かんから、かんかん。
朝からうるせぇ。
「だーっ!畜生が!なんだってんだ?!!」
折角の非番だぞ?
たらふく酒を飲んで、娼館で女を抱いて、うまい肉を食って、昼まで寝て。
そうやって息抜きするからこそ、辛い兵士の仕事もやり遂げられるってもんよ。
「それなのに!こんな早い時間からなんなんだ?!」
ガンガラガンガラ、喧しいったらありゃしない!
朝の鐘じゃなくって、まるでこれじゃ警鐘……。
……まさか?!
「先輩!ジャック先輩!」
ここは兵舎だからして、同室の兵士もいる。
俺に声をかけたのは、後輩のバリーだった。
「ってえ……、バリー騒ぐな!頭に響く……」
「それどころじゃないっすよ!これって……!」
「スタンピード、だろうよ。酒抜いてくる」
そう言って俺は、外で胃の中の酒を全部吐き出した後、井戸水をガバガバ飲んで酒気を薄めた。
「よし……」
「先輩、どうすりゃいいんすか?!どうなるんすか?!!」
ったく……、肝が小せえなあ。
なるようにしかならんだろうがそりゃあ。
少なくとも、収穫は昨日で終わってるから、街を守り抜きゃ破産はしないだろうけどよ。
「バリーぃ!!!黙れ!!!」
「は、はいっす!」
「良いか?俺達は兵士だぞ?こう言う時はどうしろと習った?言ってみろ!」
「え、えっと……、そうだ!隊長に指示を聞く!」
「そうだ!行くぞ!」
「お供します!」
そうして、俺達は、ケビン隊長に指示をもらいに行く。
と、思ったが、流石はケビン隊長。
既に広場にいらあ。
帝国軍ストローべ基地兵隊長、ケビン・シューマッハ大佐、か。その名は伊達じゃねえな。
「静聴ーーーッ!!!!」
俺達は、即座に姿勢を正して、隊長の話を聞く。
「スタンピードが起きた!街にモンスターの群れが来ている!」
隊長は、手を広げつつ言葉を続ける。
「モンスターと言っても、精々がゴブリン程度!この程度で浮き足立つ弱兵は、私の部下にはいないと確信している!」
そりゃそうだ、普段からあんだけ扱かれて、実戦で屁っ放り腰になんてなれるかよ。
訓練と比べりゃ実戦の方が温いまであるぜ?
「では、指示をする!第一、第二、第三部隊は南門を、第四部隊は〜……」
俺は南門か。
「では、諸君らの健闘を祈る!以上、解散ッ!!!」
「「「「「「了解!!!」」」」」」
南門……。
帝都に繋がる側の門。
ここが一番重要な所になるだろうな。
この領の麦の四割は帝都に送られるんだ。だから、ここは一番大きくて重要な門だ。突破されちゃ拙い。
「うわ……、多いな……!」
城壁に登って地平線を覗くと、万は下らないほどのモンスターの軍勢が現れた。
「ひ、ひいっ?!せ、先輩……!」
「ビビるな、ビリー!こういうのはビビったら負けだ!」
相手が三万体いたとして、俺達兵士は三千程か。
なあんだ、一人十体斬れば終わりか。楽勝だな!
兵士にも練度の差や補給部隊などがいるから正確な戦力分析じゃあねえがよ、それでも、モンスター共の雑兵はゴブリンに過ぎねぇんだ。
そりゃあ、全部オーガとかならこの街は滅ぶだろうが、大半がゴブリンなら、なんとかなるはずだ。
俺は、官給品のロングソードを抜き放ち、軍の訓練で習った『ハシュマル軍闘術』とは違う、『ゲンマ流』のハッソウの構えをする。
「かかってきやがれ、モンスター共!!!」
達人の踏み込みは音を置き去りにするとは言うが、俺はそこまで至ってないし、生涯をかけても至れないだろう。
だが、今出来る限り最高の踏み込みから、最速で目の前のゴブリンを斬り払った……。
「第一部隊、退却ーーーッ!!!」
その声を聞いて、俺は後ろに退がった。
現在は小康状態。
依然、モンスター共に街は囲まれているが、防御はできている。
つまりは、睨み合いが続いている状況だ。
あとは体力勝負だな……。
とは言え、この暑さと緊張感の中、体力で勝負するのはキツいな……。
と、そんな時に。
モンスター共の血の匂いよりも強い、かぐわしい香りが漂ってくるのを俺達兵士の鼻がとらえた……。
「兵士の皆さーん!食事を供出しまーす!(裏声)」
声のした方向を見ると、茶髪に榛色の瞳をした『女』と、三人の中性的な『男』がいた。
そして、給仕の女達がテーブルを並べる……。
「さあさあ!座ってください!うちの食事でスタミナをつけて、モンスターを追い払ってくださいねっ!!!(裏声)」
・豚キムチ丼温玉乗せ
・ニラと白菜のレモンスープ
・ジンジャーウォーター
「こ、これは……?」
正直、もう限界だった。
俺達は緊急招集のせいで、朝飯も昼飯も食えずにずっと戦っていた。
腹が、減った……!
