ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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グエーッ。



10:人の顔をした獣

「て、提督?その、握手してくれないか?」

 

「………………」

 

「あ……、ありがとう!提督の手はごつごつしているな。男の手だ……」

 

「で?何だ?」

 

「あ、ああ。私は武蔵だ。よろしく頼む」

 

「そうか」

 

「私は大和のように、粋や風情を解する出来星ではなく、武辺の他には取り柄がない無骨者ではあるが、だからこそ、その武力なら大和にも負けん!是非、貴方の力にならせてくれ」

 

「好きにしろ」

 

武蔵の最愛の人は、そう言ってすぐに視線を切った。

 

興味なさげな、虫けらを見るような視線を。

 

「あ……、わ、分かった……」

 

武蔵は、その視線を身に受ける。

 

好いた男からそんな視線を向けられるのは、女として耐えられなかった。

 

 

 

「提督!私はサラトガです!よろしくお願いしますね!」

 

「そうか」

 

「私は、夜間航空攻撃が得意なんです!他の艦娘には中々できないことですから、是非私をたくさん使ってくださいね!」

 

「夜だと普通は攻撃できないのか?」

 

「いえ、そうとは限りませんが、私は夜間での航空攻撃に特化しているのです」

 

「なるほど。使えるのか?」

 

「あ、はい……、必ずや、お役に立ちます!」

 

サラトガは、自分の美貌に全く興味を持たず、使えるかどうか?などという話をされて悲しみを抱いた。

 

確かに、艦娘は『モノ』なのかもしれないが、一切の人権を、人格の全てを否定するような言葉を投げかけられるのは、辛かった。

 

 

 

「私は、アークロイヤルだ。よろしく頼む」

 

「そうか」

 

「私は……、夜戦もできるが、得意じゃない。だが、コストパフォーマンスが高いので、是非、こき使ってくれ」

 

「そうか」

 

「あ、あの……」

 

「もう話すことはないはずだ、消えろ」

 

「あ……、ご、ごめん、なさい……」

 

愛する男に消えろと面と向かって言われて、傷つかない女がいるだろうか?

 

 

 

「ユーは、U-551。その、よろしくお願いします……」

 

「そうか」

 

「あ、あのっ、ユーは、頑張ります。から、見捨てないでほしい、です……」

 

「頑張る?」

 

「は、はいっ!精一杯頑張りま」

 

「黙れ。結果が出なければ頑張るなどという言葉に意味はない」

 

「あ……。だ、だったら!ユーは!ユーは昔、無抵抗な市民の乗ったタンカーや商船を沈めていました!だ、だから、Admiralの為なら、無抵抗な人間も殺してみせます!」

 

「何を言ってる?当たり前だろう?命令を聞かないなら、消えろ」

 

「は、はい……」

 

護国の神霊たる艦娘に、市民を殺すなどと言わせる。

 

自己を否定させる。

 

 

 

「俺は木曾だ。お前の願いを聞き届け、軽巡洋艦ではなく、重雷装艦として顕現した」

 

「そうか」

 

「お前の為ならどんなことでもやるからな、気兼ねなく命令してくれ」

 

「そうか」

 

「あ、あの、それで……、つ、辛いことがあれば、俺に言ってくれ!俺は、お前の力になりたいんだ!」

 

「ハッ、下らん」

 

「あ……、よ、余計なこと、だった、みたいだな。す、すまない……」

 

気遣いすらいらない。

 

 

 

「時雨だよ」「夕立っぽい!」

 

「そうか」

 

「僕達は白露型の駆逐艦だよ。戦艦と比べたら小さいし脆いけれど、その分、足が速いし、魚雷で一発逆転も可能だよ」

 

「提督さんの為に、夕立は頑張っちゃうっぽい!もちろん、結果も出すっぽい?」

 

「そうか」

 

「提督の敵は僕達が倒すからね」

 

「私達にできることなら何でも言って!」

 

「当たり前だろう?貴様らは俺の道具だ」

 

「「っ……!」」

 

道具扱い……。

 

 

 

この通り、配下の艦娘らに丁重な挨拶を受けた狂死は、一言言った。

 

「で?俺に取り入ってどうするつもりだ?」

 

「と、取り入るって……!そんなつもりはないよ、僕達は心から」

 

「黙れ。女なんてみんな同じだ。金の匂いがする男に尻尾を振って、そして裏切る。お前らも同じだ」

 

時雨は、聞いていればいるほど辛くなった。

 

どうやったら、ここまで人間を信じられなくなるのか。

 

一体、今までの人生で、何人の人に裏切られてきたのか。

 

「提督、違うよ、僕達は違う。心から君に仕えるよ」

 

「口ではなんとでも言える。人間など皆須く獣だ、人面獣心の獣だ。それは、お前らだけじゃなく、俺も、誰もがそうだ」

 

一応自覚はあるらしい。

 

自らが、醜い獣であるという自覚が。

 

「そ、そんなことないよ!提督は!」

 

時雨が反論をしようと声を上げる。

 

しかし、狂死はそれに、射殺さんばかりの視線を向ける。

 

「黙れ、人間なんて生き物は碌なもんじゃない、醜い化け物だ。……深海棲艦などよりも、ずっとな」

 

「そんな……っ!」

 

時雨は恨んだ。

 

提督を、自らの愛する人を、醜い獣に変えてしまったこの世界を。

 

「そんなことはありませんよ、提督は、きっと優しい人だって、私達は信じていますから!」

 

サラトガがそう言って、狂死の手を取った。

 

「人が、泥水を啜るのか」

 

「………………え?」

 

「泥水を啜り、虫けらを喰い、襤褸布を纏って木陰で眠るのか」

 

