ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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うーん、思うように書けないぞ。


23話 錯覚

冬は長い。

 

十一月にもなるとすっかり冷え込み、十二月にはとてもじゃないが薄着で外出なんてとんでもないくらいには寒くなっていた。

 

今後は、一月も冷え込みが続き、二月なんて雪が降ってもおかしくないくらいだろうと俺は見ている。

 

暖かくなるのは三月くらいからだ。

 

日本には美しい四季がある!などと言う奴もいるが、人間の感覚的には、急に冷え込み急に暑くなるとしか感じられない。

 

春や秋の過ごしやすい時期は一瞬で過ぎてしまう。

 

そんな訳で年末の十二月。

 

まだまだ冷える冬の日の出来事だ。

 

 

 

女子高生達は、好色な視線を隠さなくなりつつあった。

 

いや、隠しきれなくなっていると言うべきか。

 

同性愛者を否定する訳ではないのだが、生命の摂理的に、異性が求め合うのは当然だ。まずそこは絶対に否定できない。

 

そして、女性に性欲がないなんてこともない。

 

ホルモンバランスの影響で弱まることはあれども、女性だって快感や愛を得たいと思うのは当たり前だ。

 

人間はそこに「貞淑さ」などの尺度を挿入してくるが、摂理は曲げられない。繁殖をしたがらない生物などいないのだから。

 

この女子高の生徒達も皆、性欲が高まっている。

 

命の危機から繁殖欲求が高まっているのだろうか?それは分からないが、とにかく圧が凄い。

 

「えー?そんなんないでしょー!」

 

「あるんだってばー!」

 

と、低めの声で談笑している生徒が……。

 

「あっ、皆川さぁん♡」

 

「皆川先生ー♡おはよーございまーす♡」

 

俺と話すときは声が1オクターブ高くなるのだから、察せられないと言う方がおかしい。

 

しかして、彼女達はこう公言するのだ。

 

「男は嫌い!ここには皆川さん以外の男の人は一歩も入れないよ!」

 

と。

 

何故こんなことになっているのか?と言うと……、もちろん、理由があった。

 

初めの頃。

 

まだ、俺がこの女子高に来たばかりの頃は、俺を嫌う子も多かった。

 

どうやら、かつて女子高に避難していた男達が強姦未遂をしたそうで、それがトラウマになっていたらしい。

 

当時は、流石に、面と向かって出ていけとまでは言われなかったのだが……、露骨に避けられている雰囲気は感じられていたな。

 

だが、俺は、俺の働きで見返した。

 

井戸を掘り、作物を育て、家畜を提供し、米を収穫し、病気を治し……。

 

そうやって、彼女達を助けていった。

 

そうすれば、好かれるのは間違いない。それは自明の理だ。

 

いつの世も、女が男を好きになるのは甲斐性だからな。実は、但しイケメンに限る!なんてネットの構文は嘘だ。正確には、但し甲斐性が有る男に限る、だな。

 

まあとにかく、どんな動物でも、自分を食わせてくれる存在には懐くものだという単純な話だ。

 

それはそれとして、何故、俺以外の男は嫌われるのか?

 

さっきも言ったが、どうやら、女子高にかつて避難していた男達が強姦未遂をしたこともあるが……。

 

他にも、市民体育館の集り共に絡まれたことや……。

 

最近では、こんなことも起き始めた……。

 

「オラアアッ!女共ォ!俺達に従え!そうすりゃ食い物くらいはやるよォ!」

 

女子高のある富谷区から東にある、真山区。

その真山区から更に東にある中宮区……。

 

その中宮区には、板垣工業高校という、今時信じられないくらいの低偏差値男子校がある。

 

そこの連中は、いわゆる不良という奴らが殆どで、パラダイムシフト後は盗賊となんら変わらない有様になっていた。

 

女だけで弱そうな勢力だと決めつけられたこの女子高は、最近、この連中からしつこく狙われている訳だな。

 

幸い、今はまだ門の前で叫ぶだけで手は出してこないようだが、衝突も時間の問題だろう。

 

その時、女子高生達が人を殺すと言う選択肢を取れるとは思えない。

 

気をつけなければな……。

 

 

 

と、まあ、そんな感じで。

 

この辺には碌な男がいないのだ。

 

だから、男はカス!という言論が罷り通るその隣で、本能的に男を求めている彼女達は、俺に性欲を向けてきている訳だな。

 

正直な話、目を覚まして欲しいと言うのが本音だ。

 

本来なら、俺のような男は今時の女の子に好かれないだろう。

 

俺は一昔前ならモテていただろうが、今は主流じゃない。

 

そうじゃなくても、たくさんの女の子の中に男は俺一人!みたいな、アホなエロマンガのような異常事態で。

 

俺しか相手がいないもんだから、彼女達は俺に惚れていると「錯覚」しているだけだ。

 

本当に俺みたいな男が好きだと言う子は、かなり少ないだろうよ。

 

故に、俺は努めて紳士的に振る舞う……。

 

万が一にも手を出してみろ、絶対に面倒なことになるぞ。

 

それに、避妊の手段が限られる今、安全な妊娠出産は難しい。

 

そりゃあ、『変換』をフル活用すればどうにでもなるんだろうが……。

 

だがそれだとしても、俺は外科医だ。

 

産婦人科のことは知識としてしかない。

 

医者のプライドなんてものは失って久しいが、俺の知識と理性は「やめておけ」と強く叫んでいる訳だ。

 

しかしなあ……、男として、据え膳が食えないとはこれいかに……、って話だよ。

 




マジで俺の生まれも日本という国も難易度イージー気味なのに、文句言うことはできんのよな。

自慢じゃないけど俺みたいなカスが日本以外に生まれてたらテロリストとかになってたと思うし。

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