できれば小説も読んでアークも見ろ!
さあ、やっとラダムに到着したぞ。
特に関門などもないので、街の中に入り、手近な宿に荷物と馬を置いてその辺の飲食店に行く。
さて、まずはストーリーイベントを……。
……いや、この世界はゲームではない。
ストーリーイベントなど起きないか。
ゲームでは、ラダム王国の王都であるここ『ラダム』にプレイヤーが到着した時点で、ストーリーイベントがスタートするんだよ。
目算数百メートルはある巨大な女神の霊が王城の真上に現れ、神託をする。
曰く、『世界の東西南北にあるダンジョンを攻略して魔王を倒しなさい』と……。
実際に、街に入って人の会話に耳を傾けると、既に女神は神託を済ませた後らしく、女神についての話題がそこら中で聞こえてきた。
つまりそれは、俺達がいなくてもストーリーは進むということで……。
「なるほど、極めて危機的な状況にある訳だ」
俺はそう呟いた。
「「「「「「えっ」」」」」」
隣に座るローズ達がそれを聞いていたらしい。
「ちょ……、ちょっと待ちたまえ。極めて危機的な状況とは何だね?!」
「それはそうだろう。つまり、この世界は俺達が介入せずともストーリーが勝手に進むんだぞ?」
「そう言えば、このゲームのストーリーについて詳しく知らないのだが……」
ああ、それか。
この世界のストーリーは、プレイしてみると、多数の登場人物と多角的な視点からの語りが多く、かなり複雑のように思えるが、そのところ実は簡単だ。
「まず、この世界の創造者たる、『天の女神アリオスビルト』という神がいるんだが、この神が定期的に気に食わない文明を滅ぼして人類をコントロールしてるんだ。この文明を気に食わないらしく、世界をリセットしようとしてる」
「……ふむ」
「で、それを咎めた『魔の神キリングバイド』が、アリオスビルトを止めるんだよ」
「なるほど」
「キリングバイドは、自らの眷属である四体の『魔王』を東西南北に配置して、この世界の中央にある『世界樹』を封じたんだよ。世界樹は、この世界と天界を繋げる軌道エレベーターのようなものだ」
「……つまり、こういうことか?魔王が全て倒されると、天界から世界をリセットするための軍勢が送り込まれる、と?」
「そうだな」
「更に言えば、天の女神は地上の人間に魔王を倒せと神託を済ませた、と?」
「そうだな」
「……拙いではないかっ?!!!」
「そうだな」
だから危機的な状況だと言ったんだが。
「ああ、因みにこれは異端な考えだから公言しない方が良いぞ」
「最大の宗教勢力が敵なのか……」
そうだな。
「さて、これからどうする?俺はとりあえず、天界の軍勢が降りてこようとこまいと、抗えるだけの力をつけておきたいのだが」
「それはそうだな。私達だって、世界の終わりに巻き込まれたくはない」
「ん?お前らはお前らで好きに生きていいんだぞ?もう既に、基本は教えただろう?」
「それは、そうだが……」
んー?
「しかしながら、我々はこれからも君の力を借りたいと思っている。今まで上手くいっていたのは全て君のお陰だ。この安定感を崩したくない」
ふむ。
「俺に何のメリットがある?」
「我々にできることなら何でもしよう。今はまだ無理かもしれないが、訓練を積めば、君の補佐をできるようになるかもしれない」
ふむ、一理ある。
「だが、そんなことをするくらいなら、その辺で強いクリーチャーを捕まえて調教する方が早い」
「……動物に交渉や工作ができるのか?」
ん……?
ああ、そういうことか。
「俺はプレイヤー。お前らもプレイヤー。あとは全てクリーチャーだ」
「は?ええと、つまり……、この世界には、モンスターと人間の区別がないということか?!」
え?
今更か?
