ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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あっつうぇ!!!

暑くなってきましたねえ。


18話 女装

俺達は早速、要坂区へ向かった。

 

土屋区の彷徨う鎧を蹴散らしながら南へ南へと歩を進め……。

 

人面樹、トレントの湧く要坂区へ到着した。

 

「砂鷹さん、ここに来たことってあるかな?」

 

俺は、同行している砂鷹さんに訊ねた。

 

「えっと、まあ、パラダイムシフト前は何度もありましたけど……、以降は一度しか来れてないです」

 

なるほどね。

 

「人面樹はどんな感じかな?」

 

「人面樹は、根っこをタコの足みたいに動かして移動して、枝を鞭のようにしならせて叩いてきます。立派な木のトレントは強いですね」

 

「ふむ」

 

「棍棒のような太さの枝が、鞭のようにしなやかに叩きつけられる訳ですから、危険です」

 

「弱いのは大したことはないんだろうか?」

 

「はい。弱いのは本当に弱くて、戦闘スキルがなくても倒せます」

 

「なるほど。じゃあ、警戒はそんなにしなくても良いね」

 

「はい」

 

俺達は、彷徨う鎧から奪った立派な鋼の斧などを使って、人面樹を伐採していった。

 

『ギョエエ!』

 

「本当だ、弱いね」

 

砂鷹さんの言う通り、人面樹は大したものではない。

 

細木の人面樹は、素手でもあっさり折れてしまうようなものだった。

 

雑魚は周りの子に任せて、俺は松の人面樹を狩る。

 

松の人面樹からは、松脂などが得られた。

 

松脂は使い道が多いので、あると助かるな。

 

それと、果樹の人面樹から果実を奪うのも忘れない。

 

今回は、普段はバラけて行動している調達部と、女子高の防衛を担う警備部の半数すらを動員した大遠征だ。

 

「にしても……」

 

駅前という好立地。

 

そんなに強くない人面樹。

 

……やはり、人間がいるな。

 

近くの建物から、こちらを伺っている奴らが何人かいると、感知系のスキル持ちの生徒が叫んでいる。

 

ああ、何だか知らんが、『視界明瞭』だの『透視』だの『悪意察知』だの、そう言ったスキルを持つ子がいるらしくてな。

 

その子達からの報告だ。

 

まあそれでも、こちらに近寄ってこないことを見ると、友好的な存在ではないのかもしれない。

 

こちらは、ここで人面樹狩りをしている子だけで百人近くがまとまって行動しており、更にライフルや鋼の武器で武装しているのだから、流石に手出しはしてこないだろう。

 

あ、そうそう。

 

俺がスキルを開示したことで、周りの女の子達も少しだがスキルを教えてくれた。

 

その中でも、工業部のリーダーである伊坂さんは、『工廠』というスキルがあるらしく、原材料さえあれば加工機械ほぼなしで近代兵器を作れるらしい。

 

近代兵器である銃火器は、モンスター……、資源獣にはほぼ効かないのは前も言ったと思うが……。

 

スキルで作り出された武器は、スキルによる攻撃という判定になるらしく、モンスターに対して覿面な効果を見せるそうだ。

 

しかし、どうやら、火薬は肥料(リンとかだろう)の材料と競合するので、無駄玉は撃てず、単発式のライフルで戦列を並べての制圧射撃がメインになるらしい。

 

連射式の銃を持つのは、確実に当てられるようなスキルを持つ子だけとのこと。

 

銃というのは、この世界においては、戦力の平均化という意味では脅威だ。

 

ある程度レベルを上げたエピックスキル所持者が相手なら、銃器を持った兵士なんて、複数いても鎧袖一触なのだが……。

 

強いスキルを持たない人でも、銃を持てば戦力になる。

 

銃には、依然として、一般的な人間では逆立ちしても敵わない。

 

それが銃兵だ。

 

そんな銃兵達がずらりと並ぶこの面子に対して、いきなり襲いかかって来るような奴はいなかった。

 

俺一人なら変な奴らにたかられていたかもしれないが、数は力だな。

 

猫車などに木々を満載して、ピストン輸送をする俺達……。

 

と、そこに、しばらくして、女が一人現れた……。

 

女は、こちらを遠くから観察していた奴の一人だ。

 

女は……?

 

ん?

 

ああいや、違うなこれ。

 

男だ。

 

女装した男。

 

「ねえ、良いかしら?」

 

声も男だな。頑張ってアニメの萌えキャラのような高い声を出しているようだが。

 

黒髪ロングの清楚そうな美女……を装った男だ。

 

年齢的には俺と同じくらいだが、徹底的に女らしく装っているから、素人では見分けがつかないな。

 

俺のように医学の心得がある場合は、肩幅、骨盤、喉仏、手の形……、そう言った要素からすぐに男だと分かってしまうが。

 

っと……、俺に交渉権はない。

 

今回の大遠征の責任者は砂鷹さんだ。

 

砂鷹さんに会話を任せよう。

 

「そこで止まってください」

 

複数人の女子生徒達が、いきなり現れた女装男に銃を向けた。

 

女装男の顔は強く強張る……。

 

察するところ、銃には勝てないと思っているんだろう。

 

それが分かりつつもこうやって前に出られるのは、かなりの肝っ玉だな。

 

「ちょっ……!ちょっと待って!敵じゃないわ!話を聞いて?ね?」

 

「何の用ですか?」

 

「私達は、この辺でずっと木の化け物を狩って、木材を貯めているの。それを買い取ってもらえるかしら?」

 

ふむ、取引。

 

砂鷹さんは、俺の方を向く。

 

アドバイスが欲しいということだろうか?

 

「話だけでも聞いてみればいいんじゃないかな?こちらの武器も有限だし、わざわざ人面樹を倒さずとも木材が得られるなら、その方が楽ではあるしね」

 

「そうですよね……」

 

砂鷹さんは、周りの子達に銃を下ろさせた。

 

「お姉さん、お話を伺いましょう」

 

「あ、あとあの人、お姉さんではなくおっさんだぞ」

 

「??!?!!?!!」

 




濃いキャラが中々書けないなあ。

だけど個人的に、主人公より目立つ濃いキャラがいると、「いやお前が主人公やれよ」と思ってしまうのはある。

そう思ったので、今書いてるのではヒロインのキャラエピソードをしっかり用意したいと考えてます。

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