ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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年末ゥッ!

なので奮発して成城石井のケーキを買ったんですけど、とてもおいしいです。

やったね!


38話 か弱いロップイヤー

「でっ、でもぉ!私、私……!」

 

凪が駄々をこね始める。

 

無理もない、か。

 

温かいシャワーとまともな食事だと?

 

あそこに見えるシャワールームと、目の前で始まる煮炊きの煙、炊ける米の匂い。

 

こんなもん、耐えられる訳がねぇ……!

 

「ああ、だが安心してほしい。俺に善意は一ミリもないが、害意もまたないんだよ」

 

博士は、スマホを切ってポケットにしまいつつ、言葉を続ける。

 

「別に、お前ら人間のようなか弱い生き物を虐めて悦に浸る趣味はない。人間なんて、直接的にも間接的にも、数えきれないほどに壊してきたからな。そういうのは飽き飽きしてるんだ。俺はただ……」

 

何だ、あの目は。

 

人が人を見る目じゃないぞ。

 

「俺はただ、人間を観察したいだけなんだ。人間がどう生きるのか、それを見たい……、それだけなんだよ」

 

ああ、そうかよ……。

 

実験動物を見る目ってことか。

 

「は、はは……、なら、三回回ってワンと鳴いてやろうか?それで何か恵んでもらえるなら、やってやるさ」

 

俺はそう言い返した。

 

強気で言ったつもりだ。

 

だが、声は、みっともなく震えていた……。

 

怖い、怖いんだよ。

 

今まで、色んな奴がいた。

 

遊び半分で殺しにかかってくる半グレ、罠を張る賢しい奴、快楽殺人犯モドキ……。

 

そう言った奴らを殺して、殺して、俺達はここにいる……。

 

だが、こんな『バケモノ』は初めてだ。

 

快楽殺人犯モドキだって、人を人として殺すことに快楽を感じる奴だったんだ。

 

自分の手で、同じ人間を、努力して生きる同格の生命を打ち倒すのが気持ちがいい。その気持ちは、納得はできないが理解はできた。

 

だが、こいつはなんだ?

 

俺達をモルモットだと、そう言っていやがるのか?

 

理解できねえ、何が楽しいんだ?

 

人の心が感じられない、バケモノ……、バケモノだ!

 

「ああ……、心拍数が早まっているな。怖がらないでくれよ、人間。信じてくれ、危害は加えないんだ。そちらが攻撃してこない限り、俺はサバイバーと対等な立場で取引するさ」

 

ひび割れたかのような笑顔。

 

明らかに、人前で笑ったことがないことがわかる不気味な笑顔。

 

人じゃない何かが、人のふりをしている。

 

『人間ごっこ』という訳か。

 

良いさ、分かった、理解した。

 

それで理解が得られるなら、お前のごっこ遊びに付き合ってやるよ、バケモノ……!

 

「分かりました!ありがとうございます!これからは、あなたのルールに従うので、詳しいお話をお聞かせ願えますか?」

 

 

 

シャワーをたっぷり一時間浴びて、五回は身体を洗った俺は、シャワールームを掃除してから外に出た。

 

新しい服を着て、ファミレスの外にあるようなプラスチック製の椅子に座る。

 

向かい側には、凪が座っている。

 

目の前のテーブルには、マグロと……、タイ、だろうか?それとホタテの刺身。

 

キャベツと豚の生姜焼き。

 

具沢山の豚汁。

 

浅漬けのきゅうり。

 

デザートらしい、みかんゼリー。

 

それと何より、炊き立ての米が盛られた茶碗……。

 

「はぐ、んぐ……、は、はは、は……。こんなに、こんなに美味かったのか……」

 

「うう、おいしい、おいしいよお……」

 

俺達は、馬鹿みたいに泣きながら飯をかっ喰らった。

 

吐く寸前まで食うなんて、学生時代以来のことだった……。

 

ぽっこりと突き出た腹を抱えながら、俺は、この博士とかいう存在からルール説明を受けた。

 

聞いた限りでは、かなり公平で、それどころか、上手く使えば限りなく生活が楽になるものだった。

 

ん?

