ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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一日114514万文字くらい書きたい。


11話 ベヒモスステーキ

執事の案内で、館に着いた。

 

俺達は、スムーズに館の中庭に通されて、中庭でティー(香りからして紅茶ではない。何だろうねこれ?)を飲むヅカ貴族女……、ブリュンヒルデ様と対面した。

 

「あー……、すみませんが、我々は異国の平民でして、この国の礼儀作法は知りません。本来なら、正しい前置きから、貴女のことを褒め称え、それから本題に入るべきなのかと存じますが……」

 

「いや、良いとも。それは知っている。私には優秀な『耳』があってね」

 

つまり……、スパイ組織ってことか。

 

どこまで調べられたのやら……。

 

まあ、知られても、ここはアリスティア王国の敵国だからな。

 

俺達を召喚したアリスティア王国からの追手もない、はずだ。

 

「なるほど、流石は辺境伯の御令嬢ですね。いや、『私には』……、と言うことは、私設の『耳』をお持ちでいらっしゃるのでしょう。その若さで、情報戦の重要さを解しているとは、脱帽ですな」

 

いや実際凄いよ。

 

軽くこの世界で生活した感じだけど、男尊女卑はデフォだもんよ。

 

こんな世界で、女の身で辺境伯領の次期当主ってのも当然凄いんだけど、次期当主という身でありながら、自分の諜報組織を持ってる訳でしょ?そりゃスゲーでしょ。できる女だ。

 

年齢的には二十歳前後なのにこの有能っぷり……。

 

有能型かァ〜?

 

「……ふむ。ただの料理人ではないようだね。認識を改めよう」

 

おっ、と。

 

目付きが鋭くなった。

 

余計なこと言っちまったかねえ?

 

あんまり鋭いことを言うと消されちまうかもなー。

 

ヅカお嬢様は話を続ける。

 

「……前置きは分からないそうだね。では早速、本題に入ろう。君の料理について訊ねたい」

 

ふむ、やっぱりか。

 

だろうな。

 

お嬢様はまだ言葉を続ける。

 

喋り方と声に芯があって、演劇のワンシーンみたいだ。

 

「材料を聞いたよ。『希望の種』のパンに、『天龍の肉』を挟み、『鬼神の実』のソースをかけた、と……」

 

小麦、豚肉、トマトか。

 

「更に、このホットドッグを口にした者は、一日中、体力と筋力と耐久が50増加することが確認できた」

 

ああ、やっぱりバレてるか。

 

「不敬を承知で言っておきますが、誰かに仕えるつもりはありません」

 

それだけははっきりと伝えたかった。

 

「……ふむ。一応、何故かと聞いておこうか」

 

「争いの火種になるからです」

 

「……それは」

 

「料理の依頼なら喜んで引き受けます。ですが、どこかの専属となると、確実に暗殺の対象になるでしょう?」

 

「確かに、そうだ。私も、敵対する組織に君がいれば、真っ先に君を狙うだろう」

 

「もしそうなっても、守っていただけることは想像に難くないですが……、毎日を怯えながら暮らすのは、耐えられません。私はまだ、恋人と結婚もしていないのですから」

 

情パンチ!

 

うぉう!うぉう!情パンチ!

 

「ふむ、良いだろう。無理に仕えよとは言わん。だが、依頼は受けてもらいたい」

 

ほむほむ。

 

「ええ、それはもちろん」

 

「ありがたい。しかし、依頼の前に、君の腕というものを見てみたい」

 

は?

 

何だァ、テメェ……?

 

俺に挑戦状を叩きつけるってことか?

 

まあ、某お笑いタレントからの挑戦状よりはマシだろう。

 

こんな小説にまじになっちゃってどうするの?

 

「ふむ。失礼ながら、貴女は健啖な方でしょうか?」

 

とりあえず聞いとこうか。

 

それによってメニューを決める。

 

「うむ。我が騎士団と共に剣技を磨いているからな。女だてらに良く食べると周りからは言われているとも」

 

ふーん。

 

「大変結構です」

 

 

 

〜クッキングタイム!〜

 

 

 

「こちらは前菜の、不死鳥と魔神草のテリーヌです」

 

「ふ、む……!!!」

 

「こちらは大聖の種のパンになります。コースの合間にお楽しみください」

 

「あ、ああ!」

 

「こちらは、天神の実で作りました酒になります」

 

俺は料理に戻る。

 

お嬢様は、テリーヌをナイフで切り、フォークで口に運んだ。

 

その動作は、フランス料理のマナーからすれば失格だが、気品に溢れていた。

 

「あ……、む」

 

テリーヌを食べ、咀嚼するお嬢様。

 

「……んふっ、んふふふ」

 

本人は抑えようとしているみたいだが、キリッと締まった顔はどんどん緩み、満面の笑みに変わっていく……。

 

そして、パンを齧ると……。

 

「んんんんん!」

 

相当美味かったらしい。

 

「こちら、無病の若球根のスープになります」

 

「あっ、ああ!いただこう!」

 

そう言って、新玉ねぎのスープをスプーンで飲む。

 

液体が舌に乗った瞬間、お嬢様は大きく目を見開いた。

 

「……っあ」

 

声にならない声を出した、と思ったら、夢中でスープを啜り始め、スープはすぐになくなった。

 

次だな。

 

「こちら、燼滅龍のソテー、勇気の実ソースがけになります」

 

「うむ!」

 

鮭のオレンジソースがけ。

 

お嬢様は、凄い勢いで口に運び……。

 

「ひ、ひああぁ……」

 

あまりの美味さに腰を抜かした。

 

そして、メインディッシュ……。

 

「お待たせしました、メインディッシュの、陸神獣ベヒモスのフィレステーキ、天神の実酒ソースがけです」

 

和牛フィレステーキ、赤ワインソースがけ。

 

「……っあ、ああ……!」

 

ヤバイよなあこれ。

 

ベヒモスのステーキとか。

 

お嬢様は、意を決して、という様子でステーキを口に運ぶ。

 

すると……。

 

「あ、ああ、あ……!こんなに、こんなに美味いものが、この世界にはあったのか……!」

 

とか言って泣き始めた。

 

何ですかね、これ?

 

ま、良いや。

 

「こちら、デザートのクレームブリュレになります」

 

「こ、これは……?」

 

「食後に甘いものを食べる、という習慣が、私の知る地方にはありまして」

 

「そ、そうか!素晴らしい習慣だな!」

 

そう言って、クレームブリュレの表面をスプーンでパリ、と割り、口に運ぶ。

 

「こ、こ、これは……?!!」

 

そう言って、また泣き始めるお嬢様。

 

「甘い……!献上されるどんな果物よりも、甘く……、都の菓子とは比べ物にならないまろやかな口溶けと風味だ!!!」

 

最後に。

 

「コーヒーです」

 

「これは……?」

 

「少し苦い飲み物です。口に残る甘さを落としてくれますよ」

 

「なんと……!気が利くな!」

 

そう言って、コーヒーを飲むお嬢様。

 

「な……?!この香り……!」

 

あー、えっと、コーヒー豆は……。

 

「染影豆です」

 

「染影豆……!!!」

 

まあ、こんなもん。

 




ローグライク書いてます。

初めての殺人シーンとかじっくり書かなきゃ……。

書きたくはないが、追放してきた側の没落シーンも。


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