ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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暑くね????


24話 慈悲

冬の日の朝。

 

俺は、耕されたグラウンドの周りを走っていた。

 

グラウンドはいずれ畑にする予定なので耕しておいたが、もちろん、この硬い地面を耕したからっていきなり使えるようになる訳ではない。

 

これから、長い時間をかけて土づくりをする必要があるのだ。

 

一方で、旧校舎の庭園は、近いうちに何か植えてみようと思っている。

 

元から植物がたくさん生えていた豊かな庭園なら、いくらか改造すれば農作物も植えられるからな。

 

とは言え、俺も、何もない土地をいきなり開墾するのは初めての経験だし、失敗の可能性を織り込んで工夫しておく。

 

例えば、作物の種類をバラけさせることにより、全滅を防ぐとか。救荒作物を中心に植えるとか。

 

それに、俺は虫とか特に嫌いじゃないし、体力もあるしで、農業は苦にならないから助かるな。

 

女の子達と無駄話しながら土弄りするだけで給料がもらえるのだから最高だ。

 

こんな日々が永遠に続けば良いなと思う。

 

で、あるからして。

 

俺の日常を破壊する奴は許せんな。

 

 

 

「おい!出てこいよォ!」

 

「おらー!」

 

「あーっ?!おらぁー!」

 

今日もアホが来ている。

 

中宮区の板垣工業高校、だったか?

 

ドロドロに薄汚れて、ボロボロの服を着た、山猿のような連中だった。

 

それが、中宮区に出現するモンスターである『ゴブリン』から奪ったのであろう、粗末な武具で、この女子校の門を攻撃している。

 

ギラついた目で、痩せこけたガキ共が、奇声を発しながら門を叩くのだ。

 

それこそ、奴らの持つ武具の元の持ち主たるゴブリンと同じように……。

 

その姿は酷く醜く、最早、悍ましいという感覚すら湧いてくるほど。連中はどう見ても正気じゃない。

 

「またあいつらか!」

 

警備部第一班リーダーの伍七さんは、門の近くに俺が作った安易的な物見台から、あるものを投げた。

 

そして……、ドカンと。

 

大きな爆発音。

 

もちろん、爆炎を伴わない音爆弾だが、山猿共を驚かせるには充分だった。

 

「ぎゃああ!!!」

 

「ひぃぃぃ!!!」

 

「な、なんで爆弾なんて!!!」

 

その音爆弾は、単なる爆竹だ。

 

但し、爆竹の中身の火薬を適当な容器に一つにまとめて、導火線で火をつけた、大型の爆竹だが。

 

とは言え、最初から狂乱している、正気ではないあの連中には、爆弾に見えたらしいな。

 

十人ほどの山猿共は、泣きながら逃げていった……。

 

……俺としては、ここで殺しておくべきだと思ったし、それが慈悲なんじゃないかとすら思うのだが。

 

まあ良いや。

 

 

 

と、この時は。

 

「まあ良いや」で済ませてしまったが。

 

そういうのは大抵、後で尾を引くことになる。

 

 

 

その、夜の話である。

 

「きぇえあ!あきゃえろおおおお!!!」

 

「開けろォォォ!あ!け!ろ!!!」

 

「女のクセにィ!チョーシ乗ってんじゃにェーエぞオオオオオオ!!!」

 

また、来たのだ。

 

山猿と言ったのは訂正しよう、山猿に失礼だ。

 

学習能力すら失った人間は、猿にも劣る。

 

「クソがぁ!」

 

その度、警備部が出張って追い返すのだが……。

 

これがしばらく続いた……。

 

 

 

そして、今日。

 

根本的な解決の為に、会議が始まった。

 

生徒会室に集まった各部のリーダーと俺は、山猿以下のクズ共の対処について話し合いをする。

 

「やっぱり、もっと威力のある攻撃で……」

 

「銃で威嚇すれば……」

 

などと、議論が交わされる。

 

だが、しかし。

 

やはりこの子達は良い子だ。

 

誰も、「決定的な解決方法」については触れない。

 

なら、俺が悪者になってやろうじゃないか。

 

実際悪者だしな。

 

「殺せばいい」

 

俺はそう提言した。

 

議論はぴたりと止まる。

 

「そ、それは……」

 

捨矢さんが顔を引き攣らせた。

 

捨矢さんは、総リーダーとして申し分ないカリスマ性を持つが、流石に、級友達に「人殺しをしろ」とは命じられない。

 

だから、俺が言ってやった。

 

「君達にそれができないのなら、俺がやろう」

 

「だ、駄目ですよ、皆川先生!貴方はそんな人じゃない!」

 

砂鷹さんがそう叫ぶ。

 

「そ、そうですよ!皆川さんはお医者さんじゃないですか!お医者さんがひ、人を、殺すなんて!いけませんよ!」

 

待場さんもそう言った。

 

うーん、良いねえ。

 

察するところ、今のこの地球では、外のあの山猿以下のクズ共がデフォルトなんだろう。

 

つまり、原始時代のように、奪い合い、殺し合い、動物の一種として生きるのが普通……。

 

それが、この女子校だけ、なまじまともな生活ができているから。

 

まだ人の心が、道徳や礼儀が残っているのだろう。

 

だが、世界はもう終わっている。

 

殺人をしたところで裁くものはもういない、と。

 

俺はそう言った。

 

「で、でも、何も殺す事はないんじゃ……?」

 

捨矢さんは聡い子だ。

 

「分かっている」のに、敢えてそれを言うんだから。

 

それなら、お望み通りの……、いや、耳が痛くなる正論を返してやろう。

 

「じゃあ、どうするんだ?」

 

とな。

 

「牢屋に入れるのか、タダ飯を食わせて?怪我させて追い返すのか、怪我すればモンスターから逃げきれなくて死ぬのに?」

 

「で、でもっ!」

 

「でも?」

 

「皆川さんには……、そういうこと、やってほしくない、です……」

 

ふむ?

 

「私、皆川さんが好きです。だから!皆川さんに、そういうこと、させたくない……!」

 

ああー……。

 

いや、困ったな。

 

本当に良い子だ。

 




近所、キチガイばっかりなので、心置きなく真昼間からエロゲを窓開けたまま大音量でプレイできるな……。

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