ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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400g混ぜそばを食べたら具合が悪くなった。

油とニンニクの奔流に身体が耐えきれんのか……?

俺、もうおじさんなのか?!


26:世界を知る輿図『全知陣』

夢を見る。

 

子供の頃の夢だ。

 

『オラ!クソガキ!早く来い!さあ、どの台が勝つんだか言えよ!』

 

殴られた。

 

実の親に。

 

あたしの能力、『全知陣(オムニセントフィールド)』は、競馬でどの馬の調子が良いかとか、パチンコでどの台の設定が甘いかとか、そう言うのが見れば分かるから。

 

父親は、幼いあたしを連れて、夜遅くにギャンブルをした。

 

真面目に働く必要なんてない、私が能力を使えば、ギャンブルで食っていけるからだ。

 

『ちっ……、おめえがもっと美人なら、風呂屋に行かせてんのによ。男口調のガキなんざ誰もお呼びじゃねえとよ』

 

あたしも女だ。

 

初めては、惚れた男が良い。

 

父親に売春させられまいと、普段から髪をバッサリ切って、ヤクザ映画の三下子分のような態度をするように心がけた。

 

そして、その三下子分の物真似と言う仮面は、自分に張り付いて取れなくなった。

 

『ふ、ふざけんじゃねえ!このガキを持ってかれたら、俺は生活できなくなるだろ!!!』

 

ある日、超能力者の危険性を鑑み、一箇所に集めて教育を……、とか言って、私は親元から引き離された。

 

FB学園だ。

 

周りの、普通の家庭に生まれてきた超能力者達は、ライフルを持った軍人がたくさん、FB学園から逃げないように監視してるこの環境は、刑務所のようで嫌だったそうだ。

 

けど……、あたしにとっては違う。

 

ここにいれば、クソみたいな親に殴られないし、家事も余分にやらなくて良い。怯えて暮らす必要のない、天国のような場所だった。

 

年に一度、日本に帰れるって言われても、あたしは別に嬉しくもなんともなかった。

 

日本では、父親に見つからないように、沖縄でバカンスを楽しんだ。

 

FB学園で、バイトしたお金でのバカンスだった。

 

バイト!あれだけ身を粉にして働いても、一円たりとも私にくれなかった父親と比べて、最低賃金とは言えお金をくれるFB学園の、なんと優しいことか!

 

バカンスを楽しんで気力を充実させた後、飛行機でFB学園に帰ることになったが、この休暇の二週間は、とても充実した日々だったので、何の悔いもなかった。

 

……しかし、大変なのはここからだ。

 

飛行機墜落!謎の無人島でサバイバル生活!

 

ふざけんじゃねえ!

 

と、声を上げたいところだ。

 

最初に、こうして特級能力者のチームに入れなかったら、とっくの昔に精神が崩壊していたと思う。

 

創壱の旦那には、感謝してもしきれない。

 

ぶっちゃけ、あたしの身体で良ければ普通に捧げられるレベル。

 

旦那はイケメンだし、有能だし。

 

ってか、旦那の、あらゆる能力者の上位互換たる『再構築(リジェネシス)』を見て、尻尾振らない女とかいるかな?

 

旦那の女になれば、地の果て海の底空の彼方でもどこでも、セレブ並の生活ができるんだよ?

 

ってか、能力抜きにしても、本人のサバイバル技術も本当に凄いし……。

 

更に言えば、あたしの好きなタイプは、父親と真逆の男だ。

 

即ち、背が高くて、マッチョで、ハンサムで。

 

強くて頼れる、本当の意味での『男』の人。

 

つまりは、旦那みたいな色男。

 

いやー、本当に、周りの女の子達は何でもっと露骨に媚びないんだか、あたしは分からないね。

 

能力云々関係なしに、あんなに良い男って他にいる?

 

いやまあ、確かに、墜落した飛行機のところで建国(?)した、生徒会長さんも、まあイケメンだったけど。

 

旦那はこう、骨太系のイケメン?女が好きなタイプの線の細い美男子ってよりかは、男が惚れる男ってやつかな?こう、ハリブットのベテラン俳優みたいな……。

 

あんな筋肉でムチムチの二の腕で、強めに抱きしめられたら、あたしはもう、もう……!

