ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ちんちんちん。


『依頼』を受けると効率的に稼げる

「それで、依頼は何を受ければ良いだろうか?」

 

ローズが問いかける。

 

周囲は、喧騒と言えるほどに人はいないが、十数人ほどの人間がエールを傾けつつ炒り豆を口に運び、歓談しているのが見て取れる。

 

カウンターには、老齢と言うにはいくらか若い、がっしりとした体格の男性がおり、こちらをジロリと睨み付けている。

 

壁には、幾つかの『依頼』が書き殴られた羊皮紙が数枚貼り付けられている。

 

そう、ここは、イームル村の酒場を兼ねている冒険者ギルドだ。

 

シャールノスは、語りかけてくるローズと目も合わせずに、依頼の書かれた羊皮紙を幾らか壁から剥ぎ取って、ローズに押し付けた。

 

ローズは、その依頼書を読む。

 

内容はこうだ。

 

『害虫駆除』『薪割り』『荷運び』『採取』……。

 

どれもが、子供のお使いレベルの依頼だ。

 

それを見て流石に、ローズも眉をひそめた。

 

こんな程度の仕事しかないのだろうか、と。

 

「随分と、簡単そうだが……」

 

「簡単だろうな。ガキの遣いレベルだ」

 

「もう少し、割の良い仕事は……」

 

「それは、『功績』がなければ回されない」

 

そう、功績システムである。

 

功績がない冒険者に、いきなり重要な任務は任されない。

 

例えば、街から街への荷運びなどは、信用のない冒険者には任されないのだ。

 

その信用の度合いを、『功績点』という尺度で数値化されている。

 

功績点が高ければ、責任が重大だが報酬が大きい依頼を受けられる。

 

何の功績もないローズ達は、アルバイト程度の依頼から実績を積む必要がある。

 

そもそも、田舎には基本的に、あまり依頼は多くないのもあるのだが……。

 

「ここは、何でこんなに依頼が多いんだ?」

 

シャールノスは、店主であろう厳つい男にそう声をかけた。

 

「……そりゃあ、ここが人通りの多い宿場町だからだな」

 

店主は、そのぎょろりとした大きな二つの目をシャールノス向けてそう言う。

 

詳しく聞くと、このイームル村は、田舎ではあるのだが、大きな街から街を繋ぐ道の中間地点にあるそうだ。それはシャールノスもゲーム知識で知っていた。

 

北西の街を『メドキア』、東の街を『ラダム』と言い、メドキアは鉱山が近くにあり、その鉱石を輸出する。そして、ラダムは、毛皮やそれを使った服の他、奢侈品の輸出などで有名だ。

 

この二つの街は、街道を歩きで一ヶ月ほどの距離にある。

 

また、このイームル村はメドキアから十日、ラダムから二十日の位置にあり……。

 

定期的に隊商の類が通りかかるらしい。

 

とは言え、このイームル村のような村はいくつも存在するので、隊商が必ず泊まっていくとは限らないのだが……。

 

「なるほど、これは街追加MODが入っているな」

 

シャールノスが呟く。

 

そう、この世界は『MODもヴァリアントも全部乗せ』であるからして、街の数が非常に多くなっているのだ。

 

MODやヴァリアントについては、メジャーどころは全て導入した記憶があるシャールノスではあるのだが、シャールノスも全てを知っている訳ではない。

 

本来、《灰の玉座》のゲーム中では、メドキアとラダムの間にはこのイームル村しか存在せず、イームル村も一番初めに訪れるであろう村であること以外には何の特徴もない田舎だった。

 

だがこれが、MODやヴァリアントの効果で、小さな街が星の数ほど増えて、それに伴うサブストーリーや依頼が激増したのであろう、とシャールノスは予測した。

 

事実その通りで、中世がモデルの《灰の玉座》の世界が、マップ全体が広々と広がり、様々なNPCが追加され……、人口は地球並みとなっていた。

 

地球並みの人口がある世界ともなれば、この田舎の宿場町程度にも、様々な依頼があるのは想像に難くないことだ。

 

何せ、このイームル村の総人口は『千人を超える』のだ。公式設定の『三十世帯ほどの小さな村』は何処へやら。

 

と言う訳で、この冒険者ギルドにも沢山の依頼が来ているのだそうだ。

 

「分かった。では、皆も依頼を……」

 

