溢れんばかりの大きな乳房を真紅のホルターネックドレスで包み、ファーのついた黒い襟巻きと黄金の首飾りが美しい肢体を飾りつけ。
血のような赤色のルージュを、色気ある分厚い唇に塗っている。
明るい色合いの金髪はポニーテールに纏めて、セクシーなうなじを見せつけ、目元には泣き黒子。
歳の頃は三十半ばくらいだろうか?マダムというには少し若い。
金細工の長キセルで紫煙をくゆらすこの美女は、娼館の支配人『マダム・ルシャナ』と名乗った。
「女連れで娼館に来るなんて、ふざけた坊やだこと……」
「ん?何か問題でもあるか?」
「問題?分からないの?」
「分からんな、ここは宿屋だろう?」
「娼館よ」
「ん?娼館と直接に言うと色々と問題だから、宿屋ということにする……、じゃなかったか?」
ニコラウス王子の政策だ。
つまり、高い金で宿を借り、そこにたまたま居合わせた娼婦と『自由恋愛』してもらう訳だな。
詭弁だが、この詭弁こそが人間性ってなもんだ。
少なくとも、この建前のお陰で宗教関係との衝突が減ったのは確かだな。
「はぁ……、良いわ。但し、料金はちゃんと払ってもらうわよ」
「もちろんだ、金を払わないで宿に泊まるのは違法だからな」
俺はそう言って、金延べ棒を一本創造し、マダムに押し付けた。
「では、全館貸切で」
「あー……、もう好きにしなさいな!」
呆れた様子のマダムは、顔を歪めながら俺から金を受け取った。
「で?どうするつもり?言っておくけど、ここではまともな料理も出ないわよ?上等なのはベッドと『サービス』だけ」
「それは大丈夫だ、俺が勝手に作るから。おっと、キッチンは借りて良いか?」
「勝手になさい。娼婦は要らないわね?それだけ綺麗どころを揃えているんだもの」
「は?いや、欲しいに決まってるだろう?貸切なんだから、一番人気から見習いまで全員抱くぞ?」
「えっ?は?えぇ……?」
は?
俺は何かおかしいことを言ったか?
「あの……、貴女達はそれで良いの?」
アデリーン達を見るマダム。
ああ、因みに、ジョンは流石に娼館に宿泊はできないと断って、近所の中級宿に向かったぞ。
そして、アデリーンはこう返した。
「んん……、まあ……、その辺は個人の自由なんだけど……」
複雑な顔をしながら、もじもじする。
アデリーンは俺を愛しているとまではいかないが、好感を持っている事は確かなんだよな。
そんな俺がこうも奔放だと、なんとなくやきもきしてしまうのは仕方ない事だ。
まあもちろん、俺はそうやって、アデリーンの心をかき乱して反応を見る遊びであるという意識もあるのだが、それは良いだろう。いつものことだ。
「……まあ、良いさね。これだけの金を払ってくれたんだ、一週間は貸切にしても良いくらいよ。エルフのお嬢さん達は別室で休んでおくれ。黒髪の旦那はあっち」
マダムはそう言って、金延べ棒を大切そうにその大きな胸の谷間に仕舞い込みつつ、指をさした。
その方角には、レッドカーペットが敷かれた階段がある。
恐らくは、上等な部屋に通されると言うことだろう。
「マダムは相手してくれないのか?」
「冗談はおよし。私みたいな年増を……」
「全然構わん」
「ちょ、ちょっと旦那?!」
俺は、マダムを姫抱きしながら階段を登った……。
———「ちょっと待っ……、ご無沙汰なの!そんないきなり……、あおぉっ♡おほおおおっ♡♡♡」
いやぁ……、マダムは良いね。
その手のプロなだけあって上手い。
他の子もよく躾けられていて、大変楽しめたぞ。
五十人くらいの気絶した娼婦にタオルをかけてやり、ベッドに寝かせる。
そんなことをしていたらもう昼だ。
俺はアデリーン達の部屋に入る。
「いやあすまんすまん、調子乗った」
「いいえ、良いのよ。男の人は色々と……って何で全裸なのよ?!それに臭い!貴方、すごい臭いよ?!」
あ、服着てなかった。
それと、臭いは性液と汗だな。
「あ、すまんすまん……、『浄化』」
魔法で臭いを消す。
「流石は師匠です!」
ヴィクトリアはこれしか言わないな!
