女の子達は、目算100kgは超えてそうな荷物をひょいひょい運ぶぞ。

 

だが……。

 

一方で、死にスキルというもの。

 

例えば、『跳躍』とか。

 

『跳躍』はジャンプ力が1mアップするスキルだ。要らんね。

 

他にも、『大声』とか。

 

『軟体』『熟睡』『記憶力』とか。

 

この状況で役に立たないスキルが山ほどあるのだ。

 

そんな中、『修復』と『工廠』は、神スキルと言っても過言ではなかった訳だな。

 

『修復』は、材料がなくとも壊れたものを直せるが、損傷の具合が深刻であれば、使う時に大きく体力が消耗する。

 

『工廠』は、兵器限定で、ある程度の材料があれば自動的に作れる、材料が充実していればいるほど体力の消耗が抑えられる。

 

つまり、この二人を味方にするだけで軍隊ができるということ。

 

確かに、パラダイムシフト、なる現象以降、銃火器やインターネットは無力化された。世界の法則が変わったと予想できるが、詳しくは知らん。

 

少なくとも、銃火器はモンスターにはほぼ無力で、電子製品は全てのデータが吹き飛んだ。

 

磁気ディスクのような記憶媒体は無事のようだが、それらもいずれは揮発する……。

 

しかして、この『工廠』のスキルで作られた銃火器は、スキルによる産物なので、モンスターに対して100%の威力を発揮するのだ。

 

さっきも言ったが、死にスキル持ちが多い。

 

そんな中、死にスキル持ちも銃器を持たせれば戦力になるのだから、『工廠』の破格さは理解しやすいだろう。

 

そんな二人は、普段は理科室に篭っている……。

 

「ねえ、環介さん、ここ分かんないんですけど……」

 

「ああ、そこは……」

 

「環介さん、ここは?」

 

「そこは……、この資料のここだな」

 

俺は、二人と勉強に励んでいた。

 

俺も一応、医者だからな。

 

自慢じゃないが帝都大医学部……、偏差値だけなら日本トップの大学を首席で出ている。

 

この二人も勉強はできるようだが、さすがに俺ほどではないようだし、色々なことを教えていた……。

 

雪姫には主に化学分野を。

 

奈凪には数学などを教える。

 

そして俺は、工学や建築の分野について学んでいる最中だ。

 

「っはあ……、いつも思いますけど、環介さんってめちゃめちゃ頭良くありません?」

 

雪姫がそう言った。

 

「まあそりゃ、大学は出てるしな」

 

「いや、だって、これは薬学の勉強ですよね?何で医師なのに薬学が分かるんですか?」

 

「そりゃ、多少は薬学も分からないと医師としてやっていけないからなあ。それに、医学の世界は日々進歩していたんだ。勉強は欠かしちゃならんだろ」

 

「あー、勉強好きなタイプですかー……」

 

「ん?雪姫は嫌いか、勉強?」

 

「嫌いってほどじゃないんですけど……、私は昔から、そんなにやらなくてもできたんで……」

 

聞けば、ちょっと勉強しただけで学年一位を取れてしまった、とのこと。

 

ふむ……?

 

「進路とか、結構迷ってたんですよね。良い大学とか行けそうでしたけど、やりたいことも特にないし……」

 

「惰性で大学に進学していたかも、ってか?」

 

「そんな感じです」

 

「良いんじゃないか?今の時代はそんなもんだろう」

 

「そうですよねぇ……。それに、こんな世界になっては進路もクソもないですし!」

 

うーん、口が悪い。

 

黙っていれば清楚な美少女なのに、ゲス顔で汚い言葉遣いするんだからもう……。

 

「けど、目標があることは良いことだぞ?雪姫は、何かやりたいこととかないのか?」

 

俺が問いかける。

 

「やりたいこと……、ですか……。ヤりたいことはあるんですけどねー!」

 

おっと、露骨なセクハラ。

 

まあ、可愛いので許してやるか。

 

「俺以外にはそういうことを言わないようにな」

 

「アッハイ……。申し訳ないです」

 

「あ、いや、別に良いぞ。下ネタくらい構わん構わん」

 

「そ、そうですか?」

 

「処女が見栄張ってセクハラしてくるのは面白いしな」

 

「おっほ、良いパンチが入りましたぁー!しょーがないじゃないですか女子校なんだし!」

 

ははは。

 

「まあ、やりたいことがないなら、食っていくための能力を身につけると良い」

 

「食っていくための能力?」

 

「この世界の状況なら、火の付け方とか、野草の見分け方とかだろうな。あとは簡単な医学とか」

 

「なるほど……」

 

要は、潰しの利く技能を身につけるべし、って話だ。

 

高学歴なら、大企業にも中小企業にも入れるだろ?

 

ってか第一なあ……。

 

「やりたいことが見つからないなんて当たり前だ。人間なんてそんなもので、世の中の殆どの大人は、やりたくもない仕事をやってるよ」

 

「そう……、ですか?」

 

「そうだよ。本当にやりたいことをやって稼いでる人なんて、世の中に1%もいないだろうな」

 

「じゃあ、環介さんはどうしてお医者さんに?」

 

うーん……。

 

「俺は本当はな、離島の町医者とかになりたかったんだ」

 

「はあ……」

 

「離島の町医者なら、仕事は過疎化した寒村の老人を適当に診て終わり。あとは自由にスローライフ!とか考えててな……」

 

「なるほど?」

 

「だが、表向きには、『幼い頃に両親を失ったので、医者になって人を治し、僕みたいな家族を失う子供を減らしたいんです!』ってことになってはいるな」

 

「その方が正しいですよね?」

 

「そうだな。けど、人間には建前がある。限りなくキツい仕事でも、志望動機を面接で聞かれれば『昔から興味があって〜』と言うし、表向きにはそうなっている。だが、心の中では『クソ以下の仕事だ!』と常に罵声を吐いている……、みたいな感じだ」

 

人間なんてそんなもんだ。

 

「んー……。なんていうか、世の中ってそんなもんなんですねえ」

 

そう言って、姿勢を悪くして椅子を傾ける雪姫。

 

清楚そうな見た目だが、育ちは悪いみたいだな。

 

「好きなことを、楽しいことを仕事にするなんて、並の努力でできることじゃない。それならいっそ割り切って、極力楽な仕事を探すようにすれば良いんじゃないか?」

 

「はい」

 

「最終的に仕事なんて内容よりも職場の人間関係だからなあ……。どこに行っても活躍できるスキルはあるんだし、後は勉強じゃないか?」

 

「そう……、ですね。スキルも、もしかしたら、いつかなくなってしまうかもしれませんし。勉強します」

 

「それが良い。今は安泰だけど、今後はどうなるか分からないからな」

 




耐えられん。

書く。

もうシコシコプロットだけ組んで自分を慰めるのは限界なんで、新作書いちゃお。



そんな暇は———、無いやろ———。

思わずファブルになるくらいそんな暇はないんですよ!!!!書き溜めねえっつってんだろ!

スピーシーズドメインめっちゃおもしれー!

そんな暇は———、無いやろ———。

ないんだよ!!!!

たすけて。

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