ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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忙しい……。


15:街を破壊する盗賊団を、直ちに殲滅したまえ!

俺は、良からぬことを考えている盗賊を捕らえて、冒険者ギルドに放り込んだ。

 

「なっ、なんだあ?!」「ワアッ……!」「おいおい!」

 

驚く冒険者を他所に、俺は捕まえた盗賊に蹴りを入れる。

 

「な、何事だ?!」

 

ギルドの受付兼酒場のマスターの中年……、ギルドマスターが飛び上がるかのように椅子から立ち上がるが、それを無視して俺はショートソードを抜き放ち、盗賊の太ももに刺した!

 

「ぎゃ、ああああああっ!!!!」

 

「喋れ!喋らんと殺すぞ!」

 

俺が威圧しながらそう叫ぶと、盗賊達は我先にと喋り始めた。

 

威圧ロールに成功ってこと?うーん、そんなに怖い顔してるかな?まあいいや、インタビュー開始。

 

「お、俺達は盗賊団の団員だ!」

 

「お頭の命令で、下水道から街に入ってきた!」

 

「今晩に街を襲撃する予定で」

 

「俺達は夜に内側から門を」

 

「門を開く予定だったんだ!喋った!喋ったから助けてくれ!」

 

「こ、この、テメェ!俺、俺の方がもっと喋るぜ!あ、あー、そうだ!お頭は強い!盗賊団は人数は五十人くらいだ!」

 

「魔術師もいる!あと、弓持ってる奴も!」

 

「火をつける予定だから炎の術を使う魔術師が多いんだ!」

 

それを一通り聞いたギルドの職員……、っつっても、酒場のマスターの息子なんだが、そいつは、今聞いたことを素早く認めて、手紙を書いて衛兵隊の詰所へと冒険者を急がせた。

 

五十人の盗賊など、尋常ではない話だ。

 

この世界の兵力の規模なら、ちょっとした戦争並みの事件である。

 

前も言ったかもしれないが、住民全ての人口の2%までが、その国の養える兵士の最大数だ、と。

 

そう考えてみれば、五十人の戦士というのは、五千人の人口を持つ都市の戦力と等価と言っていいだろう。

 

つまり、このボロネスカの常備兵と同じ数の盗賊団が攻め入ってくるということ。

 

当然、尋常な事態ではない。

 

更に言えば、敵戦力の中には、魔術師までいる。

 

魔術師というのは非常に少ない。そもそも、完全に才能の世界である魔術の世界……、つまりは、呪文を理解し記憶する知能(INT)と、魔術の燃料たる魔力(MP)の双方を備え、更には、魔術師としての教育を受ける必要がある。

 

更にその中から、戦闘行動が取れる魔術師のみが、戦闘魔術師として兵員にカウントできるのだ。

 

人数比的に考えると、魔術師の数は、専業の戦士十人に対して一人いれば御の字と言ったところ。

 

つまり、五千人ほどの総人口のこのボロネスカの街には、常備兵が五十人、魔術師兵が五人しかいない。もちろん、冒険者が三十人くらいはいるのだが、専業の、正規の訓練を受けた衛兵達と比べれば、練度は低いと言えるだろう。

 

まあ何にせよ、五十を超える魔術師兵を含む盗賊団というのは、充分にこの街の滅亡の可能性がある一大勢力であると言っていいということだな。

 

さて、面白くなってきたな。

 

俺は、ニヤつく顔を引き締めるように心がけながら、酒場のカウンター席に腰掛ける。

 

「お前!」

 

ギルドマスターは、そんな俺を呼びつけた。

 

「何だ?」

 

俺は、適当な感じでそう返す。

 

「よくやった!お手柄だ!評価点は期待して良いぞ!」

 

「金も忘れるなよ」

 

「情報が確かだったら、たんまりやるよ!」

 

そう言って、ギルドマスターは、立てかけてある斧と円盾を取り出し、革鎧を着ながら叫び、冒険者を集め始めた。

 

「お前はメンバーに声をかけろ!寝てる奴は叩き起こせ!何ぃ?二日酔いだぁ?!引きずってでも連れてこい!」

 

慌ただしく冒険者ギルドは動き始める。

 

「何があったの?」

 

おっと、アデリーンだ。

 

アデリーンは、蜂蜜色の御髪を翻し、甘くまろやかな女の香りを無自覚に振りまきながら、俺の隣の椅子に腰掛けた。その柔らかい微笑みは、童貞坊主なら自分に気があるんだと勘違いしてしまうような、清楚さと愛くるしさを兼ね備えている。

 

「盗賊団が街に攻めてくる。今晩に、五十人以上で」

 

とは言え、この俺が女の色気に惑わされることはない。むしろ、アデリーンの色気に引っかかるのは、対人経験がないような人間が殆どだろう。アデリーンは、故意に可愛らしく振る舞っているのではなく、素の状態で可愛らしいのだ。こういうのに引っかかるのは、女の、人間の汚さを知らない純情君だけだ。

 

さて、半笑いで盗賊団の情報を説明した俺に対し、アデリーンは。

 

「それって本当?!拙いわね、準備をしなきゃ!」

 

と、驚きの表情を見せてくれた。開いた口を手で隠す、お上品な驚き顔だ。

 

「え?何これ、強制参加なの?」

 

「当たり前じゃない!こういう時に戦わないで、何が冒険者なの?!」

 

なーるほど?