「どの辺が流石なんだ?」
「多くの女性を侍らせるのは、男性の甲斐性ですよ?」
時々貴族理論出してくるよなこの子。
ヨナは、「お妾さんだし、文句を言える立場じゃない」と弁えた発言をする。
あ、ノースだが、彼女は昨日のうちに、王都の大神殿に向かったぞ。パーティから離脱するようだ。
しばらく修行して、何かあればまた依頼を出してくれるみたいだ。
まあそもそも、固定パーティじゃないからなあ。
アデリーンやヴィクトリアですら、依頼によっては別行動だし……。
それに、王都までの移動は長旅だったしな。
皆、疲れているだろう。
しばらく休暇としよう。
拠点はこの娼館、『蜂の巣亭』で良いだろう。
さあ、王都観光と洒落込むか。
世知辛めの現代ダンジョンもの!
家の庭にダンジョンができたので、探索者になる元ヤンおじさんのお話。
ナチュラルにサイコパスなおじさんをご照覧あれぃ!
Q:何故、関東全域を支配する最強の不良チームの総長をやめたんですか?
A:えぇ……?だってそういうのは若い頃だけやるもんじゃないかな?第一、群れるのは趣味じゃないしなあ。
Q:カツアゲとかしてきたような悪者が、何故のうのうと生きているんですか?
A:ああ、若気の至りだねえ。でも、弱い方が悪いから仕方ないよ。カツアゲされるのが嫌ならさ、鍛えて強くなって、カツアゲする側に回ると良いよ!
Q:それは、昔は悪かったみたいな武勇伝のつもりですか?
A:え?武勇伝?何のことかな?カツアゲって、弱い奴から奪うって話だよね?それは当たり前のことで、別に武勇伝じゃなくないかな?そもそもおじさんは、喧嘩で手こずったことがあんまりないからなあ……。武勇伝なんて特に思い浮かばないんだ、ごめんね。
Q:今のご職業は?
A:実家のバイク屋で働いてたんだけど、ダンジョン騒ぎの不景気で潰れちゃってさあ……。仕方ないからフリーターだよ、ははは。でも、ムカつく上司を殴るから、すぐクビになっちゃうんだ。いやあ、情けないね。
そんな感じの倫理観ヤバめのおじさんの家の庭にダンジョンが!
「うーん、仕事もクビになっちゃったし、いっそ探索者っていうのをやってみるかなあ」
と、探索者をスタート!みたいな。
尚、この世界のダンジョンはまだまだ黎明期。
ダンジョン発生から五年、おじさんは三十歳。
絶対的なチート能力など存在せず、年単位で定期的にダンジョンに潜ると、いくらか身体能力がアップする「レベルアップ」現象と、レベルアップ現象に伴い、「アーツ」という一種の超能力を身につけられることが確認されている。
但し、アーツ持ちは世界で一千人足らずしか確認されていない。
要するに、レベルがクソほど上がりにくいが、一つレベルが上がるだけでかなりの強さになることと、魔法使いは激レアということです。
そして、主人公は、『強化魔法』の使い手であることに後々気が付きます。
「あんたのその異常な怪力はなんなんだ?!」
「ええ?これ、レベルアップじゃないのかい?」
「そんな訳ねーだろ!ダンジョン潜って半年でレベルアップなんてしないし、したとしてもそんなに強くはならない!あんたのそれは……、『アーツ』だ!」
みたいな。