異世界転移から二十日が過ぎた。
最近は、更に倉庫を増設して、予備の布団にウール布、麻布、麻糸などを大量にストックした。
また、羊乳チーズも大量にストックし、干し肉、干し芋、塩漬け魚や肉と、色々用意した。
これで、しばらく狩りはやらなくて良いだろう。
今日は、なめしたシマウマの革が完成したので、それを保存しておく。
「革欲しい?」
「いや、何に使うのよ……」
「鞄とか。靴も作れるし、手袋とか服も」
「あんた、本当に何でもできるのねえ」
まあ、とにかく保管。
さつまいも、羊乳、木苺から抽出した砂糖、キジニワトリの卵でスイートポテトを作った。
「ふわぁ……!スイートポテト!んん〜っ!おいひい〜!」
甘いものが好き、とか言っていた啞零が、大喜びでスイートポテトを食べている。
全員、甘いものは久しぶりだそうで、喜んでくれた。
さて、おやつ後に、俺はスマコンのARメモモードを起動する。
「はーい、では、とりあえずの生活基盤ができた今、これからどうしていくべきかを話し合いまーす」
『どうする?』とARボードに書き入れる。
「どうする、と言われてもね。僕はもう、いつも頑張っている創壱君には休んでもらいたいんだけど……」
正那が、申し訳なさそうな顔をして言った。
「そう言うの良いから」
「でも」
「良いから」
「う、うん」
実際、俺が休んだら何もできないでしょ君ら。
野生の世界ではふわっとした優しさじゃなくて、現実を見ることの方が大事よ。
「えー、では、各自、現状の不満や、これから危惧すべきことについて、案を出してください」
俺が言った。
すると、全員が少し考えた後に。
「あのよ、トイレットペーパーって、いつまで保つんだ?」
涼巴が言った。
俺は、『製紙』と書き込んだ。
「その、石鹸が欲しいかな……。あと、お風呂が……」
正那が言った。
俺は、『石鹸作り』『風呂』と書き込んだ。
「家が狭いでやんす!どうせなら、どどーんと大きな家を建てるでやんす!」
肆嘉が言った。
俺は、『家作り』と書き込んだ。
「お米が食べたいですね」
双夢が言った。
俺は、『新しい食べ物探し』と書き込んだ。
「服、新しいのが欲しいわ」
啞零が言った。
俺は、『服作り』と書き込んだ。
「俺は、鉄器のための鉄とその加工設備、石材と革のストックが欲しいと思う」
俺は、『鉄器』『設備』『素材集め』と書き込んだ。
「もう……、なんていうか……、村だよね」
正那が言った。
「そうだな。村くらい作らないと駄目だろ」
「そう、なのかな?」
「ああそうだ。忘れてないか?どうして俺達がこの世界に来たのかを調べるんだぞ?」
「あ……、そうだったね。毎日働き詰めで、本来の目的を忘れていたよ」
そう言って苦笑いした正那。
「うーん、あたしはもう、ここに永住しても良いかなぁ、って思うでやんすが」
と、肆嘉が言い出した。大丈夫かこいつ。
「あたし、日本では、もっと酷い生活をしてたでやんす。FB学園に連行されて、やっと人並みの生活ができるようになったでやんす。ここでも、人間らしい生活ができるなら、別にそれで……」
「本当に良いのか?」
「はいでやんす。あたし、創壱の旦那の部下なら、全然良い暮らしができると思うんでやんすよね。今も、そりゃ不便なことは色々あるけど、人間らしい生活、できてるでやんすよね」
うーん、そうか。
俺もまあ、別に、どうしてこの世界に来たのかは知りたくはあるが、知ったからと言ってやることは変わらないしなあ……。
「まあ、分かった。確かに、そういう考え方もアリだろう」
俺はそう言ってまとめたが、他の四人も、肆嘉の言葉を聞いて悩んでいるようだった。
そうやって、今日一日は休息日にした俺は、久しぶりにゲームをやっていた。
もし、地球にすんなりと帰れたパターンを考えて、今までの行動は全て、動画に撮ってある。
そんな時……。
「ヤバいでやんす!肉食生物、二十三匹の群れが、ここに向かって来てるでやんすー!」
肆嘉が騒ぎ始めた。
俺はそれを聞いて、弓矢と槍を抱えて外に飛び出た。
「仕留めるぞ!手伝え!」
「え、ちょっ!」
啞零の制止を無視して、木の上に登り、弓を構えた。
「各自、自分の身は自分で守れ!それと、毛皮は傷付けずに仕留めろ!」
「何言ってんの?!逃げなきゃ!」
「駄目だ!戦え!超能力者だろ?!」
「で、でも、生き物を殺すとか……」
「覚悟を決めろ!」
お、来たぞー?
あれは……、おお、サーベルタイガーかな?
ヤバそうなのだ。
デカいし強そうだな。
俺は弓を射った。因みに、こんなこともあろうかと、矢には、トリカブトの毒がたっぷり塗ってある。
『ギャ!』『グッ!』『ガアッ!』
三匹仕留めた。
「あーもう!やってやるわよ!!!」
啞零は、サーベルタイガーの頸椎をへし折って、十匹仕留めた。
正那は……。
「黙っててごめんね。僕、実は……」
バチン!と言う音と共に、身体から煙を出して、十匹のサーベルタイガーが崩れ落ちた。
「実は、結構強いんだ」
なんだこいつら……。
強くねぇか?
被害を覚悟するレベルだったんだが……。
すげぇよこいつら……。
あぶねーから怒らせねぇようにしねぇとな。
とにかく、労っておくか。
「カッコ良かったぞー、お二人さん!」
さりげなく、二人の乳を揉んだ。
「死ね」
「おぎゃー!ビンタは酷い!」
あれ?
正那からはビンタが来ないぞ?
「………………っ!」
うわ、真っ赤になってる。
「正那さーん?もしもーし?」
「そ、創壱君……!揉んじゃ駄目でしょ?」
「ケチケチすんなよ!ふんわりしていて触り心地良かったぜ!」
「な、なななっ?!も、もうっ!次やったらビリビリの刑だよっ!」
マジで?
おっぱいが揉めて、その上で美少女のビリビリももらえるのか……。
もう一回揉んどこ。
「だ、駄目だってば〜!」
「まあまあ!ちょっとだけ!ちょっとだけだから!」
これ、押せば行けるんじゃね?!
「良い加減にしなさいよ」
あっはい。
マジ切れした啞零にシメられた。
もうやだ。