とりあえず、野営地を出てしばらく歩いた。
普通、《灰の玉座》では、『グローバルマップ』という大きな盤面を歩く。
グローバルマップでは、1マス動くごとに速度のステータスなどに準拠した時間が経過する……。
普通の、野営地や街中のマップでは、1マス動くのに時間は殆ど経過しない。
つまり、グローバルマップでの行動は、長距離移動を意味しているのだ。
グローバルマップに『侵入』すると、『野外』マップに入れる。
野外マップは、グローバルマップ上の道の詳細マップと言った感じだ。
野外マップは、街中マップなどと同じく、1マス動く程度では時間は経過しない。
そして、野外マップでは、木の実を拾ったり、野草や薬草を摘んだりなどができるし、ちらほら存在しているクリーチャーを狩ることもできる。
……つまり、何が言いたいのか?
この世界は《灰の玉座》ではあるが、現実である、と言うことだ。
ゲームなら、グローバルマップをちょちょいと進めばすぐ村に着いて……、と言った感じだったが、この世界では、普通に長距離を歩く必要がある。
ゲームでは気軽に移動できていたが、この世界ではそうじゃない。
「なるほどな」
俺は感心した。
素晴らしい作り込みだ。
そう、この世界は、ゲームであってゲームでないのだ。
恐らく、NPC達も意思を持った人間だろうし、別の街への移動や護衛などは命がけになるだろう。
面白いじゃないか。
よし、では、しばらく進むか。
おっと、クリーチャーの襲撃だ。
「襲撃だ、退がってろ」
「何?!」
ローズの言葉を無視して、武器を抜いた俺は、前方から迫りくるゴブリンの群れをミンチにした。圧巻の速度1000!この辺りじゃ無敵だな。
にしても……、なるほどな。
襲撃も当然ある、と。
ゲーム内では、グローバルマップ上にシンボルエンカウント型のクリーチャーの影があり、それとぶつかると強制的に野外マップに入れられて、そこでクリーチャーと戦うことになる。
もちろん、逃げてもいいし、基本的に低レベル帯では逃げるべきだ。レベル1のプレイヤーは悲しいくらいに弱いからな。
レベル1のマジックユーザーなんかは、直接戦闘では野良猫にも劣るぞ。
ここに現れたゴブリンも、レベルは6くらいだから、レベル1の近接職が一対一で倒せるかどうかと言ったところだな。
そんな訳だから逃げた方が良いのだ。
「す、すまない。君にばかり戦わせて……」
ローズがなんか言ってる。
「いや、レベル1の状態で野外のクリーチャーと戦闘するのは危険だ。普通はここで逃げるのがセオリーだな」
「そうなのか?あの……、ゴブリンか?ゴブリンは、そんなに強い存在だったのか?」
「あんたが一対一で命がけで戦って勝てるかどうかと言ったところだな」
「ゲームバランスおかしくないかそれは????」
「ローグライクだからな」
「だが、なら何故、君は今戦ったんだ?」
「勝てるからだが」
「何故勝てると?」
「いや、アウターゴッドだし」
「……そう言えば、君の種族は見たことがないものだな」
「アウターゴッドだよ。ヴァリアントのoversoulで追加されるextra種族だ」
「よく分からんな、詳しく聞いても?」
「《灰の玉座》はオープンソースのフリーゲームだから、誰でもプログラムを操作して改変できるんだ。ヴァリアントと言うのは、本家《灰の玉座》を改造したものを指す」
「ふむ……、改造版でのみ選べる強力な種族ということか?」
「そんな感じだ。だから、ある程度のクリーチャーは倒せる。少なくとも、野外に現れる程度の雑魚なら楽勝だ」
「我々は、その雑魚ですら倒せないのか……」
「レベル1のプレイヤーは雑魚以下のカスだからな。身の程を弁えて生きてくれ」
そう言うと、俺は地面に置いておいた背嚢を背負い直して、再び歩き出した。
陽が落ちた。
夜は、クリーチャーが強いので、活動を控えるべきだ。
「う……、これは凄いな」
ローズがそう言って、自分の背嚢を漁り始める。
「どうしたんですか?」
周りの人に心配されるが……、恐らくあれは……。
「とても……、とても空腹なんだ。頭がおかしくなりそうだ」
そう、ドラゴニュートは燃費が悪い。
腹が減りやすいのは、空腹度というものがあるローグライクにおいて、かなりの欠点だ。
そう言って、『保存食』を齧る異形組だが……。
「「「「不味い……」」」」
そう、保存食は不味いのだ。
設定資料集にも書かれているが、とても不味いらしい。
なので俺はそんなものを食べない。
肉を調理して……、こんがり肉だ。
「ふむ、こんな味なのか」
まあ、悪くはないな。
おや?周りの奴らが見ているな。
「食うか?」
「良いのっ?!」
飛びついてきたのは、デーモン司祭のララベルだ。
「ああ、良いぞ」
「わーい!もぐもぐ……、美味しい!でも、食べたことない味だけど、これ何?」
「……本当に食べてしまったのか?」
「……え?え?!何?!これ何?!」
「安心しろ、さっきのゴブリンの肉だ」
「オボロロロロロ」
うわ、吐いた。
へえ、この世界、やっぱりゲームとは違うな。
普通は、ゴブリンの肉を食べても吐くことなんてないのに。
「せ、先輩、マジでぶっ殺しますよ????マジで……、マジで、ねえ、本当に!!!!」
にしても、そんなに怒ることか?