 

そういえば、さっきの正義漢さんはどこ行ったんだ?

 

「ん?お前の喧嘩相手なら、知り合いを呼んでくるとか言って帰って行ったぞ」

 

「ああ、そうですか」

 

なら、早めに取引とやらをしなきゃな……。

 

「取引材料は、あなたが街に配置した物資で、本当によろしいのですか?」

 

「うん、良いよそれで。でも、俺が配置した物資じゃないもの……、例えば、コンピュータとかなら高値で買い取るぞ。詳しい価格表はこれだ」

 

渡されたiPadは、取引アプリとやらがインストールされていた。

 

「……このアプリ、制作に、ゲームスタジオ『スターウェーブ』と『ガンブレスト』とありますが?」

 

「そうなんだよ!実は、知り合った生存者にいてさあ。こちらから依頼して、作ってもらったんだよ!」

 

なるほど、な。

 

「……その人達には、対価として何を渡したんですか?」

 

「インフラ」

 

「インフラ……?」

 

「ああ。無限に水を吐き出す生き物とかを渡してやった」

 

そうか……、専門技能を使った製品は、極めて高価に買い取りされる、ということか。

 

それなら……!

 

「三日……、三日だけ、時間をもらえませんか?!俺、車両整備ができるんです!近くに車両整備所を見つけたんで、そこの車を直しておきますから、それを買い取ってください!」

 

これが最善のはずだ!

 

「ほう!お前は、機械工学に造詣が深いのか!」

 

「はい!工業高校出て、工業大学も出てます!金属加工も行けます!」

 

「金属加工もか!それは素晴らしいな!刃物とか作れるか?」

 

「日本刀とかまでは無理ですけど、ナイフくらいなら……。その気になれば、ロングソードとかも作れますよ!」

 

「おおおっ!ファンタジーか!実に素晴らしい!専門技術によって作られる工業製品には、高値を払おう!それらを本当に作ってくれるならば……、前払いだ」

 

博士がそう言うと、黒尽くめの女が、ゴムで覆われたガラスの箱を持ってくる。

 

その中には、見たこともない、ナメクジのような、ウミウシのような、気色の悪い生き物がいた。

 

「うっ……、こ、これは?」

 

「これは、『電電虫』……。このように、コンセントを肉体に挿すと……」

 

うおお?!

 

通電した?!

 

「と、まあ、電気が使えるようになる。これを先払いしておくから、『車』を可能な限り用意してくれ。車両は、バイクかトラックだと助かるな。金属加工については、加工が可能な場所は……、ふむ、この製鉄所?と言うところから可能か?」

 

「そうですね、電力が使える前提なら、どうにか……。ですが、内部にゾンビがいれば無理です」

 

「なら、まずは車だ。車一台につき、頼れる護衛を一匹やろう」

 

「は、はいっ!」

 

お、俺の、俺の技能が必要とされている……!

 

ずっと、ずっと言われてきたんだ。

 

お前の代わりなんていくらでもいる、と。

 

そうか……、今はもう、俺の代わりはいないのか!

 

「あ、あの……、博士さん?」

 

ん……、凪だ。

 

どうしたんだ?

 

「取引してくださるんですよね?」

 

「おう、そうだ」

 

「だったら……、この食料と引き換えに、裁縫セットとかをもらえませんか?」

 

ふむ……?

 

こいつ、裁縫なんてできたのか。

 

「実は、私の実家は革細工のお店屋さんなんです。だから、私も少しは裁縫ができます」

 

「ふむ……、それで?」

 

「その、それで……、刃物を作るなら、鞘とかが欲しいですよね?」

 

「……なるほど!だが、革細工のための裁縫セットは流石に持っていないから、予約ということで良いか?明日、またここに来てくれれば渡そう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 




寒くて死にそうだが、電気代が怖いのでエアコンを控えなくては……。

で、今は田舎剣士書いてるんですけど……、この前キリのいいところまで書いたから、書く必要はないんだよなあ。

でも今は田舎剣士の波が来てるんだよなあ。やる夫スレで面白い現代ダンジョンもの読んでたから……。



あ、それと、アンケート置いておきます。

読者層について知りたいのでよろしくお願いします。

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