狂死の記憶だった。

 

何故、狂死が刑務所で静かに生きていたのか?と言えば、刑務所の中の方が良い暮らしができたからだ。

 

所謂、「ムショの臭い飯」も、腐って蛆の沸いた生肉よりは、ずっと上等だ。

 

「あ、ああ、あ……!!!」

 

サラトガは、狂死の言葉を聞いて、狂死が辛いことを思い出してしまったのだと考えた。

 

「ご、ごめんなさい!わ、私は、そんなつもりじゃ……!」

 

「謝罪なんて求めてねぇよ。ただ、答えてみろ。泥水を啜り、虫けらを喰い、襤褸布を纏って木陰で眠る生き物は、人間なのか?なあ、教えてくれよ」

 

「あ………………!」

 

サラトガは、答えられなかった。

 

人間らしい生活を知らない狂死。その狂死の問いに。

 

それはそうだ、幼少期の頃を浮浪者として過ごしてきた狂死は、人間らしい生活などとは程遠い生き方をしてきた。

 

狂死が自らを獣と称する理由は、そこからもきているのだろう。

 

「こ、これからは!これからは、人間になれるはずだ!」

 

武蔵が言った。

 

これからの人生は、いくらでも変えられる、と。

 

希望を与えたい一心での言葉だった。

 

「今更、人間とやらになってどうする?そもそも、世の中の自称人間様連中も、一皮剥けば醜い獣だと言っているだろうが。俺だけが獣なんじゃない」

 

「そんなことはないはずだ、探せば、良い人間もいるはずで……」

 

「へえ?そうなのか。じゃあ、俺の周りにいた人間は、偶々、屑ばかりだったと。そう言いたい訳だな?」

 

「そ、れは……」

 

そんな訳はない。

 

大人達は、裏路地で眠る幼き日の狂死に、嫌悪と侮蔑の篭った視線を向けるばかりで、誰一人として手を差し伸べることはなかった。

 

そんな視線を受けて育った人間が、人間に育つ訳がない。

 

また、そんな視線を向ける人間は、果たして人間なのだろうか?

 

「……これからっ!これから貴方の周りにいるのは、私達艦娘だ!私達は、貴方の力になる!守ってみせる!だからっ!」

 

「何が、周りにいる、だ。気色悪い……」

 

そう吐き捨てた狂死は、机の上にある拘束具を武蔵につけた。

 

「お前らなんてどうでも良い。使ってくれと言うから、使ってやるだけだ。思い上がるなよ」

 

「っ……!」

 

そう言って、拘束具で艦娘を縛った後に、狂死はベッドに入った……。

 




いやマジでね、この物語に出てくる艦娘は、散々曇らせられるし、しかも絶対に救われないんですね。

辛い……!書いてる作者が辛い……!

次の次からはまたなんか別なの行きます。

ローグライクかなあ……。

なんか読みたいのとかあります?

今の手札はこんなもん。

・ローグライク転生ー30話くらい
五十年くらい先の近未来地球で、クッソ古いローグライクフリーゲームをやり込んでいたレトロゲーム部部長の高校生(テライケメンの万能天才のサイコパス)が、教師と全校生徒全員でそのローグライクフリーゲーム世界に転生する話。
なろう小説らしく、人外転生からの追放もの。三人称をちょくちょく入れて、群像劇風味にしてみた。設定として、この時代の地球では、課金額で殴り合うようなグラフィックばかりが良いだけのVRMMOが流行っていて、主人公はゲーマー拗らせてるからレトロゲー(つまり、我々の時代のゲーム)をやり込んでいる。ヌルゲーのVRMMOをやっている追放してくる側のアホ共が苦しみ、主人公について来た目端の利く奴らがどんどん成功していく対比を眺めてね!

・回答者ー10話くらい
人類は、神に一つだけ『天稟』というスキルの類を授けられる中世前期並みのナーロッパ世界に、言語学部の博士号を持って、一般企業に就職後、アメリカで語学教師をやっていたおじさんが、国家有数の大貴族の五男坊として転生する話。なお、貰えるスキルは『回答者』つまり、「知りたいことなんでも教えよう!」という知識チートな話。
クソ強い人間にすり潰されて、奴隷扱いされている亜人達が、実は地球での外国語に当たる言葉を話していたら?そして、それを唯一理解できる言語学者が転生してきたら?って話。例えば、龍人語はドイツ語、獣人語はギリシャ語みたいな感じで。かわいそうな亜人奴隷ちゃんを買い取って可愛がり訓練し、気がついたら手のつけられないほどの強さと信仰心を持つ狂気の軍団になっちゃってましたって話。ある意味で旅人提督と同じノリ。

後は前に書いておいた、

・生物兵器
クリーチャー娘が好き過ぎて作っちゃった頭のおかしいマッドサイエンティストが、ゾンビアポカリプスと化した日本でサバイバルやる話。

・ロボ×魔法もの
ファンタジーながらも地球の二十一世紀並みに発達した世界。人類種は一人一体のファンタジーロボを与えられる。主人公は日本の元軍人で、ロボゲーのランク1の腕前の転生主人公。

・召喚もの
ダンジョンパニックにより文明がほぼ滅んだ世界。ダンジョンとの戦いであらゆる資源を使い切った人類は、ダンジョンに潜りダンジョンの資源を採取することで辛うじて生きながらえている。そんな中、『好きな次元の好きなものを、消費する魔力に応じて手に入れられる』とかいうぶっ壊れ固有魔法を持っているサイコパス主人公が、ダンジョン探索者の専門学校にぶち込まれる話。

が十話ずつくらいあります。

特になんもなければ、このままローグライク行きますけど、良いですかね?

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