小説を書きたいんだけど書きたくないんです。
書きたいものがいっぱいあるんだけど、その度にネタを探して頭を悩ませ校正して……。
もう嫌だ、俺の脳内をシミュレーションして、俺が書きたい小説をコンピュータに書かせてくれ。
教官は療養のため休暇。
別の教官が手配された。
「教官の平沢聡太軍曹だ。よろしく頼む」
「「「「よろしくお願いします」」」」
「槻賀多候補生もよろしく……、ああ、私は、前の教官のように、どちらが上かで争うつもりはない。ただ、必要なことを教えるだけだ」
その言葉を聞いた狂死は、それに納得した。
下手に出ている人間にまで噛みつくことはない。獣故に、無駄に吠えはしないのだ。
「まず、諸君らには初期艦を建造してもらう」
「建造?艦娘ってのはプラモデルみたいに作るもんなのか?」
鹿波が訊ねた。
「鹿波候補生、敬語を使いなさい。あー、建造だが、資材を使って儀式を行うと、艦娘が生まれる。その儀式をやってもらうということだ」
「儀式ぃ?あー、えっと、俺達がなんかこう、歌って踊ったりするのか……、するんですか?」
「そんなことはしない。祈祷をすれば良いだけだ」
「祈るだけってことか、ですか?」
「そうだ。さあ、社に来たまえ」
「御宅坂候補生、前へ!」
「はいですぞ!」
社。
赤い鳥居のある、鹿島大明神を祀った小さな社だ。
ここで、資材を使って妖精さんに祈祷することにより、艦娘が建造される。
因みに、実はあまり場所は関係がない。
妖精と資材があれば、理論上はどこでも艦娘を建造できる。
「き、祈祷と言っても、何をどうすれば……?」
御宅坂が戸惑う。
「想像するのだ」
「は?」
「お前を守り、助けてくれる女を、想像するのだ」
「拙者を、守る……」
御宅坂は想像する。
自分を守ってくれる、同好の士を。
その想いを感じ取った妖精は……。
『おっけーい!建造!パイルダーーーオーーーン!!!』
高速で屈伸運動しながら何事か意味のわからない言葉を叫ぶ。
すると、積み上げられた資材に紫電が染み渡るように走る。
瞬間、風が勢いよく吹き荒れる!
この場の全員が目を閉じた時、光と共に……。
艦娘が一人、現れた。
「貴方が……、私の司令官?」
「えっ、あっ、そうでござる」
「私、初雪。よろしく」
「よ、よろしくでござる」
美しい黒髪と、物静かな雰囲気を纏う少女。
御宅坂の初期艦は、初雪。
ネームシップたる吹雪の姉妹艦。
駆逐艦であるが故に、脆さと火力の低さがネックとなるが、この世界のシーレーン維持のために最も多く動員されているのは駆逐艦。
駆逐艦は最も多く存在する艦種ではあるが、小回りが利く故、護衛艦としての任務を主に行なっている。
深海棲艦によるシーレーンの破壊により、海を奪われた人類にとって、現在ある海を安全に使うことは最も重要と言っても過言ではない。
確かに、戦艦や空母の戦闘能力によって、深海棲艦に侵略された領域を奪還することも重要ではあるが、それ以上に、現在残っているか細いシーレーンを維持することの方が大事という意見もある。
この糸のようにか細いシーレーンによる細々とした貿易があるからこそ、人間は今現在、生きていられる……。
戦艦や空母が未来を取り戻すために戦うのなら、駆逐艦は今を守るために戦うのだ。
戦闘能力的にも、大型艦にすら大打撃を与えられる魚雷を持ち、機動力の高さを生かして翻弄する、使いやすい存在でもある。
「駆逐艦か……。初期艦としては最適だな。次、鈴村候補生!」
「は、はいっ!」
次に呼ばれたのは鈴村だ。
鈴村は想像する。
自分と共に肩を並べて戦ってくれるパートナーを。
『良いねぇ!イクゾーーー!!!』
妖精が謎のパラパラダンスを踊り、再び紫電が迸る。
そこに光が満ちて……。
「ユーが私の提督デスか?私は金剛デース!」
栗毛に巻き髪の美女が現れる。
鈴村の初期艦は金剛だ。
「金剛って言うのか。よろしくな」
「よろしくデス、提督♡」
戦艦。
戦艦は極めてレアリティが高く、戦艦持ちの提督は十人もいない。
具体的に言えば三十四人の中で八人と、戦艦を持つ提督は殊更に少ない。
何故か?