 

「だんなぁ〜、かっこいいでやんすよ〜……、むにゃむにゃ」

 

「何言ってんのよ、起きなさい肆嘉」

 

「はっ?!旦那は?!」

 

「もう起きてるわよ」

 

「ううー、旦那ぁ〜!夢の中でイチャイチャしてたのにー!」

 

「はあ……、良いから起きなさい!顔洗って歯を磨く!」

 

「はあい、啞零の姉御……」

 

 

 

あたしは、輿図肆嘉。

 

超能力者だ。

 

旦那の力でこの大陸に村を作って、二ヶ月と少し。

 

謎の巨大熊の襲撃を乗り越えて、みんなで宴会をした次の日。

 

あたし達は、今日も仕事に励む。

 

あたしは、体格はチビ助だけど、この能力があるから、能力を使って見回りをすることが仕事だ。

 

一応、所属は警備部門ということになる。

 

まあ、その前に朝食を摂るんだけど。

 

朝食はグラノーラだ。

 

朝から米を炊くのは大変だから、そういうことになった。

 

手作業で米を炊くなんて、確かに面倒だろうなあ。

 

あたしは、食育とかまるでされた覚えもないし、食に対するこだわりは特にない。

 

まあ、滅多に食べさせてもらえなかったお肉や甘いものは好きかな?

 

とにかく、こだわりはないから、朝はグラノーラ。

 

うーん、でもこれはこれで美味しいんだけどなあ。

 

「コラ!スプーンをグーで握るのはやめなさい!」

 

あ、啞零の姉御に怒られちゃった。

 

「す、すまないでやんす」

 

「全く……。あんた、意外と世間知らずって言うか、常識知らずって言うか……」

 

「えへ、へへへ、ごめんでやんす……」

 

過去のことは、話してない。

 

話すと、引かれちゃうだろうし。

 

「啞零、怒ってやるなよ。世の中には色んな人がいるんだぞ。ほら、肆嘉」

 

「わ」

 

いつの間にやら近くにいた旦那に、膝の上に乗せられて、スプーンの持ち方を教えてもらう。

 

ふ、ふおお……。

 

旦那は、何でこう……、あたしがやってほしいことを的確にやってくれるんだろうか?

 

ぶっちゃけ、あたしは父性に飢えている。

 

それを満たしてくれる旦那はもう、マジサイコー。

 

何度、優しくてハンサムな親に、こうして膝の上に乗せてもらって、箸の使い方や礼儀作法を教えてもらいたいと思ったことやら。

 

「美味いか?」

 

「美味いでやんす!」

 

「もうっ!甘やかさないの!」

 

啞零の姉御は、姉御で、まあ、何というか……。

 

結構、母性があるんだよなあ……。

 

ちょっと厳しいけど。

 

母親は、あたしが物心つく頃には死んでたんで、母性ってのがよく分かんないんだけど……。

 

でも、こうして、悪いところを注意してもらえるのは助かるな。

 

 

 

さあ、仕事の時間だ。

 

いつものように、午前の間は訓練か、もしくは見回りを……。

 

今日は訓練の日だね。

 

布を重ねて巻いた標的に向かって、槍の訓練だ!

 

前回の熊襲撃の時、防衛部の人達は、熊に近づかれてパニックになってしまった。

 

これを防ぐために、せめて、近づいてきたやつに槍を刺すくらいは出来なきゃダメだ!と言うことになってるらしいよ。

 

アレだね、警備部門の責任者の帯流の姉御の提案だね。

 

「やー!やー!」

 

「肆嘉!腰が入っていないぞ!ほら、こうだ!」

 

「はいでやんす!」

 

帯流の姉御は……、先生みたいな感じかな?

 

学校、まともに行ったことないから……、そういうの、ちょっと憧れてた。

 

結構、いやかなり、訓練は厳しい。

 

が、それを乗り越えると……。

 

からん、からん、からん!

 

「お昼ご飯でやんすー!」

 

ご飯の時間だ!

 

ご飯の時間は、ロングハウスの入り口に下げられた鐘を鳴らしてみんなを呼ぶ。

 

時間は、その日のメニューにもよるけれど、十一時半から十二時半の間までには完成してる。

 

それを食べに行くのだー!

 

今日のお昼は……、ステーキサンド!

 

ステーキ!ステーキなんて、食べさせてもらったこと、一度もなかった!

 

FB学園の学食で食べたけど、アレが初めてだったなあ。

 

ちょっと硬いんだけど、美味しいんだよ!

 

じゃあ、いただきます!

 

「んんん?!!」

 

な、何これ?!

 

FB学園の学食のステーキとは比べ物にならない!

 

柔らかーくて、齧れば肉汁が出てきて、噛めば旨味が溢れる……っ!

 

その野性的な肉の旨味を、玉ねぎとマスタードが受け止め、なおかつ、それぞれの放つ香りが、肉の臭みを帳消しにする!

 

これは……!

 

「う、美味いでやんすーーー!!!」

 

満点だ!

 

いっぱい働いた後に、美味しいご飯をお腹いっぱい食べる!

