346プロは、結成から電光石火の勢いで業界を盛り上げ、席巻した。
しかし、俺の知る美城常務や武内Pは終ぞ現れることがなかった。
つまり、この世界は、アニメ版じゃない可能性?
しかし、いつのまにかできていた765プロには、天海春香等の名があった。ほかにも876プロ、315プロなどの存在が確認できた。
総合して考えると、この世界は、アイドルマスター風の世界と見るべきだろう。
しっかりしろ俺、現実とゲームの見分けをつけろ。
この世界はゲームに限りなく近い現実で、運命の歯車は絡み合って複雑に動く。
ゆめゆめ忘れることなかれ。
未来は誰にもわからない。
さて、事業の基本だが、儲けていて、これからも儲けられる見込みがある場合は?
決まっている、事業拡大、人を増やすのだ。
346プロの台頭により、テレビ業界は大いに湧いた。346プロの後追いで多くのプロダクションが結成され、アイドル候補生も増えた。
Yuutubeやニヤニヤ動画はもっと凄い流行りようだ。
メインクラフトは一億本売れたし、ユーチューバーが何人か現れ始めた。
俺もユーチューバーとして活動している。
年に一億くらいかな?
まあ、ユーチューバーはこれから更に流行るから、そしたらもっと稼げるだろうな。
他にもツブヤイターやレイン、フェイトブック、インスタントグラムなどの運営で更に稼ぐ。まあでも、株とか土地売買の方が稼げんなこれ。
今の年収?
千億くらいかな。
ああ、それで、増員の話だけど。トレーナーの青木姉妹が知り合いのボイストレーナーや、ダンストレーナーやらを呼び寄せてもらう。資本金は俺のポケットマネー、即ちほぼ無限。
湯水のようにじゃぶじゃぶ資本金を使って人を雇っているんだけれども、逆にそれで技能のある人が集まり、アイドル達が効率よくレッスンされ、結果的にアイドルが大活躍して儲かる。
ここでも俺の黄金律が唸り、金を使えば使うほど稼げるように。
それじゃアイドルも増員するか、思い切って百人くらい、と公募。全国から何十万の応募が。
その中でも俺と同じ天才の匂いがする子だけをピックアップ……、全員原作キャラだ!!
でも思ったほど集まらなかったな、うん十人くらい?
残りは全国津々浦々スカウトの旅で金の卵を発見しよう。
旅の準備をしていたら、西映の南条から電話が。
『平成覆面ライダーシリーズ、十周年ですね』
「おお、そうだな」
『出演、してくれませんか……?』
「……は?」
『そ、そのですね、十周年記念に何か大きいことやりたくて……』
「俺に出ろって?」
『は、はい、この、前に企画された、覆面ライダー、ゼファーになっていただきたいと……』
あー、あれか。前にデザイン画渡したな……。
………………。
ライダーになれるのか……。
………………。
「……ま、まあ、やってあげても良いかな?」
しょ、しょうがねえだろ、ライダーになれるんだぜ?やりたいだろ?
『ありがとうございます!』
実は最近、こういう役者っぽい話も来ている。アイドルにじゃなくて俺に。
ちょい役くらいになら出るんだけど、こんな本格的にやるのは初めてだ。
しかしまあ、俺はなろう主人公レベルの完全無欠。
特に演技指導もなく……、
「カット!風見さんもっとクールに!」
「う、ごめんごめん」
しっ、指導もなく!
俺は覆面ライダーゼファー、阿道紅羽となったのだ。
今回の覆面ライダー十周年記念の映画、『覆面ライダーザ・ムービー〜覆面ライダーバーサス大ショッガー〜』は、歴代の覆面ライダーが大集合し、手を組みあった悪の組織、大ショッガーに立ち向かう、三部作の大作だ。
その中でも、覆面ライダーゼファーである阿道紅羽は、悪の組織の大ショッガー側の覆面ライダーとして登場する。しかしながら、ピンチのライダーを助けたり、見逃したりなど、「あれ?こいつひょっとしていい奴なんじゃ?」みたいな演出をしつつ、最後はライダー達と協力して大ショッガーを討つ。
第1部では圧倒的な力で歴代覆面ライダー達を圧倒するが、第2部では、実は妹が人質になっておりショッガーに従っていることが判明。第3部ではライダー達と手を組み、妹を奪還し大ショッガーを倒して大円団。
スーツアクターも俺。
同じ西映でも狙っている年齢層が違うからな。ヒーロー戦隊は小学生くらい、覆面ライダーはもう少し上から大きいお友達向け。
実際、特撮オタは多く、覆面ライダーシリーズの視聴率はかなりのものだ。
今回の映画にもかなり力を入れている。
第1部……。
「誰だお前は……!」
「阿道、紅羽……。又の名を、覆面ライダーゼファー。その目に焼きつけろ、変身……!」
『Limit Break!Change ZZZZEPHYR!!!』
第2部……。
「俺には守らなきゃならないものがある……!そのためならこの命、惜しくはない!」
「阿道……!」
第3部……。
『共に戦おう、覆面ライダーゼファー!』
『フッ……、良いだろう。どの道、ショッガーの連中には落とし前をつけてもらう気だったしな』
『行くぞ!』
『おう!』
………………。
その後、映画の評判は。
観客動員二千万人越えのメガヒットを記録した。
「あのですね」
「はい」
「社長」
「はい」
「うちのアイドルより目立ってどうするんですか」
「はい」
ちっひに怒られた。
ちっひはいつのまにか俺を社長と呼ぶようになっていた。
昔みたいに名前で呼んでくれと頼んだら、二人きりの時になら、とのこと。可愛いぞちっひ。
まあ、アイドルも何十人、事務員やら職員は何百人と増えた中で、子供の頃みたいに新九郎君とは呼んでくれねーか。
現アイドル達は売れているし、最近来たアイドル達のレッスンも順調だ。
一番売れてるのは……、楓かな。
シングル、『こいかぜ』は作詞作曲俺で、世界で三千万枚の売上を達成した。
その他のCD全部合わせて五千万くらいは売れたんじゃねえかな、楓。
「よしよし、頑張ったな楓ー、偉いぞー」
と言う訳で楓を褒めた。
「因みに社長は今まででどれくらい売れましたか?」
「え?六、七億枚くらいだよ?」
「……何で私達にアイドルをやらせる必要が?」
……確かにそうだ。
今の今まで気付かなかったけど、何で俺は態々346プロを作ったんだ?
下火だったテレビ業界を盛り上げるため?
いや、違うな。
……例えば、世の中の美味しいものを食べ尽くした美食家がいたとする。その美食家が次に目標とすることは?
答え。
自分で美食を追求する。
つまりそう言うことか。
「ほら、俺も歳だし、後は後進の育成を」
「私と一つ違いですよね?」
「……趣味だよ。俺のアイドルがテレビで歌って踊る姿を見たかったの!悪いか!」
「いえ、悪くはないですけど……」
頬を染める楓。
「俺のアイドル、ですか。ふふふ、良いですね。私は貴方のアイドルですよ」
「お、おう」
楓はよく分からん……。
好かれてるのは分かるんだけど、割と不思議ちゃんだ。それがテレビでは受けてるみたいだが。
「じゃ、じゃあ俺、スカウトしに行くから。ちょっと金の卵探してくる」
頬を膨らませる楓。
「貴方のアイドルがここにいますよ?」
ん、ああ、嫉妬か?
「分かってる分かってる、忘れてないから!じゃあな!」
「あっ」
「もう、もっと構ってくれても良いじゃないですか」
ライダー化を経てスカウトへ。