追記:タイトルがしっくりこなかったので変更。
大型の雄個体と雌個体。
行動的には番ではないと予想できる。
見た目は……、あー、太眉熱血デカとデキる女、って感じ?
覆面ライダー俳優くらいのキャラ付けをして貰えば、現実世界の人間も見分けがつくんだけど、普通の人間はどうもなあ……。
「お前は何者かと聞いている!」
その二個体は、警察官が持つ銃である、ニューナンブと呼ばれるリボルバーを俺に向け、詰問してきた。
「いきり立つなよ、人間。言語によるコミュニケーションのやり方を忘れたのか?」
俺は半笑いでそう言った。
「な、なんだと?!」
「仲町君、退がって」
「でも、羽場さん!危険です!」
「仲町君」
「見たでしょう?!変形してゾンビをなぎ払い、火を放っていた!危険過ぎる!!」
「仲町君……!お願い……!」
「くっ……!わ、分かりました!」
ふーん?
やっぱり、刑事なのかね?
私服警官ってやつ?
雌個体は、懐から何かを……、ああ、警察手帳か。警察手帳を取り出す。
「羽場たつき、横須賀警察署の巡査部長です」
なるほど、予想通りだ。
「ふーん?で?こんな世界でも任意同行(任意とは言ってない)か?」
「……あなたが、交渉可能な理性ある生物であると見込んで、お話があります」
「お話ぃ?銃を向けながら恫喝することを『お話』ってえのか?」
「それはっ……!」
んん?
そんな話をしている警官の後ろに、スーツのキャリアウーマンが……。
いや、違う!あれは、彼女は!
「……動クナ」
「なっ……?!」
「羽場さん!」
「動クナト言イマシタ、武器ヲ捨テナサイ」
音もなく現れたキャリアウーマンは、映像がブレるように姿を変える……。
癖のある黒の長髪、クマのある死んだ魚のような目、モデルのようにすらりとした体型……。
実験体9号、パイアだ!
潜入型らしく、人間とほぼ同じ姿形をしたパイアだが、電磁波を自在に操り、肉体の形をある程度変化させて色々な存在に化ける能力を持つ。
今は片手を鋭い牙に変えて、それを女刑事の首筋に突きつけている。
パイちゃんがその気になれば、瞬きする間に女刑事の首を切断できるだろう。
そう、切断だ。
パイちゃんは潜入型だが、とは言え、その身体能力までもが人間並み……、そんな訳あると思うか?
パイちゃんの身体能力は、平成覆面ライダーの基本フォームくらいはある。
即ち、100mを3秒で駆け抜けて、十数トンのパンチキックを繰り出し、助走なしで10m以上跳躍し、アサルトライフルの弾丸を掴み取る。
そんな存在が、超プロ級の暗殺術を習得し、自在に姿を変え、電磁波を操作する能力であらゆるセキュリティを掻い潜り、潜入してくる……。
ある意味では、一番恐ろしい実験体だ。
「羽場さんを離せっ!」
「黙レ、人間。武器ヲ捨テ地ニ伏セナサイ。コノ雌個体ヲ殺害シマスヨ?」
「くっ……!」
ふむ、だがまあ、敵意は別にないんだよね。
問答無用で撃ってきたら、殺してたけど。
「パイちゃーん、放して良いよー」
「……イイノデスカ?」
「武器を下させればそれで良いから」
「ワカリマシタ、博士」
さあて、お話の時間だ。
俺は、パイちゃんとスーちゃんヒューちゃんを伴って、ショッピングモールに侵入する。キーちゃんは外で荷物を見ててもらう。
ショッピングモールの中には、三十人ほどの人間が籠城していた。
だが……。
「これは……、干し肉か?」
扇風機の風が、薄切り肉に当てられていた。
「はい、そうです」
女刑事がそう答える。
ははあ、なるほどなあ。
ソーラーパネル発電装置があるとは言え、曇りの日は使えないもんな。
それを考えると、電力がある今のうちに、電化製品を使って保存食を作った方がいいってことか。
かしこいね!
にしても……、物凄い、食べ物の匂いだ。
何か、料理をしているな?
匂いの中心点には……。
「はい、これを持っていって!これは……、ここで焼いてくださいね!」
細身の高年雌個体が、料理をしていた。
その隣で、料理を手伝う高年の雄個体。
中年少し前くらいの番も、それを手伝っていた。
ここの四体は、血縁関係があるな。
恐らく、両親とその娘夫婦と言ったところか。
「もしもし?」
和気藹々としたグループだが、俺の姿を見ると、誰もが怯え始める。
いや、俺じゃないな。
スーちゃんだ。
八本の触手からなる蛸足で、ひたり、ひたりと生ものらしい音を立てながら歩くその姿は、人間から見れば異形の姿ということだろう。
「責任者は、前に出ろ」
「な……?!き、君は……?」
「俺は、ティフォンと言うものだ。責任者に話を聞きたい」
「わ、私が、一応、責任者となっている」
前に出たのは、料理をしていた高年の雄個体だった。
中肉中背、眼鏡をかけた白髪の個体で、脊髄の形状がやや前傾していることが目を引いた。
顔は……、まあ、優しそう?なのかな?よくわからん。
「私は、外科医の松岡大吾だ。このショッピングモールに避難している」
なるほどね。
「こちらは、妻の千恵子だ。栄養士をやっていて、ショッピングモールの食材が腐らないように、保存食に加工してもらっている」
なるほど、なるほど。
「俺は、オデュッセイア機関の幹部、ティフォン博士だ。こちらは、俺が作った生物兵器のスキュラとパイアだ」
「な……?!!」
驚かれるが、そう言う反応は飽きたので、話を進めよう。
「情報交換がしたい。そちらの話を聞いても?」
「あ、ああ、もちろん構わないとも」
情報交換だ。
「粗茶ですが……」
横から、千恵子とか言うババアがお茶を出してきた。
「ああ、ありがとうございます。で、あー、まずこの辺に……」
俺は、茶を飲みながら話をする。
話したのは、コミュニティの位置についてと……。
「そう言えば、警察署の署長がこれを」
手紙を預かっていたことを思い出して、手紙を女刑事に渡した。
「拝見します」
手紙の内容は俺も知っているが、要約すると、「可能な限り人助けしろ」ということと、「家族を優先しなさい」ということ。
「署長……、ありがとうございます……!」
女刑事は一言そう呟くと、手紙を折り畳んで懐に納めた。
俺は、茶を飲み干して、大吾とか言う医者男に向き直る。
「で、こっちから聞きたいことがあるんですけど」
「はい、なんですか?」
まあ、大して聞くことはない。
パイちゃんが見つかったしな。
だが、一つ、どうしても聞いておきたいことがある。
「そっちの千恵子とか言う人は、麺からラーメンを作れるか?」
「「……は?」」
死活問題だ!!!
活動報告の方で、ライダーものの魔法少女キャラ案を募集してます。
なんか書いてください。