 

これぞ理想の生活!

 

 

 

はあー、食休みにお茶でも飲もうかな。

 

うーん、香りの違いとかそう言うのはよく分からないけど、美味しい!

 

デザートにプリンも出た!

 

プリン!美味しい!

 

「はあ……、にしても、あいつのセクハラ、最近、エスカレートしてきてないかしら?」

 

お、啞零の姉御。

 

「そうだよなぁ、創壱は最近、耳を舐めたりしてくるんだよな。あれ、ぞわっとするぜ」

 

涼巴の姉御。

 

「求められるのはまあ、悪い気はしませんけれど……」

 

睦の姉御。

 

うーん?

 

「でも、旦那に触られると気持ちいいでやんすよ?」

 

「んなっ……?!あんた、何言ってんのよっ?!」

 

「姉御はあんまり、性欲とかないでやんすか?あたしは、旦那に触られるの、めっちゃ嬉しいでやんす!それに……」

 

「そ、それに何よ?」

 

「旦那に触ってもらえなきゃ、ここにいる全員、とっくの昔に死んでるでやんすよ?」

 

と、あたしが言った瞬間、周りが静かになる。

 

「えっ?えっ?あたし、何か変なこと言っちゃったでやんすか?!」

 

「……どう言うこと?」

 

「どう言うことも何も……、え?!気付いてなかったんでやんすか?!!」

 

ちょ、ちょっとそれは……。

 

あ、いやでも、あたしの能力がないと気づけないのが普通、なのか。

 

「創壱に触られてなければ、私達が死んでいたって、どう言うことなの?教えて、肆嘉」

 

啞零の姉御に問い詰められる。

 

うう、怖い……。

 

けどこれは、みんなが気付いてないなら、旦那の名誉のためにも言っておかなきゃ!

 

「旦那は、セクハラするついでに、触った人の病原菌やら寄生虫やらを『分解』してるんでやんすよ」

 

「っ!それ、本当なの?!」

 

「はいでやんす!啞零の姉御は、『分解』してもらえなければ、マラリアと病原菌持ちのダニと風邪で、三回は死んでたでやんすね!」

 

あたしがそう言うと、周りは騒めいた。

 

……「あれ、病気を治してくれてたんだ……」

 

……「創壱さんって凄いね……」

 

……「今まで誤解してたかも……」

 

おお、創壱の旦那のお株が上がった!

 

「あいつ……!それならそうと言えば……!」

 

啞零の姉御が、悔いるかのような表情をしている。

 

そんなところに、創壱の旦那が来た。

 

「おっ、なんの話?おれがイケメンだって話か?」

 

「そうでやんすよ!」

 

「おーおー!肆嘉はよく分かってるなあ!偉いぞー!」

 

「ひゃん!」

 

抱きしめられた。

 

気持ちいい……。

 

「あんた!」

 

「はい、あんたです」

 

「ねえ、セクハラするついでに、触った人の身体から、病原菌を『分解』してるって話、マジなの?」

 

啞零の姉御が、旦那に訊ねた。

 

「え?言ってなかったっけ?」

 

「ーーーっ、もうっ!言ってくれれば、いくらでも触らせてあげたのに!ごめん、創壱っ!あんたがセクハラする度に、私、殴っちゃってた!ごめんね、ごめん!」

 

あ、啞零の姉御……。

 

「んー?何でだ?俺は趣味でセクハラしてるだけだぞ?何で謝るんだ?セクハラのついでに、病原菌やら寄生虫を『分解』してるだけで、メインはあくまでもセクハラだぞ?」

 

「それでも、ごめんなさい。それと、ありがとう……!」

 

 

 

旦那は、マジでこう、凄い人だな。

 

頭も良いし、腕っ節も強いし、優しいし。

 

今回の、この、セクハラついでに病原菌やら寄生虫を分解してることだって、あらかじめ言っておけば、女の子達も怒らなかったと思う。

 

けど、旦那は、恩着せがましくそれを口に出したりはしなかった。

 

これが、あの生徒会長や他の男なら、必ず、病原菌の分解に対価を求めただろうね。

 

でも、旦那は違う。

 

最初にあたし達に宣言した通りに、「出来る限り守る」って言葉を、律儀に実行してくれてるんだ。

 

旦那はこう言う人だから、みんながついてきたんだと思う。

 

あたしは、一生旦那についていきます!

 




肆嘉のモデル?

アリアンロッドのベネットです。

まあぶっちゃけ、やる夫スレでよく見るだけで本編は知らんのですが。

あと、双夢のモデルはロングの頃の三浦あずささん。

あずささん、どう考えてもロングの方が可愛かったんだよなあ。

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