ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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基本的に読んでるものからガンガン影響を受けちゃう可哀想な子ですよ僕は。


29話 アメーバの一区切り

「何とかなりませんかねえ?」

 

自衛隊の大佐が、薄ら笑いを浮かべながら訊ねてくる。

 

この大佐という雄個体は、飄々としており、規律に関しては少し緩いところがあるが、なんだかんだで上からも下からも評価が高い、上手い立ち回りをするタイプだった。

 

その高いコミュニケーション能力から、俺への対応を一手に引き受けるやり手……、ということになっている。

 

因みに俺は、この大佐が裏で、避難してきた元警察関係者に、『サイコパスとの会話の仕方』を習っていたことを知っているぞ。

 

さてさて、何だったかな?

 

確か、俺が溜め込んでいる物資を『供出』しろ、だったかな?

 

米軍とやらが。

 

ふむ……。

 

「これ、殺していいやつ?」

 

「は、はは、それは困りますなあ」

 

「いや、居直り強盗でしょこれ。供出て……。兵糧を出先の村々で略奪する戦国時代の兵士かな?」

 

「やはり、厳しいですか?」

 

「いや、やりたいんならお前らがやれば?余分なくらいに食料を渡してやったじゃん」

 

「そうしたいのは山々ですが、米軍の方も多数の市民を抱えているようでして……」

 

なるほど、間に合わない、と。

 

「そんなん俺の知ったこっちゃないんだよなあ」

 

「あー……、では、何か仕事を任せてもらえませんかね?」

 

仕事……?

 

仕事の代わりに食料を寄越せと?

 

まあそれは構わないが……、うむ?

 

ふむ……、米軍ともなれば、戦闘能力がさぞお高いのだろうな。

 

よし。

 

「では、ゾンビを倒してくるように命じろ」

 

「は……?」

 

「ご存知だろうが、ゾンビには『変異体』という存在がいる。普通のゾンビを……、まあ、『ウォーカー』とすれば、走るゾンビである『ランナー』や、酸液を吐くゾンビである『ブーマー』など、様々な存在がいる。それと戦い、写真や映像を撮影して、どんな武器が、どんな戦術が効果的なのか、レポートを提出しろ」

 

「……しかし、それは」

 

「嫌ならやめてもいいんじゃよ?倒せなかったら倒せなかったと報告すればそれで良い。但しその場合、『このような攻撃をしたが、有効ではなかった』としっかり記述すること。前払いとして、保管してある保存食を十トン渡そう。あ、仕事をやらなかったら米軍基地を更地にするんで、そこんとこよろしく」

 

俺はそう言い残して、自衛隊の事務所を後にした。

 

うーん、もうこれでやることは終わりかな?

 

後は、細々としたことを済ませていこう。

 

米軍からのゾンビとの交戦記録を待ちながら、自衛隊キャンプを回っていくこととする。

 

 

 

自衛隊基地は、北から順に、『大型倉庫』『事務局』『司令部』『造船整備ドッグ』『海上保安部』『警備部』『潜水隊基地』となっている。

 

大型倉庫と事務局には、被災地の学校の体育館が如く、避難民達が集団で疎開している。

 

司令部は自衛隊員が寝泊まりしているらしい。また、物資の集積所であり、グラウンドには俺が作った家畜や作物が生えている。

 

大型倉庫、事務局、司令部の三つの施設は、周辺から集めてきた車などでバリケードが設置されており、少なくとも、敵は来ないはず。

 

敵ってのはゾンビだけじゃないぞ〜?

 

最近、自衛隊基地周辺に、銃を隠し持った男がふらついていたなんて話があった。

 

恐らく、警察署を崩壊させた奴だろう。

 

だがまあ、この自衛隊基地は警察署のように甘くない。

 

避難民は、避難してきたらまずパンツまで剥ぎ取られ噛まれてないかチェックされ、危険物は全部取り上げられるそうだ。

 

おまけに、門には常に自衛隊員が見張りしていて、昼も夜も自衛隊員が各所を見回りしている。

 

こりゃあ、どうしようもないな。

 

自爆覚悟でゾンビをたくさん嗾けるとか?いや、そんなことをすれば略奪できなくなるし意味がないか。

 

守りは盤石だな。

 

また、自衛隊所有のボートで、近くの海岸をぐるりと周り、三浦市まで行ったらしい。

 

田舎の三浦市は、ゾンビがまだ来ていないんだとさ。

 

なので、三浦市と連携を取りつつ、対岸の千葉県などともやり取りを始めるそうだ。

 

うん、頑張れ。

 

ホームセンターの元DQNグループは、インフラエンジニアや美容師、調理師などの、己の技能を活かして活躍中なんだとか。

 

最近は、船で三浦市の林業やってるところから木材を持ってきて、それで家を建てているらしい。

 

その他にも、自衛隊が調達してきたスクラップから、様々な機械を作り出し、コミュニティに貢献しているとのこと。

 

電気給湯器を作って、それで風呂……、とまではいかないが、身体を清めることが定期的にできるようになり、衛生面が良くなったとか。

 

ショッピングモールのグループは、医者としての技能をフル活用して、怪我や病気の避難民を救助中。

 

先日はなんと、駐屯地内で出産などがあったらしいよ。

 

栄養士の高年雌個体が、多くの中高年の雌個体を指揮して、日夜様々な料理を作っていて、基地全体の士気が高まっているそうだ。

 

まあ、生き物は飢えるとおかしくなるからな。

 

色々な奴がいて、カツ屋や寿司屋、蕎麦屋にラーメン屋もいたので、パイちゃんを派遣して作り方を教えてもらった。これで旨いもん食い放題じゃ!ぐへへ……。

 

警察署の警察官の生き残り達は、自衛隊に協力して、避難所内の見回りや、街へ遠征して物資を取ってくるなど、大活躍。

 

最近は、元警察官グループが横須賀図書館への遠征をして、様々な書籍を持ち帰ったとか。

 

少しずつ、子供達への教育なども再開され、署長なんかは泣いて喜んでいた。

 

三滝高校の生徒達は、運動部所属の生徒達が自衛隊と同じ訓練を始めて、訓練が終わり次第、自衛隊予備員として働くようだ。

 

あの生意気な弓持ちの雌個体は、毎日真剣に訓練に励んでいるようだ。

 

自衛隊も、なんだかんだで隊員はそこそこ減っているから、恥を忍んで民間人に手を借りたいと言う訳だ。

 

 

 

ふむふむ、エピローグとしては平和的で上等じゃないの?

 

やっぱり、バッドエンドは後味が悪いからね。

 




TRPG転生の続きがちょっと書けた。

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