「友好的な奴はどんな化け物でも交渉相手になるし、人型でも襲ってくるなら敵だ。そこに、モンスターやら亜人やらの区別はない」
「な、なるほど」
「つまり、俺はその辺で使えそうなクリーチャー……、ああ、そうだな、人間を捕まえて、そいつを調教しても良いんだよ。俺がこれ以上お前らの面倒を見るメリットとは何だ?」
「……すまないが、明確なメリットは提示できない」
ふむ。
流石に、身の程を弁えている、か。
ある程度従順で、更に俺と同じ『プレイヤー』だとすると、側に置いておく方が有利であるとは言えずとも不利には間違いなくならない。
プラスに傾かないがマイナスにもならないというのは、損失の可能性を潰すと言うこと。
それは当然、良いことだ。
「だが正直、俺にとってお前らはいてもいなくても変わらない存在だ。このラダムならば、冒険者としての依頼には事欠かないだろうし、さっきも言ったがこの世界の基本は教えたつもりだ。なのに、まだついてくるのか?」
「……迷惑だろうか?」
「別にどうでも良い。好きにしろよ。だが、俺は身銭を切ってまでお前らを助けるつもりはない。ただ、聞かれたことに答えるだけだ」
「分かった、これからもよろしく頼む」
どうでも良い。
邪魔をするなら殺せば良いだけだ。
さて。
ここはラダムの外郭街。
ラダムには二重の城壁があり、一つ目の内側は王侯貴族が、二つ目の内側は下級貴族や上級市民が、それより外は様々な存在が住む。
ここ、外郭街は、様々な存在が住む外側の街。
その様相は、東南アジアのようだ。
即ち、様々な商店が出店や屋台を出し、そこら中で喧嘩だのなんだのが起き、道は人でごった返す。
代読人が掲示板の前でニュースを叫び、道行く屈強な冒険者を娼婦達が誘惑し、薄汚いスリのガキがボーッとしている街人から財布をスる。
市場といえば実に雑多で、野菜や肉類もあれば、魔法で冷やして持ってきた海の魚もある。
他にも、得体の知れぬ錬金術の材料から、量り売りされるポーション、奴隷の競り、よくわからないガラクタ売り。
日本ではとても見れないような活気と熱気に、異形組は圧倒されていた。
「こ、これは凄いな……!東南アジアや、インドにアフリカ……、そんな感じだろうか?」
ローズは、龍人らしい縦に割れた瞳孔を丸めてそう言った。
心なしか楽しそうだ。
旅行気分なのかもしれない。
「ひ、人がいっぱい……」
逆に、人嫌いなアヤは、俺の後ろに隠れた。
「はえー、すっごいですねえ。MMOの世界ですよこれ」
「ファンタジー!ファンタスティック!ハラショーデスよ、部長!」
ララベルとオーマは楽しそうにしている。
「あわわ……、こんなの、逸れたら二度と会えなくなっちゃいますよ!みんな!逸れないように気をつけて〜!」
この金髪の天使は、レトロゲーム部の顧問だった国語教師の畠山莉子(はたけやまりこ)……、今の名をジャンヌと言う。
エンジェル超能力者という強力な組み合わせをした女だ。
やはり、教師だった頃の癖が抜けきらないのか、引率っぽいことをしようとしているな。
さあ、まずは、市場で装備を揃えるぞ。
正直、ローグライクはちょっと失敗したかなと思ってます。
自分的には最凶傭兵みたいなノリで書いてるつもりなんですけど、盛り上がりに欠けますね。
モデルはお察しの通りえぉななんですけど、馬鹿正直にメインストーリーだけ進行させるとすぐ終わっちゃうんで、なるべく回り道させたいんですけど、この回り道イベントがうまく書けないのが俺の弱点ですね。
でも、まだ初期段階だから、回り道ってかできることも少ないんですよねえ。
俺がなろうで読んでるとある作品は、日刊更新だけど200話で一年くらいのクッソスロースペースでやってる話がありましたよ。それでも読める作品なんだから凄いよなあ。