ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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痩せティー!


12話 ボノボのように器用な

「ホームセンターは……、人はいないっぽいな」

 

「っすね。やっぱり、まだゾンビが出てから三日っすから、みんな家に避難してるんじゃないっすか?」

 

「じゃあ何でお前は家から逃げてきたんだよ?」

 

「いやー、うちは安アパートっすから、水が出なくなって……。それに、食料ももうなくて……」

 

すっかり三下口調になった海堂家の父親、龍斗を隣に、ぐいぐいと道を行き、高校から西へ七キロほどの地点へ。

 

ここは、ホームセンター『カインドハウス』……。

 

とりあえず、ホームセンターに外から呼びかける。

 

「おーい!人はいるかー!」

 

返事、なし。

 

人の匂いも……、しないな。いや、正確には残り香程度はあるが、生きた人の匂いはしない。

 

ゾンビの匂いも……、おお、しないな。

 

おかしくないか?

 

「警察署には避難民がたくさんいたんだがなあ」

 

「避難ノタメニホームセンターニ行クナンテ……、ソレハゲーム脳ッテヤツヨ?普通ハソンナコトシナイワ」

 

とスーちゃん。

 

おっと……、生物兵器に常識を説かれてしまったぞ。

 

え?俺がおかしい感じ?ゾンビとホームセンターは密接な関係にあるよな?え?

 

 

 

とりあえず、中に入ってみる。

 

中は……、うん、広いし、かなりの商品がある。木材の板や棒、鉄パイプ、鉄板……、それに工作コーナー。

 

それだけじゃなく、工具の類や堆肥に植物の種。インスタント食品や飲料水、家電、アウトドアグッズ。

 

特にDIYコーナーが充実している、と龍斗が言っていた。

 

まだ三日目だからかな?荒らされていないようだ。

 

「博士さん!水、出ましたよ!電気も点いてるし!」

 

龍斗が言うには、水道と電気は使えるみたいだ。

 

「じゃあ、あとは適当にバリケードでも作れば良いんじゃねーの?」

 

「そっすね、適当に業務用の冷蔵庫とか洗濯機でバリケード作りましょ」

 

「え?俺はやらんけど……」

 

「あっ、いや、それは俺がやるっすよ!俺、こう見えても大工なんす!」

 

へー。

 

まあ、学歴の低そうな顔してるしなあ。

 

大工って学歴が低い奴がやるんでしょ?俺知ってる。

 

「その、俺は材料確認して、軽く図面引くんで、その間、嫁と子供を見ててもらって良いっすか?」

 

えー……。

 

「博士、ソロソロ日ガ落チルシ、ココデ休憩シヨウヨ」

 

んー、そうだな。

 

俺達は人間じゃないが、なるべく人間らしい行動を取るように心がけている。

 

なるべく、朝に起きて夜に眠る。

 

本当なら、睡眠なんてものは一切不要なのだが、眠ることそのものは可能だし、身体に悪い訳でもない。

 

何より、メンタル面の問題だ。

 

俺はこんな身体になったが、メンタル面は人間のまま。

 

人間からあまりにも逸脱した生活をすると、何か問題が出るかもしれない。

 

俺の嫁も、夜は寝るようにとしつけてあるし……。

 

もちろん、生物兵器として、己にある機能は全て活用するが、できる限りは人間の振りをして生きていきたいと思っている。

 

実際、俺が狂ったら、どれだけの被害が出るのか見当もつかないからな。

 

それに、愛する嫁を傷つけたりはしたくない。

 

今晩はしっかり休もう。

 

 

 

次の日の朝に起きた。

 

時刻は九時ごろ。

 

夜型の俺は、寝ると朝早くには起きられないのだ。

 

キーちゃんもスーちゃんも、二人とも既に起きてたらしいが、俺が起きなかったから二度寝したそうだ。

 