目の前のご馳走に突っ込みたくなるのを我慢して、店主の女に聞く。
「はい!わたくしー、行商人のケンコって言いますぅ〜!兵士の皆さんに食事を供出するのでぇ、頑張ってモンスターを倒して欲しいんですぅ〜!(裏声)」
なるほど……。
まあ、気持ちは分からんでもない。
行商人ともなれば、街から移動できないのはかなりの損失だ。
そして、この騒ぎじゃ少なくとも今日から数日間は移動できないだろう。
なら、その分の余った在庫を吐き出すついでに、点数稼ぎをしておこうって魂胆だろう。
「よぉし、分かった!じゃあ、一杯くれ!」
「はぁい!一丁入りまーすぅ!(裏声)」
俺がそう言うと、他の兵士達も次々と来る。
だろうな。もう皆、限界だったはずだ。
俺は木製の匙で目の前の深皿に盛られた肉の山を掬う。
これは……、下には、肉のタレを吸った乳米があるのか!
「ああー、むっ?!!」
う、うおおっ?!!
「こ、これは!これはぁっ?!!」
口の中に入れた瞬間、旨さが爆発しやがった!!!
ピリッと来る辛さと、ピクルスっぽい酸味、そして何より肉の旨さ!
それら全てを乳米が優しく受け止めて調和する……!!!
こんな複雑な味で、別のものを一つの皿にまとめ上げているのに、味が喧嘩していない!
素材一つ一つが適切な攻撃を俺の舌に与えてきやがる!
こいつぁ、見事な連携攻撃だ!
そしてこの卵!
卵のこってりとした黄身を肉と一緒に放り込むと……!
「ああーっ!た、たまらねぇーっ!!!」
そして、その塩っけを乳米を口にかき込むことで中和する!
ふぅ、口の中がこってりしていやがるぜ。
ここで、スープだ。
スープは……、なんだ、野菜のスープか。
黄緑の葉っぱに緑の葉っぱ、それと塩漬け肉らしきものが入っている。
まあ、箸休めにはなるだろ……って?!!
「うおおーっ!」
な、なんだこれは?!
酸っぱい?!
酸っぱいスープなんて聞いたことも……!
いや、だが!
これは……、腐った食材の腐敗した香りは一切しない。
あえて、何か果実の絞り汁のようなものを混ぜたんだな?!
それが、こってり肉のブタキムチドンの脂っ気を全て流してくれる!
この野菜も、箸休めに最適だ!
この酸っぱいスープを飲むと、口の中がさっぱりして、またブタキムチドンが食べたくなってくる!
こいつはまさに波状攻撃だ!!!
「ブタキムチドンおかわりだ!!!」
「はぁ〜い!ドリンクを飲みながらお待ち下さいませぇ〜!(裏声)」
おお、ドリンクか。
こいつも一口……、っおおおおおっ!
なんだと?!
ブタキムチドンと酸っぱいスープは、俺の身体に活力を充填する素晴らしい食い物だった……!
だが、このジンジャーウォーターは、俺の身体に泥のように詰まった疲労を抜いた!
少しの酸味……、何かしらの果実の絞り汁と、それとたくさんの蜂蜜!更に薬草の類が調合されたこれは、最早ポーションだ!
これを更に、キンキンに冷やしている!
美味い回復薬だなんて、初めてだ!
「すまん!こっちのポーションもおかわりだ!」
「えっポーション?は、はぁ〜い!ただ今〜!(裏声)」
身体に力が溢れている……!
今なら、百体のモンスターを斬って、百人の女を抱いても萎えない自信があるぜ!
「おおおらあっ!!!行くぜえええっ!!!」
今、AIダンジョンってのやってるんですけど、英語力が死んでるからイマイチ楽しめない。
あ、それと、アークナイツ始めました。難しくないこれ?
えー、進捗ですが。
現在、
召喚ものが15話
回答者が13話
生物兵器ものが13話
TRPGものが34話
書けてます。
屋台マンの書き溜めを吐き終え次第、TRPG行って良いですか?
既存作の完結はもうね、ゆっくりで良いかなって……。ぶっちゃけ、金貰ってるわけでもなく、趣味で書いてるんだし、書かなきゃと焦るのは良くないかなって。
TRPGは、前に言った、D&Dとかソードワールド的な世界に、クトゥルフ的な世界観のTRPGの自キャラの肉体になって転移した男の話。
具体的に言えば、ナルトみたいなノリで自分の肉体に邪神を封印して最強の力を得てしまい、バランスブレイカー過ぎてPCとして使えなくなってしまった探索者キャラの肉体を得て、異世界転移するTRPG大好きおじさんの話ね。
レベルとかステータスとかがない世界(主人公が個人的に「こいつはレベル5くらいじゃね?」とかは言う)で、ゴブリンも並の人間くらいには強くて、どんなに強くても国と喧嘩したら勝てない感じのバランス感。
人も少なくて、大きな街でも1万人前後。国が動員できる兵士も、大国だとしても十万人は行かないくらいの、ガチ目な中世感。
そこを、力こそパワー!と邪悪な魔法の力でぶち壊しにする話。
この作品は、いつも好き放題に風呂敷を広げている悪癖があるなと自覚した作者が、パワーバランスを抑えようと考えながら書いたものです。