戦艦のような強力な力を持つ艦娘を召喚するには、より高度な素質を持つ提督が必要だからだ。
提督は、素質があるかないかの二元論ではなく、素質が強いか弱いかなのである。
素質が弱い提督は、駆逐艦や海防艦などの小型の艦娘としか縁を結べない。例えば、先の御宅坂などは比較的素質が弱いのである。
それと比べて、妖精の声までもが聞こえる鈴村は、高い素質を持っており、強力な艦娘、戦艦の金剛と縁を結べたのだ。
金剛は、現在確認されている艦娘の中でも、中々に高い戦闘能力を持つ戦艦である。
他にも、癖の強い扶桑型や伊勢型などがあるが、基本的に正面戦闘では金剛型の方が上と見做されている。
その圧倒的な火力と防御力により、深海棲艦を圧殺することが可能だ。
「金剛か!素晴らしいな!次、堀内候補生!」
「おう!やあってやるぜ!来ォい、艦娘ッ!!!」
次に指名された堀内が叫ぶ。
願うは、自分の心強い相棒を。
『ええでー』
今度は、高速で回転する妖精。
また同じように紫電が迸り……。
「貴方が私の提督さん?」
「そうだ!俺は堀内鹿波!天辺を獲る男だ!!!」
「ふふっ、良いじゃない!私は瑞鶴、空母の瑞鶴よ!よろしくね!」
「おうっ!」
空母、瑞鶴。
ツインテールの勝気な美女が現れた。
空母。
戦艦は、最強の存在であるが、もう一つの最強存在は空母である。
下手をすれば、戦艦よりも高い打撃力を持つ存在……、それが空母。
空母は、単体の運用だけでなく、他の艦種との連携により、より高度な戦術を実現するピース……。
戦艦が飛車なら空母は角行と言ったところである。
制空権の確保の有無によって、戦場は大きく変わるのだ。航空戦力はとてつもなく大切である。少なくとも、日本はそれをミッドウェーで学んだはずだ。
「ほう、空母!今年は豊作だな。次、早乙女候補生!」
「はいっ!」
そして、早乙女が指名される。
早乙女が願うのは、自分を受け入れてくれる勇気ある人。
『行くぜ行くぜ行くぜ行くぜーーー!!!』
妖精は、どこから取り出したのか、割れた桃の仮面をつけて棒切れを振り回して何事かを叫ぶ。
そして旋風。
「貴方が私の提督?」
「うん、そうだよ」
「んー!可愛い男の子なのね!イクはイクって言うのね!」
「イクちゃん、よろしくね」
現れたのは青髪を結んだ、大きな胸の美少女。
伊19である。
潜水艦。
潜水艦は、ある種の鬼札である。
どんなに強力な大砲を持つ戦艦も、水中から静かに忍び寄り、高火力な雷撃を撃ち込まれればひとたまりもないのだ。
冷徹な海の暗殺者、それが潜水艦である。
そんな潜水艦は、戦艦並みにレアリティの高い存在だ。
現在、日本には三十四人程の提督が存在しているが、潜水艦の艦娘はたったの六人しか存在していない。
「潜水艦……!これまた、今年は良い候補生が集まったな。……次、槻賀多候補生」
そして、狂死は……。
あー、もう。
やっぱりアレだな、スタート時点でやりたいこと全部やっちゃってると、やる気が出なくなっちゃうな。