「普通に食料だろ?虫の肉やエイリアンの肉じゃなくて良かっただろうが」
動物の肉なんだからまだマシだろうに。
そして、そもそも俺達は既に人外だぞ?
人間の倫理観なんてこの世界じゃ何の役にも立たんと言うのに……。
「そういう問題じゃ……、え?虫とか食べるんですか?!」
「そりゃあ、食うものがないなら、犬くらいでかいゴキブリやネズミを解体して……」
「ひ、ひいぃ!聞きたくない!聞きたくないです!!!」
うーん?
そんなに無理か?
地球でもイナゴや蜂の子やらを食っている地域があるだろうに。
「調理すれば無機物や人間すら食える世界で、その辺のことをじっくり考えるのは無駄だぞ」
俺は適当にそう言った。
実際、それ以外に言うことがない。
「は、あははははっ……。この人頭おかしい!!!」
生意気だなこいつ……。
今は屋台マンの続きを書いてます。
屋台マンの続きどうしよっかな……。
まず、とりあえず、ヅカお嬢様の紹介で帝国の帝都に向かうんですけど、その途中で村に寄って行商したり、立ち寄った街でモンスターのスタンピードが起きてそれを支援する話を挟みます。
そして、帝都に行って、ヅカお嬢様の紹介状の元、陸軍の元帥に会います。元帥の依頼で元帥の派閥の兵士に飯を食わせます。
元帥の依頼で、しばらく帝都で店をやります。店は、最初は美味さで大繁盛して、お姫様や貴族もお忍びで来るようになります。けど、ステータスアップ効果がバレて商売どころじゃなくなる。物売るってレベルじゃねえぞ!
元帥は、ステータスアップはもちろん素晴らしいが、飯の美味さに感動して、厚意で帝都の一等地に店を出させたのに、こんな大ごとになっちゃったのは誠に遺憾。実は認識に齟齬があり、元帥は、食べたらステータスが一度だけアップすると思ってた。本当は、食べれば食べるほど強くなる。
流石にやべーっしょ!ってことで、元帥がパワーで事を収める。その間、主人公は他所に行っていてくれってことで、公費で東の群島国家に送り込まれる。
群島国家では日本食っぽいのが受け入れられるので、日本食チートしながら、現地のサムライを唸らせる。
しばらくチートしてると、帝国に戻ってきてくれと言われるので戻る。
戻って皇帝とお話したりなんだりして、結果として傾奇御免状ならぬ料理御免状ももらう。これは、料理に関する事なら皇帝にすら意見していいという証。ある意味、爵位よりすごい。
あとどうすっかな……。どうすると面白いと思う?
そうだな……、再びヅカお嬢様に会いに行って、北方の特産品作りに協力する話とかどう?
異世界だし異種族に料理振る舞わなきゃな。王国方面に戻って、エルフの森を突っ切ろうとしてエルフに捕まるが、なんだかんだで料理を作ることになり、美味い料理を作ったので許されたとか。
王国とバリバリ戦うドワーフの国にお邪魔して、王国と頑張って戦ってもらうために料理を作る。
王国よりもっと西の砂漠で、リザードマンになんか食わせよう。砂漠超えにモンハンみたいな砂漠の上を動く船に乗ってさあ。
砂漠を超えた先のまた別のギリシャ的群島国家で……。
大陸中心部の商業国家で……。
うーん、思いつかん。
あと、屋台マンは、なるべくヒロインとコミュ取ってイチャイチャさせたいなとは思ってるんですけど、皆さんその辺どうなんです?いつもの、「お前の事情なんざ知らんが可愛いからついてこい!」系はヒロインが添え物トロフィーと化すのであんま良くないかなとか思ってたんですけど。