 

確かに、有事の際に戦力を提供しない武装勢力なんて、存在を許される訳がない、か。

 

まあ良いや、じゃあ行こうか。

 

 

 

冒険者ギルドと衛兵隊は、盗賊団を迎え撃つことにしたようだ。

 

冒険者三十人と衛兵五十人という数を活かして制圧するらしく、街の周りを囲む石壁や門の上に弓を持った衛兵が配置され、魔術師ギルドからの応援で来た魔術師も六人配置された。

 

……魔術師ギルド、ねえ?そんなのもあったんだな。

 

まあ、そんな感じで、ここで一網打尽にしたいから、あえて門を開く振りをして、そこから攻めるとのこと。

 

もちろん、門は開く振りをするだけで、実際には開かない。

 

防御する側の方が確実に有利なのは、考えなくても分かる自明の理だろう?

 

有利な防衛側の立場を捨てるつもりはない、ということだな。

 

そう言えば、このような石の城壁と大きな門は、どこの街にもあるものなのかね?フィーユ村にも、ボロかったが柵のようなものはあったな。

 

この世界はモンスターの存在があるから、どんなに小さい村でも最低限は柵くらいはあるってことか。

 

で、この街はそこそこの規模の街なので、そこそこに堅牢な防備がある。

 

確かに、補修費用が捻出できていないのか、門は古く、石壁も所々ひび割れている。

 

しかして、防御力的にも、耐久力的にも、盗賊団と戦うこの一戦くらいは保つだろう。

 

そして今、盗賊団は予定通り現れて……。

 

「今だ!やれーっ!」

 

「「「「おおおおおっ!!!」」」」

 

衛兵隊は盗賊団を倒すために門を開く!……振りをした。

 

だが、盗賊団は、事前に聞いた話と違って十人くらいだ。

 

この十人の盗賊団は、門の近くに潜んでいた冒険者二十人に囲まれてボコボコにされる。

 

うーん、こりゃ囮だろうなあ。

 

「万物の根源たるマナよ、我が手に集まり、爆ぜる火球となりて、敵の身を焼き焦がせ!『火球(ファイア・ボール)』!!!」

 

ほらね?

 

向こう側の茂みに隠れていた盗賊魔術師が、ファイア・ボールの魔法を唱えた。

 

この世界でのファイア・ボールは、着弾点で直径6feetくらいの爆発を起こすかなり高火力な魔法だそうだ。

 

決して、近頃のライトノベルファンタジーのような、初級の簡単な魔法ではない。

 

むしろ、攻城戦から対人戦で幅広く使われる、かなり強力な魔術であった。

 

具体的には、メイジレベル3魔術ってところだろう。威力的には……、見たところ、榴弾大砲くらいになるんじゃなかろうか?

 

そんなファイア・ボールは、前衛の盗賊団員ごと、冒険者二十人を吹っ飛ばした!

 

「「「「うわあああっ!!!」」」」

 

なるほど、やはり、最初に現れた盗賊団員は囮だったのか。

 

そして、続々と現れる盗賊魔術師は合計でなんと十人!その内半分がファイア・ボールを唱えて、瞬く間に門と門の上の人員を吹っ飛ばした。

 

門の近くにいた衛兵と冒険者は大打撃を受けてしまう。

 

冒険者と衛兵、合わせて三十人近くが吹っ飛ばされしまった。

 

更に、奥から盗賊団の増援がやってくる。

 

最初に門にノコノコ近づいてきた盗賊団員は、落ち人っていうか、脱走してきた農奴のような奴だったのだが、今現れたのは屈強な戦士達だった。

 

更に、人数も、五十人どころか百人はいる。

 

つまるところ、街の中に来ていた盗賊団員は捨て駒で、あえて捕らえられて誤情報を撒き散らすための罠だった訳だ。更に言えば、先発で差し向けられた盗賊団員も囮。

 

仲間を使い捨ての駒にする悪辣な戦術だが、その効果は絶大だな。

 

恐らくは、防衛戦力をあえて一か所に集めて、まとめて叩く為だろう。

 

そうすることにより、範囲攻撃魔術師による奇襲攻撃で大多数を倒せるからな。

 

こちら側は総崩れだ。

 

そこに、丈夫そうな鎧を着た戦士達が、叫び声を上げながら襲いかかってくる訳で。

 

まあ、劣勢だよね。

 

もちろん、戦力的には俺一人で全滅させられるんだけど、多少被害が出てから動いた方が格好が付くよなあ。

 

なんで、もうちょっと静観。

 

お?

 

「連なる電光よ、敵を貫け!『連鎖電撃(チェイン・ライトニング)』ッ!!!」

 

「「「「ぐわあああっ!!!」」」」

 

おー。

 

アデリーンが雷撃を発して、四人くらいの戦士を焼き焦がした。

 

凄いな、この世界では多分強キャラなんだろうね、あの子。

 

さて、そろそろ動くか。

 




エロ……、エロが書きたい。

末法エロを。

いや、エロは書けないなあ……。

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