はぁい、とりあえず、自己紹介やら何やらを済ませました、と。
ロングハウスには充分過ぎるほどの部屋があるから、そこに人をぶち込むぜ〜!
住居はとりあえずそれでよし。
ちっさいログハウスとか、この辺がもし、俺の予想通りの豪雪地帯だとしたら、降り積もった雪の重さでペチャンコになるやもしれんからな。
とりあえずは、今年の冬が来てから色々と考えよう。
とは言え、何度も言わせてもらうが、サバイバルの観点から見れば、この村はほぼクリアしている。
住居、安定した食料供給、風呂、安全な水。
これだけあればもうやることないんだな。
つまり、ここからは、冬への備えという名のサブストーリー消化ですわ!
本来なら、『この世界に来た理由を探す』という大きな目標があるのだが……、それは置いておく。
もちろん、それこそが最大の目標であることは、ここにいる誰もが肯定するゾ。
だがなあ、それどころじゃないってのが本音なのよね。
だって、まず、差し迫った危機に、『冬の到来』と『建国派と平等派の脅威』がある。
「先に、帰る方法を見つければ問題あらへんやろ?」
と、『千里眼』の南寧が言った。
「はぁ?チョコラテのような甘さですかぁ?良いか、まず、帰る方法もこの世界に来た理由も、現在、手がかりすら掴めていないんだよ」
全員が頷く。
「つまり、手がかり/Zeroの状態から、この広さ100km以上の大陸を、他の派閥を避けながら探し回る必要があったんですね」
「何で完了形……?」
啞零の無慈悲なツッコミはさておいて、と。
「簡単に言えば、帰る手段を探すのはとても大変デース!ってことよ。一番難しい仕事に最初から専念するのは良くない訳よ」
「せ、せやな」
納得させた。
それに、だ。俺は周りを見回す。
「それに、情報によると、この大陸以外にも大陸があるらしくてな」
俺は、南寧のケツを掴む。
桃尻ゲットだぜ!
「やめぇや」
おっと、手を抓られた。
「……えっとな、ええか?」
南寧が、見たものを話し始める。
うん……、まあ……、そうね。
ぶっちゃけ、モンスターをハントする世界みたいになってる大陸がすぐ隣にあるよ!って話。
「モンスター、かい?」
是印が、よく分からない、と言った顔をする。
「せや!モンスターや!でっかくて、なんかこう、バチバチしてるやつとか、火ぃ吹くやつとかおるんや!」
南寧の言葉は、いまいち要領を得ない。
なんかデカくてやばい、くらいしか伝わってこないのだ。
よくわからんな。
「千紗君、憶舵發(おくだはつ)君と間中(まなか)君を連れてきてくれるかな?」
是印が、何かを思いついたらしく、指示をした。
「は、は、はい」
『瞬間移動』の千紗は、是印の指示を受けて転移。
二人の女を連れて来た。
「どうも、はっちゃんです」「どうも、まなちゃんです」
ジト目の、地味な雰囲気をした女だ。恐らくは双子だろう、ほぼ同じ顔をしている。
「「私の能力が必要ですか?」」
はっちゃんと名乗った女、發は、そう言って、『千里眼』の南寧に触れた。そして、まなちゃんと名乗った女、間中は、發の手を握る。
「私の能力は、『記憶共有(メモリーシェア)』……、まあ、そのまんまです。触った人の記憶を共有します。でも、心は読めませんよ?分かるのは過去だけです」
發が言った。
「私の能力は、『記憶転写(メモリープリント)』……、まあ、そのまんまです。自分の記憶を写真にします。はっちゃんの『記憶共有』を使ってもらえば、他人の記憶も写真にできるんです」
なるほど?
そういう能力か。
「因みに、三つ子の長女に白芽(しろめ)……、しーちゃんがいます。あの子は、『完全記憶(フルメモリー)』の使い手です」
ふーん。
つまり、この憶舵三姉妹は、『記憶を完全に保つ』のと、『他人と記憶を共有する』のと、『記憶を転写する』三人。
つまり、『ハードディスク』と『ケーブル』と『プリンター』のような存在ってことか。
お、南寧の記憶のプリントが終わったみたいだな。
どれどれ……?
南寧の記憶にある、海の向こうの大陸のヤバいモンスターとは?
そこには、複数種類のモンスターが写っていた。
自然界ではあり得ないような真っ赤な鱗を持つ翼竜。大きさは周囲の木などから判断して10m前後。口から火を吹いている。
黒い毛を持つ四足の獣。電気を纏っている。
尻尾からポンプのように水を汲み上げて、口から高圧の水流を噴射している、手足の生えた芋虫。
なるほど?
「……一狩り行こうぜ?」
俺が呟いた。
「こ、こんなのがたくさんいるの?」
啞零が言った。
「山ほどおるんや!縄張り争いしとるのか何なのかは知らんけど、いっつもこのモンスターは殺し合ってるで!」
南寧が、そう言って机を叩いた。
うーむ……。
そう言えば、うちにも、巨大熊のつがいが襲いかかって来たよな。
あれも、これらのモンスターと同類なのだろうか?
まあ、それはいい。
「これで決まりだな。とりあえず、帰る手段を探すのは後だ。何よりまず、防衛策を整えるぞ」
俺はそう言った。
誰も反対意見はないようだな。
そりゃそうか。
こんなやべーモンスターを見ておいて、防衛策を整えない奴とかおりゅ?って話よね。
DDSnet書きたくある。