ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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遅刻。

注釈を入れておきますが、作者は何も分かってません。


57話 プログラマとして

第一王子派閥。

 

保守派、武断派とも言い換えられるこいつらは、古参の大貴族の殆どが表向き支持している派閥だ。

 

伝統保守及び漸進的な改革を旨とし、防衛力の強化を中心に、「大きな政府」として積極な市場介入を行い経済をコントロール。そして、権力の中枢を王家に集めて、集権するという考えを持っている。

 

……こう言うと大層なご題目を掲げているように見えるが、俺からすりゃ、滅びかけのこの国で「漸進的改革の検討」など馬鹿らしい話。

 

革命前夜のフランスで王侯貴族に味方をするか?と言う話になるな。極端な例だが。

 

今までのやり方に限界が来ている過渡期の現在、保守派は沈みゆく泥舟という訳だ。

 

一方で、第二王子派閥。

 

こっちは所謂、リベラル派。

 

早急な改革、自由主義、自由経済!いやあ、聞こえがいい。

 

……が、まあ、こちらも、歴史の浅い新興貴族や商人などが、一発逆転を狙っているだけの集団。

 

まあ、保守派のアホ共と比べれば、この国がヤバいことには気付いている分マシかもしれない。

 

政治的主張に「正しい」とか「間違い」とか、そんなものは後世になってからじゃないとなんとも言えないのだが、強いて言えば今はこちら側の方が勝ち馬だろう。

 

一見、数の上でも戦力の質でも、保守派の方が上に見えるし、事実、格上なのだが……。

 

だがそれは、あくまでも貴族の話。

 

官僚や知識階級など、そう言った爵位によらない中産階級らは、皆、リベラル派だ。

 

何故か?

 

頭がいいので沈む泥舟だと気づいているからだ。

 

そこから逃げる為だ。

 

そして、腰が軽いのも理由としては大きい。

 

第一王子派閥の貴族は、最早、裏切ること自体ができないのだ。

 

立場上裏切れない奴らばかりということ。

 

一方で、知識階級や職人達、官僚、中小貴族の連合である第二王子派閥は、その気になれば立場を捨てられると言うのがデカい。

 

手に職を持ち、学もある連中は、どこに行ってもやっていけると言うことだ。もちろん苦労はするだろうが、逃げるという選択肢があるだけで違う。

 

第一王子派閥の貴族達は、「この国の貴族である」という拠り所が一つだけしかないので、「知性や実務能力に自信あり」という人々と違い、この泥舟から降りられないのだ。

 

具体的な話をすると、第一王子派閥が保有するのは「国体」……、国としての在り方と言うか、対外的な存在認証というか、そういうもの。

 

対する第二王子派閥は、「機構」の方を主に持つ。つまり、官僚機構などの、実際に国を動かすための仕組みやノウハウだな。

 

どちらが欠けても、国家の構成要素的に拙いのだが、強いて言えば機構の方が重要だろう。

 

諸外国からの国家承認を失うのは、確かにかなり拙いことになるが……、それでも、下手にこのままこの国が続く方がダメージデカいだろうし……。

 

後漢末期レベルの、時はまさに世紀末でユーはショックなこの国、最早延命する方が良くない。

 

年金欲しさに子供に胃ろうやら何やらをやられて機械に繋がれて生かされている老人みたいな状態なんだこの国は。

 

死なせてやる方が情けあると言うところ。これ以上晩節を汚し、次代の遺産を食い潰すつもりか?

 

 

 

……と、俺個人はそう思っているが、世の中のことはよく分からんね。

 

インターネットもないこの世界じゃ、人々の噂のような、表面的で限定的な情報しか得られない。

 

俺は、今手持ちの情報からこう判断して評価を下しているだけで、もしかしたら間違っているのかもしれない……。

 

で、それが何か問題?という話だが。

 

つまらん脳筋で、俺に楯突くゴミムシ野郎である第一王子よりも、お利口さんで面白い第二王子のギルバートに力を貸した方がより「面白い」だろう?

 

それが全てなんだよ。

 

国がどうなろうが関係ない。

 

面白ければ、俺に利益があればそれでいい。

 

 

 

俺とエイダは、卒業に必要な分の単位を、担当教師を弾丸のように論破して無理矢理出させたので、しようと思えば今すぐにでも卒業できる。

 

しかし、フランシス、ユキ、グレイスは、申し訳ないがちゃんと勉強してもらわないと困る。卒業レベルの学力がない。

 

だが、山ほど履修登録をしなければ、日に二コマ程度の授業で卒業可能な計算だ。

 

元来、貴族の学校は、社交の意味合いが強いが故に、タイムスケジュールには余裕があるということだな。

 

なので、空いている時間には、俺からの講義を受けてもらうことにした。

 

秘密結社会員に登録したメンバーを集めて、講義をするのだ。

 

だが、俺が直接講義をするのは、今日一日だけなんだよね。

 

さあ、エイダ相手に培ってきた学習プログラムデータをここで使わせてもらうぞ……!

 

俺は、パワーポイントをVRビジョンで展開して、スライドショーを見せた……。

 

それも、一人一人の学習力に合わせた学習内容を、パーソナライズした課題を配布する……。

 

つまり、『アダプティブラーニング』だ!

 

「手元にある『マギアパッド』を開け。これが、お前達の教師だ」

 

個人情報端末を利用した、いつでもどこでも学習をできる仕組み。

 

つまるところの『eラーニング』だな。

 

これらのマギアパッドは、学内のLAN(俺が勝手に魔力通信波動を飛ばしてる)に接続され、後々のシステム拡張の為のスケーラビリティを確保したまま、現システムによってLMS(学習管理システム)を簡易にだが再現。

 

また、ゲームギアの流行から、ゲームの登場キャラクターを利用したゲーミフィケーション……まあつまり、ゲーム的な要素を学習に織り込み、楽しく学べるように工夫もした。

 

これにより、指導の質を均一化し、自動化して俺の負担は激減!

 

もちろん、モデルデータはエイダ相手に教えた学習内容が数年分だけで、サンプルとしてはかなり弱いのは承知している。

 

なのでこれは、それっぽいシステムで魔法を教える……その上で、学習中の子供達のデータ収集をも目的としているのだ。

 

問題集のどこで詰まるのか?間違えたとしたらどう考えて間違えたのか?全て貴重なデータだ。

 

ふふふ……、こんなアジャイルなソフトウェア開発は久しぶりだな……。

 

納品日の匂いがするぜ……。

 

でも、開発も運営もQAも全部俺!だからなあ……。

 

最近やっとエイダが使い物になってきたかなーって程度だし、当分は結構仕事がキツそうだ……。

 

まあこうなるだろうと思って、暇な幼少期に様々なテンプレートを作り溜めしておいたし、魔法に関するナレッジグラフも作っておいたから、なんとかなるだろ。なってほしい。なってくれ。

 

俺はそもそも開発担当で、運営はあんまやったことないんだよね。

 

QAも下請けに投げちゃうし……。いや、できないことはないんだけどさあ。

 

 




どうも、丸美屋の麻婆豆腐の素に恨みを持つ者です。

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