全国ツアーだ。
東京、香港、ロンドン、ニューヨーク、モスクワ、リオデジャネイロで行う予定だ。
サイン会も兼ねて、二ヶ月かかる予定だ。
ん?勉強?
東大に今すぐ入学できるレベルの学力は平気である。その気になればオックスフォードとかも行けると思うよ。
一応、ギフテッドだからね俺。
さて、学校の方にも暫く休むと連絡を入れて、その他の仕事も全部ひと段落つけてきた。
さあ、全国ツアーだ。
俺の人気はどれくらいかと。
例えるならば、マイケルジャクソンとかそんなレベルだ。
親父?ああ見えてビートルズに匹敵するくらいのヒットだったっぽい。
さて、まずはロンドンから。
飛行機が着いた瞬間に空港に押しかけていたファン達が絶叫した。
この世界には男が少ない、更に、厳しい業界である芸能界でミュージシャンをやる男はもっと少ない、その中でもイケメン高身長スタイル最高歌も曲も最高、となると。
俺しかいない。
親父?まあ親父もそうだけど。
でもあいつ半分引退してるし。もう五十近いからな。おっさんだし、もうイケメンとは言えないだろう。イケおじ?いや、あいつはもっとナヨナヨしてんな。
空港では、警備員とファンが押し合いへし合い大混乱。
うおお、熱い、熱気が凄い。
『退がれ!退がりなさい!!』
警備員は頑張っているが。
『シンクロー!キャー!!!』
『こっち向いてー!!』
『素敵ー!!!』
多勢に無勢、押されるわ押されるわ。
『はいはい、通してねー』
揉みくちゃにされながらも、なんとかホテルに到着。
ファン舐めてた、なんだあれ、凄いぞ。
どさくさに紛れて尻とか触られた。
まあ、蹴散らそうと思えばできたけど、全員ぶっ飛ばすってのもね。
スケジュールは、と。
明日リハ、明後日本番だ。
ペース早くないかって?いや、早めた。だって、ダラダラ調整とか必要ないし。俺、天才だから。
そして明々後日はサイン会。
そこから三、四日ほど観光してから、次の都市へ。と言った様子。
まあファンの熱気には驚かされたが、特に問題とかはなく……。
『ハロー!シンクローだ!今回は俺のライブによく来てくれた!歓迎しよう、盛大にな!』
『『『『キャー!!!!』』』』
つつがなく、ライブは終わった。
その後のサイン会も特に何か起こることはなく、普通に終わった。
………………。
まあ、それじゃつまらないから、いくつか琴線にふれたことを紹介していこうか。
リオデジャネイロのサイン会にて。
「エット、コ、こんにちワ!シンクロー!」
「お、日本語喋れるのかい?」
「ハイ!ナターリア、って言いマス!」
「ッ、素敵な名前だね」
ナターリアとの邂逅。
このナターリアは、モバマスのナターリア、か?
たわわに実るパッションボディに育つのか?
「えっ、と……、日本に来る予定とかある?」
「?、ママのお仕事が上手くいけバ、いつか日本にお引越しするカモってパパが言ってたカナ?」
ふーむ?
考えてみよう。
俺の運命力についてだ。
俺は、幼少の頃から、俺の才能センサーがビンビン言うような女の子と出会ってきた。
美優だったり、菜々だったり、俺の周りにいる子はアイドルとしての才能があった。
この世界がアイドルマスターシンデレラガールズの世界だと仮定して、彼女達はその登場人物のアイドル本人だろう。所謂原作キャラだ。
そして、そんな女の子達と出会ってきた俺は、アイドルマスターシンデレラガールズと言う物語に関わる運命にあるのではないか、と。
運命……。
非科学的だ。
しかし、頭ごなしに否定できないくらいには、俺の周りにアイドルがいた。
目の前のこの子も、俺の知るナターリアの面影がある。
ふむ……。
「ナターリア、これ、日本での俺の連絡先な。日本に引っ越してきたら会いに来てくれ」
「エッ、ホ、ホント!良いのカ?!」
「ああ、ナターリアは可愛いからね、俺の好みだよ。いつでも遊びにおいで」
「ウ、ウン!!」
とりあえず、渡りを作っておく。
この世界がアイドルマスターシンデレラガールズだとして、俺は何のポジションなのか分からないが、多分、いずれできる346プロの出資者とかだろう。
その際に出資者の推薦って事でナターリアを出してやろう。
もしも、俺の予想通りに運命の歯車が回れば、この子は大人気アイドルになれるだろう。
サインをあげて、帰り際に頬にキスしてあげたら、褐色の美しい頬を赤くして帰っていった。食べ頃になったら俺んとこ来るんだよー。
次に来たのは。
『こんにちは、ミスター・シンクロー』
『……はい、こんにちは、美しいお嬢さん』
……あー。
間違いねえ。
ヘレンだ!