重量的にベッドでは寝れなかったので、マットレスを床に敷いて寝ていたのだが……。

 

ギュリギュリギュリ!という音で目が覚めた。

 

「あ、博士さん!おはよっす!」

 

「おう、龍斗。バリケードは……、できたみたいだな」

 

大工だと言っていた龍斗は、流石と言うべきか、手早くバリケードを作り、設置したようだ。

 

業務用の大型冷蔵庫が横に、間隔を空けて並ばせてそれを重りとして、その間に、鉄パイプとベニヤ板をネジで留める。

 

そんな感じのバリケードだ。

 

これを、すべての入り口に設置したようだ。

 

小さな出入り口二つはそのような形のバリケードで塞がれているが、このホームセンターの正面にあるバリケードは形が違う。

 

鉄パイプで、片開き開閉式のドアのようなものがあり、そこから出入りが可能になっていた。

 

突貫工事のものだが、出来は素人目で見てもかなり上等で、鉄パイプ二本のかんぬきのようなもので閉め切ることもできるようだ。

 

それと、従業員用の出入り口も、内側から鍵を閉めて、業務用の洗濯機を置いて閉め切っているんだとさ。

 

総じて、大工だというのは嘘じゃなかったな、と思わせる。

 

かなり出来が良い。

 

一方で、龍斗の嫁である綾香と、その娘の模花はと言うと……。

 

「グリーンサラダ育成セットってのがあったから、水やりして日向に置いておいたよ」

 

「頑張った!」

 

とのこと。

 

ふーん、やるじゃん。

 

「あ、食い物も山ほどあったっすよ!流石は災害計画都市っすね、保存食が店にたくさん売ってて、店の倉庫には山ほど在庫があって、従業員の部屋にも非常用の食いもんがありました!」

 

「良かったな」

 

「それで……、博士さん」

 

「何だ?」

 

「良かったら、避難してる人をここに呼んでくれないっすか?」

 

え?

 

「良いのか?」

 

「はいっす。やっぱ、家族が一番大事っすけど、街の人らも困ってると思うんすよね。ま、できる限りは助けてぇし……、それに、人数が多い方が何かと助かるっす」

 

うーむ……。

 

「良いだろう、見込みがある人をここに案内する。その代わりに、ここを俺の仮拠点のうち一つとして使わせてくれよ」

 

「もちろんすよ!そもそも、ここまで来れたのは博士さんのおかげっすから!いつでも来ていいっすよ!」

 

 

 

まあ、中々だな。

 

学がなくてもこういう危機的状況で動けるのは良いことだ。

 

外資系とか、平常な世界ならモテモテな稼げる奴も、世界がこうなればすべて無意味だからな。

 

今、この時は、大工やら電気工事士やら、普段は「ブルーカラー(笑)」と言われてしまうような奴らや、格闘家などの「野蛮人(笑)」が役に立つ。

 

逆に、俺は社会人経験ないからよくわからんのだが、キレーなスーツでオフィスでパソコンカタカタやるような、『ディスカッション』やらをして、横文字で『イノーべション』とか言っているような奴らは、世界がこうなればクソの役にも立たないってことは分かる。

 

現在の世界がどうなっているのかなんて、インターネットも繋がらないだろうからよく分からないのだが……、俺が今日見てきた範囲では、もう壊滅状態だ。

 

今後は、強い奴が正義である。それが世界のルールだ。

 

しかしそれは、権力ではなく、腕力的な意味での強さだ。

 

そして俺は、腕力的な意味で最強クラス。

 

力こそが正義!良い時代になったものだ!

 

うん、愉快に暮らせそう。未来は明るいな!

 




おおっと!

書けなくなってきたぞー。停滞!

とりあえず、ソシャゲ転移は10話まで書きました。

プログラマ転生は28話まで。

スルッと書ける部分は書いてしまったので、恒例の鈍りですよ。

脳の処理速度を百倍くらいにしてくれないかなー。

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