1話 始まりはアメーバ
秘密結社『オデュッセイア』、第六研究所所長兼生物兵器開発部部長『嵐山雄介』……。
長ったらしいそれが俺の肩書きだ。
俺の仕事は、この、日本の神奈川県に存在している、オデュッセイアの第六研究所の所長として、組織の管理をすることが仕事だった。
組織管理なんざ柄じゃねえが、他のやつにやらせて不都合が出るのは困るから……、俺が生物兵器開発部の全てを好き勝手したいからなあ。
でもこの組織もおかしいんですよ、悪いのは俺だけじゃないんです。
俺の創り出した『作品』がたまたま大活躍したからって、若輩者の俺を幹部にするとか、何考えてんのよこの組織。
まあそれを言ったら、俺の『創作活動』はオデュッセイア以外じゃできねえしなあ。
でもでも、創作活動がしたくてオデュッセイアに入ったのに、幹部になんかされちゃったから、創作活動以外もさせられてるし……。
はあ、世知辛いねぇ、全く……。
こんな時はやっぱり、『俺のお姫様達』に会うのが一番だな!
カードキーにパスワードをピピピのピッと。
「おはよう!俺のフィアンセちゃん達!」
うんうん、今日も変わりはないな!
「「「「「オハヨウ、博士!」」」」」
俺は一人一人に声をかけていく。
「ヒューちゃん、今日も鱗が綺麗だね!美人さんだよー!」
「エヘ、アリガト……」
「キーちゃん、今日も綺麗な毛並みだ!美しい!」
「ウン!デモ博士ハ、髪ノ毛ボサボサ!切レバ?」
「スーちゃん、素敵な触手だね!可愛いよ!」
「フン!当然ヨ!私ハトッテモ可愛イノヨ!」
「デルちゃんは角がカッコいいよ!大好きだ!」
「ヘッヘーン!俺様、カッコイイ!」
「パイちゃんも牙がセクシーだ!愛してるよ!」
「アラ……、嬉シイワ、博士……。コンナ化物ヲ愛シテクレルノハ、貴方ダケヨ……」
いやー、俺の嫁、可愛いなあ!!!
こうして、嫁の健康診断と経過観察、データ採取などを和やかに済ませる。
素晴らしいデータだな。
もう、実戦投入も何度かしている。
だが、俺の嫁なので、俺の権限をフル稼働させてでも、定期メンテナンスの必要性ガーとか言って、必ずこの研究所に定期的に帰還させるようにする。定期メンテナンスはもちろん嘘だが、バレてない。
だって嫁だし。ここぞ権力の使い所じゃい!
とは言え、実験体である彼女達に戸籍なんてものは存在しないんで、結婚なんてできないんですけどねー。
さあ、そしたら仕事だ。
あー、やだやだ。
ぶっちゃけ、嫁の方が仕事してないよ。
生物兵器が遊んでて、創造主たる俺が忙しいのっておかしいよなぁ?
普通逆じゃねえかなあ。
はぁ……。
今日は、食糧生産エリアの視察かぁ……。
食糧生産エリアとなると、吸収した細胞を記録して、特定の電気刺激を与えることにより、記憶した細胞を再現するアメーバ状の生命体『ヘシオドス』の管理維持だけだ。
そんなものになんでこの俺が……、って、まあ、ヘシオドスを作ったのは俺なんだが。
いい加減マニュアル化とかするべきなのかな……。でも俺、研究以外のことはよく分からんし……。
「全く、俺はオデュッセイアの他の幹部共の言う、世界の支配なんて興味ないんだよ。俺はただ、アニメを見たり、ゲームをしたりしながら、嫁とイチャイチャしたいだけなのにな……」
おっと、何かこう、フラグっぽい発言だったな。
こういうやれやれ系主人公っぽい台詞を吐くと、面倒事とか大事件に巻き込まれそうだ。
まあ、現実はフィックションとは違うからヘーキだ『Beep!!!Beep!!!』えっ何事?
あっ、隔壁が閉まった……、閉じ込められた。
『異常事態発生。異常事態発生。職員は避難してください』
「いや……、避難できねーんだけど」
ばちん!
あ、電源が……。
非常電源に切り替わるまで五分くらい、だったか?
あれ?そう言えば、ヘシオドスって電気制御型だったから、電気がないと……。
「ぐっ?!これは……、食われ……っ!!!!ぐああああああっ!!!!」
えっ?短くてよくわからない?
じゃあもう一話行きます。