ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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死!

追記:タイトルがしっくりこなかったので変更。


19話 イノシシの影

大型の雄個体と雌個体。

 

行動的には番ではないと予想できる。

 

見た目は……、あー、太眉熱血デカとデキる女、って感じ?

 

覆面ライダー俳優くらいのキャラ付けをして貰えば、現実世界の人間も見分けがつくんだけど、普通の人間はどうもなあ……。

 

「お前は何者かと聞いている!」

 

その二個体は、警察官が持つ銃である、ニューナンブと呼ばれるリボルバーを俺に向け、詰問してきた。

 

「いきり立つなよ、人間。言語によるコミュニケーションのやり方を忘れたのか?」

 

俺は半笑いでそう言った。

 

「な、なんだと?!」

 

「仲町君、退がって」

 

「でも、羽場さん!危険です!」

 

「仲町君」

 

「見たでしょう?!変形してゾンビをなぎ払い、火を放っていた!危険過ぎる!!」

 

「仲町君……!お願い……!」

 

「くっ……!わ、分かりました!」

 

ふーん?

 

やっぱり、刑事なのかね?

 

私服警官ってやつ?

 

雌個体は、懐から何かを……、ああ、警察手帳か。警察手帳を取り出す。

 

「羽場たつき、横須賀警察署の巡査部長です」

 

なるほど、予想通りだ。

 

「ふーん?で?こんな世界でも任意同行(任意とは言ってない)か?」

 

「……あなたが、交渉可能な理性ある生物であると見込んで、お話があります」

 

「お話ぃ?銃を向けながら恫喝することを『お話』ってえのか?」

 

「それはっ……!」

 

んん?

 

そんな話をしている警官の後ろに、スーツのキャリアウーマンが……。

 

いや、違う!あれは、彼女は!

 

「……動クナ」

 

「なっ……?!」

 

「羽場さん!」

 

「動クナト言イマシタ、武器ヲ捨テナサイ」

 

音もなく現れたキャリアウーマンは、映像がブレるように姿を変える……。

 

癖のある黒の長髪、クマのある死んだ魚のような目、モデルのようにすらりとした体型……。

 

実験体9号、パイアだ!

 

潜入型らしく、人間とほぼ同じ姿形をしたパイアだが、電磁波を自在に操り、肉体の形をある程度変化させて色々な存在に化ける能力を持つ。

 

今は片手を鋭い牙に変えて、それを女刑事の首筋に突きつけている。

 

パイちゃんがその気になれば、瞬きする間に女刑事の首を切断できるだろう。

 

そう、切断だ。

 

パイちゃんは潜入型だが、とは言え、その身体能力までもが人間並み……、そんな訳あると思うか?

 

パイちゃんの身体能力は、平成覆面ライダーの基本フォームくらいはある。

 

即ち、100mを3秒で駆け抜けて、十数トンのパンチキックを繰り出し、助走なしで10m以上跳躍し、アサルトライフルの弾丸を掴み取る。

 

そんな存在が、超プロ級の暗殺術を習得し、自在に姿を変え、電磁波を操作する能力であらゆるセキュリティを掻い潜り、潜入してくる……。

 

ある意味では、一番恐ろしい実験体だ。

 

「羽場さんを離せっ!」

 

「黙レ、人間。武器ヲ捨テ地ニ伏セナサイ。コノ雌個体ヲ殺害シマスヨ?」

 

「くっ……!」

 

ふむ、だがまあ、敵意は別にないんだよね。

 

問答無用で撃ってきたら、殺してたけど。

 

「パイちゃーん、放して良いよー」

 

「……イイノデスカ?」

 

「武器を下させればそれで良いから」

 

「ワカリマシタ、博士」

 

 

 

さあて、お話の時間だ。

 

俺は、パイちゃんとスーちゃんヒューちゃんを伴って、ショッピングモールに侵入する。キーちゃんは外で荷物を見ててもらう。

 

ショッピングモールの中には、三十人ほどの人間が籠城していた。

 

だが……。

 

「これは……、干し肉か?」

 

扇風機の風が、薄切り肉に当てられていた。

 

「はい、そうです」

 

女刑事がそう答える。

 

ははあ、なるほどなあ。

 

ソーラーパネル発電装置があるとは言え、曇りの日は使えないもんな。

 

それを考えると、電力がある今のうちに、電化製品を使って保存食を作った方がいいってことか。

 

かしこいね!

 

にしても……、物凄い、食べ物の匂いだ。

 

何か、料理をしているな?

 

匂いの中心点には……。

 

「はい、これを持っていって!これは……、ここで焼いてくださいね!」

 

細身の高年雌個体が、料理をしていた。

 

その隣で、料理を手伝う高年の雄個体。

 

中年少し前くらいの番も、それを手伝っていた。

 

ここの四体は、血縁関係があるな。

 

恐らく、両親とその娘夫婦と言ったところか。

 

「もしもし?」

 

和気藹々としたグループだが、俺の姿を見ると、誰もが怯え始める。

 

いや、俺じゃないな。

 

スーちゃんだ。

 

八本の触手からなる蛸足で、ひたり、ひたりと生ものらしい音を立てながら歩くその姿は、人間から見れば異形の姿ということだろう。

 

「責任者は、前に出ろ」

 

「な……?!き、君は……?」

 

「俺は、ティフォンと言うものだ。責任者に話を聞きたい」

 

「わ、私が、一応、責任者となっている」

 

前に出たのは、料理をしていた高年の雄個体だった。

 

中肉中背、眼鏡をかけた白髪の個体で、脊髄の形状がやや前傾していることが目を引いた。

 

顔は……、まあ、優しそう?なのかな?よくわからん。

 

「私は、外科医の松岡大吾だ。このショッピングモールに避難している」

 

なるほどね。

 

「こちらは、妻の千恵子だ。栄養士をやっていて、ショッピングモールの食材が腐らないように、保存食に加工してもらっている」

 

なるほど、なるほど。

 

「俺は、オデュッセイア機関の幹部、ティフォン博士だ。こちらは、俺が作った生物兵器のスキュラとパイアだ」

 

「な……?!!」

 

驚かれるが、そう言う反応は飽きたので、話を進めよう。

 

「情報交換がしたい。そちらの話を聞いても?」

 

「あ、ああ、もちろん構わないとも」

 

 

 

情報交換だ。

 

「粗茶ですが……」

 

横から、千恵子とか言うババアがお茶を出してきた。

 

「ああ、ありがとうございます。で、あー、まずこの辺に……」

 

俺は、茶を飲みながら話をする。

 

話したのは、コミュニティの位置についてと……。

 

「そう言えば、警察署の署長がこれを」

 

手紙を預かっていたことを思い出して、手紙を女刑事に渡した。

 

「拝見します」

 

手紙の内容は俺も知っているが、要約すると、「可能な限り人助けしろ」ということと、「家族を優先しなさい」ということ。

 

「署長……、ありがとうございます……!」

 

女刑事は一言そう呟くと、手紙を折り畳んで懐に納めた。

 

俺は、茶を飲み干して、大吾とか言う医者男に向き直る。

 

「で、こっちから聞きたいことがあるんですけど」

 

「はい、なんですか?」

 

まあ、大して聞くことはない。

 

パイちゃんが見つかったしな。

 

だが、一つ、どうしても聞いておきたいことがある。

 

「そっちの千恵子とか言う人は、麺からラーメンを作れるか?」

 

「「……は?」」

 

死活問題だ!!!

 




活動報告の方で、ライダーものの魔法少女キャラ案を募集してます。

なんか書いてください。

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