ローズの指揮の下、全員がそれぞれ依頼を受けた。

 

もちろん、依頼が多いとはいえ、村の中に三十も四十も依頼がある訳ではない。そこは、グループごとに依頼を受けることで解決した。

 

 

 

元数学教師のオケアノスと、三年生バレー部部長だったフレアが、村の中で斧を振り下ろす。

 

かこん、かこん。

 

小気味良い音がリズム良く響く。

 

薪割りである。

 

斯波海斗(しばかいと)だった存在、テング野伏のオケアノス。

 

九条茜音(くじょうあかね)だった存在、ハーフオーガ戦士のフレア。

 

「しかし……、異世界に来てやることが薪割りとは」

 

村人から借りた鉄の斧を、一時的に切り株に置いて、割れた薪を集めるオケアノス。

 

テング故に、濡れ烏のような翼と、猛禽の脚を持つ。

 

元々持ち得ていた優れた相貌は、人外へと成り果てた今もまだ充分に美しかった。

 

「嫌なんですか?」

 

こてん、と首を傾げるフレア。

 

赤膚の大鬼たるハーフオーガが女らしい仕草をするのは、少々滑稽に思えるかもしれないが、そこには何故か可愛らしさがあった。それは、彼女が生来持っている愛嬌からだろうか。

 

「いや……、嫌という訳ではないが、恵まれているなと思ってな」

 

「はあ……?」

 

「この世界は中世並みの文化だと言う。そんな世界で、薪割りをしてお金を稼げるなんて、恵まれている。本当は、もっと酷いことをしなければならない筈だ」

 

「酷いことって、何ですか?」

 

「他人から奪ったり、盗んだりだな」

 

「えっ!そんなこと……」

 

「もちろん、やりたくはないだろう。だが、生きていく為に悪事をしなければならない……、という事態になっていた可能性もあるんだ。そうならなかったのは一重に、シャールノス君の知恵を借りられたからだ」

 

「なるほど……、感謝しなきゃですね!」

 

「ああ、そうだな。それに、こうして斧を振るだけで『斧術』のスキルが伸び、『筋力』の能力値が育つそうだ。良い仕事を紹介してもらったものだ」

 

 

 

こちらは、野外に採取に来たハーフリング盗賊とドワーフ鍛治師である。

 

一年生の椎名苺(しいないちご)だった存在であるベリーと、一年生の岩倉砂織(いわくらさおり)だった存在であるサラの二人だ。

 

ハーフリングには『採取』、ドワーフには『採掘』のスキルが初期からあるために、それを使って薬草や鉱石を採取しに来たのだ。

 

因みに、薬草も鉱石も、月二回起きる地殻変動でその辺にいきなり小山ができたりするので、採取ポイントがこの世界からなくなると言うことはない。

 

二人は、薬草を摘みと鉄鉱石掘りに精を出している……。

 

「はあー、ちょっち休憩っすよ!」

 

「うん、そうだね」

 

「どれくらい進んだっすか?」

 

「とりあえず、要求された量の半分くらい?」

 

「おお、良いっすね。アタシもおんなじくらいっすよ」

 

「働くのって、大変なんだね」

 

「え?バイトとかしてなかったんすか?」

 

「うん、私はやってなかったかな。ベリーちゃんはやってたの?」

 

「はいっす!……つっても、コンビニ店員っすけどね」

 

「それでもすごいよ!私、親がダメって言うから、バイトとかできなくて……」

 

「いやいや!高校生でバイトなんて、やらないで済むならその方がいいっすよ!貴重な青春をバイトで磨り潰すなんてもったいない!」

 

「そうなのかな?良い経験になると思うけど……」

 

「大学ならまだ良いんすけど、高校生なら青春を楽しんだ方が良いっすよ!……そう言えば、アタシ達って一年だし、青春らしい青春を過ごせずにここに来ちゃったなあ……」

 

「じゃあ、これからいっぱい青春すれば良いんじゃないかな?私は楽しいよ、毎日みんなとお仕事したり、キャンプしたり!……戦うのはちょっと怖いけど」

 

 

 

こうして異形組は、全員が依頼をこなし、成長していた……。

 




駄目だ、やっぱり俺には才能がないんだ!ってなりつつも、自分が書いた文が好き過ぎて半泣きになりながら書いたりしてる。けど読み返すとやっぱりクソだな!ってなる。

創作者は複雑怪奇……。

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