ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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書く暇がマジでねぇ!

や、やべえぞ……!


13話 魔神が歴史に現れた日

八歳になった。

 

エイダと弟達に適当に勉強を教えつつ、平穏に過ごしている。

 

俺とエイダ、そして弟達は、周りの子供達と比べて、良い物を食っているので身体もデカいし見た目も良かった。

 

つーかこいつら物覚えが良いから、教えることが段々高度になりつつあるんだけどこれ大丈夫なんですかねえ……?

 

異端とかなんかそう言うのでぶっ殺されたりしない?

 

そんときゃばっくれるが……。

 

今はとりあえず、二桁の掛け算の筆算と、円の面積とかについて教えている。

 

俺自身がどこでこんな知識を得たのか?というツッコミがどこかから入っても対応できるように、家にある蔵書は全部読み、村の教会の蔵書も読んだ。

 

これでアリバイは充分だろう。

 

まあ、俺は俺で、養蜂や革なめしなど、今まで職人の仕事を見ていただけのことを実際に体験できて楽しかったと言うのはある。

 

前世の実家はかなり裕福だったと前に話したが、裕福な人間には文化的資本というものがある。

 

例えば、家族で揃って美術館やコンサートに行ったり、レジャーに行ったりなどだ。

 

幼いうちからそういうことをして育つと、審美眼などそういった『上流階級の技能』が身につくものだ。

 

俺も、子供の頃から、休日には色々なことをさせてもらっていたなあ。

 

美術館、コンサート、習い事はもちろん、養蜂体験や工場見学、アウトドアに海外旅行……。

 

感受性や審美眼、センスってもんはそうやって育つんだよな。

 

そして今、それらの体験の記憶が役に立っているんだから、人生とはわからないもんだなあ。

 

いや、もちろん、こっちの世界での実験は何度も失敗してるよ?

 

養蜂とかも、あらかじめ最初に、「蜜は上の方に貯まる」とか「箱型の巣箱がいい」とか、要点しか知らなかった訳だからね。

 

実際やってみると、細かな失敗はちょくちょくあった。

 

でも、魔法でいくらでもリカバリが利くからなあ。

 

決定的な失敗とかは特になく、のびのびと活動できてるよ。

 

ま、何にせよ、俺はこんな田舎騎士領にいるべきじゃない。場違いだってことだな!ははは!

 

 

 

「大変だー!盗賊が来たぞー!」

 

 

 

おぉん……、ぬぉん……。

 

クソふざけやがる……。

 

どうやら、村に盗賊団が攻めてきたそうだ。

 

なんか実際、割とよくあることらしいね。

 

普通、人生で数回は、住んでいる村への盗賊団の襲撃があるもんらしいよ。この辺の治安レベルでは。

 

何でかっていうと、盗賊団ってのは大抵、食えなくなった農民だからね。

 

もちろん、傭兵崩れだとか、追放者だとかそんなんもいるけど、大抵は食えなくなった農民が盗賊落ちするもんらしい。

 

聞けば、うちの領も、不作の時に食えなくなった小作人とかが逃げ出して盗賊になった!みたいなケースがあったらしい。ファック。

 

つまり、今ここに来ている盗賊団は、うちの親父と同じような感じの、この辺の無能領主が養いきれなかった小作人の成れの果てらしいよ。

 

笑えるジョークだな!笑えないって点を無視すればな。

 

ま、まあ、もちろん、普段あれだけ偉そうに騎士道だの何だのと吐かしている親父が、盗賊団如きに負けるとかそんなことはないだろう!

 

……と、とりあえず、様子を見るだけはしておこうか!

 

 

 

「怯むなー!討ち取れー!」

 

「殺せー!」

 

う、うーん。

 

拮抗していますねこれは……。

 

古いサーコートを装備した親父と、革鎧と短槍で武装した兵士が合計で二十人。

 

盗賊団は三十人くらい。

 

しかも、盗賊騎士までいやがる!

 

……ああ、盗賊騎士ってのは、盗賊落ちした騎士のことね。武装もあるし、訓練もした経験があるから、その辺の盗賊とは格が違うぞ。

 

こちらの練度が上であることと、防衛戦であることが有利に働いているようだが……。

 

うーん……、うーん……!

 

もし、この戦いで負けたら一家離散……。

 

負けずとも、兵士を無闇に失ったり、親父に何かあれば、レイヴァン家は終わりだ。

 

うちの親父も大概にカスだが、村人も同じくカスなのである。親父が弱みを見せれば、下克上くらいしてくるだろう。

 

中央である王家に、辺境の末端の村が下克上されたとしても、それを止める力はない。ついでに義理もない。

 

悲しいね。

 

で、もしここで何かあれば一家離散……、それはマジでどうでもいいんだけど、八歳で村を飛び出すのはなあ……。

 

成人は十五歳。

 

王都にある学園に入学できるのは十二歳。

 

前も言ったが、俺は王都に行って学園に特待生として入学して、名を揚げるのだ。

 

名を揚げて、配下の魔導師を増やし、派閥を作って、誰からも掣肘されない組織の長になる……。

 

うん……、そうなると、ここでやるしかないよなあ……。

 

いや、良いよ。

 

かえってここでやるべきだよ。

 

あのアホ親父、最近は契約をさらに破って、週に五回を訓練の日にしやがったからな。

 

頭おかしいんじゃねえの?死ね!

 

いや、死んじゃダメなんだよ、めんどくせぇけど。

 

はぁー……、やるか……。

 

と、俺が身を乗り出した瞬間。

 

『ポップ 《プラズマシューター》 アウトプット フロント!!!』

 

あ。

 

エイダが飛び出していた。

 

おーぉん?

 

うおーん、うーん……。

 

エイダに丸投げするか?

 

エイダ一人ならなんとかなるし……。

 

あ、いや、ダメか。

 

どの道、「エイダはどこで魔法を覚えたんだ?」って話になる。

 

そしたら、一番疑われんのは俺だもんな。

 

そんなん、隠しても無駄になっちまう。

 

なら、俺も一つここで出ておこう。

 

 

 

 

 

×××××××××××××××

 

王暦264年

 

ここで初めて、エグザス・フォン・ザナドゥの名前が歴史書に登場する。

 

エグザスは、後に『熾天使』の名で尊ばれたエイダと共に、三十人ほどの盗賊団を瞬く間に始末したと伝えられている。

 

尤も、まだこの頃は、『魔神エグザス』と呼ばれた彼も、辺境でたまたま生まれた魔導師擬き、という程度の評価に過ぎなかった……。

 

 




満員電車ほんとくそ。

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