このオーラ!
圧倒的オーラ!!
見間違えることはない!ヘレンだ!!
『私は今代のヘレンよ』
確か、ヘレンは襲名制って設定あったな!!
あっ、クソ、これ、ヘレンだわ!!
あの、これ……、ヘレンだわ!!!
『あー……、えっと……』
『?、どうしたのかしら?』
『い、いや、君があまりにも美しいものだからね、少し戸惑ってしまったよ』
『あら、お上手ね』
あー、あー、っべーよこれ。
『……やっぱり会ってみれば分かるものね。貴方は世界レベルよ。悔しいけれど、私より世界レベルね』
何言ってんの君。
分からんけど、めっちゃ気に入られたっぽい。
一応、俺の連絡先渡しておく。
モスクワでのサイン会にて。
『ライブ、見ました!とても、素敵でした!』
『ああ、ありがとう、美しいお嬢さん。……お名前は?』
『アナスタシア、です』
白い髪、白い肌。そして、空のように澄んだ青い瞳。
アナスタシア……。
確か、アナスタシアは10歳までロシアにいた、その後は北海道に来たハーフ、と言う設定。
『君、ハーフかな?』
『ダー、ママが日本人です。ふふ、半分は、新九郎さんと一緒ですね』
こりゃあ、アナスタシアだな。
既に可愛いもん。
だってほら、普通さ、子供の顔って、丸っこくて分かんないじゃん?
でもアナスタシアは違う、既に可愛い。可愛らしさの片鱗。
『日本に来る予定とかあるかい?』
『ダー、実は、何年かしたらお引越しします。北海道と言う、日本の寒いところに行くそうです。でも、モスクワも寒いですから、平気ですね』
『そっか……。それじゃあ、日本に来たら俺に会いに来てくれるかな?これ、連絡先』
『えっ……?そ、その、良いん、ですか?』
『ああ、君はとても綺麗だ。将来、もっと綺麗になる。そしたら、会いに来て欲しい。その時は……』
頬にキスする。
『とても、イイコト、をしてあげるよ』
『は、は、はい!!』
例年並のビッチムーブ。
その後、ロンドンではケイト、香港では楊菲菲に会った。
恐らくは、原作キャラだ。
そして、ニューヨークでは、ドバイから来たと言う富豪が、ライラと言う名の娘を連れて来たのにも会った。
全員に連絡先を渡す。
これで布石は打てたな。
多分、俺の予想だと、346プロの出資者になることになるだろう。
常に市場をチェックして、346プロができたら株主になろうと思っている。
芸能界とかマスメディアとかは、多額の出資をしたり、株を買い取ったりしているから、ほぼ俺の言いなりだ。
だから、偏向報道なんてさせないし、国会などの良いところも悪いところもしっかり撮る。
事実、俺がマスコミを牛耳ってから、日本は公平な報道をされるようになったと話題になっている。
さて、取り敢えず目指すことは、346プロの結成を待ちつつ、金稼ぎだな。
いやもう、稼ぐつもりはあんまりないんだよね。
ただ、募金とかしてやるのも癪だから、これから来るであろう分野とか、好きなものに出資しまくってるんだけど……、出資したところはみんな成果を上げて、結果、何倍にもなって手元に金が戻ってくる。
黄金律、ってやつなのかもな。
この前は、ロボットを作る会社である、ボストンダイナミックスを買い取ったっけか。
そこにいる池袋って博士が凄い天才だった。
確か晶葉って言う娘がいるんだが、その子も天才。
んー。
これさ、前々から考えてたんだけど、俺の周りに原作キャラ集まって来てない?
さあ、346プロはいつできるのか?