ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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無茶苦茶な内容だが、今の世界もだいぶ無茶苦茶なのでセーフやろ。



108話 ヘゲモニーの足音

染みひとつない白亜の巨塔、未来的な曲線を描く建物。

 

澄み渡るほど透明な空を飛行トランスポーターが我が物顔で駆け抜けて。

 

人ならざる者、亜人達が街を歩く。

 

『今季も、時城政史郎氏が総理大臣に着任し、六期目の時城政権が〜』

 

『冒険者基本法の制定により、冒険者のスキルを使った犯罪行為の厳罰が〜』

 

『鎖国から二十年。今日、政府は鎖国法の解禁の第一弾を〜』

 

ニュースを垂れ流す魔力粒子空間固定機によるARが道端に浮かび上がり、転移技術の活用でどこにいても何でも手に入る。

 

スマホに命令をするだけで、家に居ながら新鮮な魚介類から淹れたての紅茶まで、通販サイトでのワンクリックと同時に手元に届くのだ。

 

転移装置で日本の端から端までを自在に移動でき、労働人口は限りなく多く、政治も極めて安定しており。

 

Dマテリアル製の飲食物はこの世のものとは思えぬ旨さで、物価はそこそこ、衣食住は簡単に手に入る。

 

そして、こんな夢のような時代を当たり前だと思って生まれ育った世代が成人し働き始めた今。

 

西暦2045年……。

 

二十年間の鎖国から、日本は。

 

「開国」した……。

 

長崎、横浜、神戸、新潟。

 

四つの港が開かれる。

 

「ご覧ください!今、二十年の時を経て、開国の時が来ました!」

 

野次馬が集まるそこには、新設された空港があり、ジャンボジェット機が降り立つ様が全国に放映され……。

 

「外国人です!外国人が二十年ぶりに日本に来ました!」

 

大きな注目をされる……。

 

 

 

外国人に対する開国は、まずは、条約港の開港という形に落ち着いた。

 

不平等条約を押し付けられたかつてのように、外国人は、条約港の領域から出ることを禁じられている。

 

まず、国交の失われた二十年の分だけ相互理解に努め、その後に本格的な開国を検討するというのが政府の発表だった。

 

だがこれは、つまり、「外国人が問題を起こせば起こすほど、本格的な開国は先延ばしにする」という無言の脅しでもある。

 

更に言えば、日本は、観光客とビジネスマン以外の入国を基本認めない方針にあるし、日本の国籍も付与はしない。

 

外国人に対して、補助金やら生活保護やらは一切やらないと明言している訳になる。

 

アジア連合国では、その排他的姿勢に対して批判の言葉が出ているのだが、日本はそれに対して「嫌なら来なければいい」と毅然とした対応で返している……。

 

しかし、今や日本の最大の資源はダンジョン。

 

観光客も、ダンジョンへ入ることを夢見て日本に来ているのだ。

 

そして、日本国籍がないものはダンジョンには入れないという決まりがある。

 

これは、日本にダンジョンを作った明空命が、日本の神に恩を受け、日本の神の言葉に従って恩返しをしているからだ。

 

即ち、「日本の民を頼む」と。

 

故に、明空命は、システマティックに「日本国籍を持つ者だけがダンジョンに入れる」と設定したのである。

 

これを逆手に取る……いや、利用した時城総理は、「日本国籍を販売し貸し出す」という荒業を編み出して、国法に適用させた。

 

これで、外国人でもダンジョンに入れるようになるのだ。

 

しかもこの「仮国籍」システムは優秀で、登録を認可する役所側が登録を取り消せば、即座に一方的にダンジョン入場権を取り上げられるというメリットがある。

 

無論、一度レベルアップして向上した身体能力やスキルを奪うことは不可能だが、それでも、問題がある外国人をダンジョンから即座に切り離せる機能は、保安上に大きな意味を持った……。

 

一方で、二十年かけてやっと新出島の外国軍兵士達は百階層に到達していた。

 

結局、国是として掲げるキリスト教的価値観は曲げることが叶わず、スキル修得はせずに、各国は膨大な予算とコストをドブに捨て、戦闘用のパワードスーツや多脚戦車などを開発したのだ。

 

これらの近未来的な兵器は、第三次世界大戦の際に雛形が完成しており、それを流用したものである。

 

また、パワードスーツや多脚戦車は、弾丸を除けば鎧扱いとしてDポイントで強化できるのも要因の一つだろう。

 

二十年分のDポイントを注ぎ込まれた兵器は、堅牢性だけなら「銀」クラスの冒険者のそれに匹敵する程度には力が高められている。

 

それに反して、非人道的な人体実験を厭わないアジア連合国軍は、積極的なスキル修得により力を高め、新出島の三つのダンジョン全てを完全攻略していた……。

 

 

 

だが、単に「観光客の受け入れ」程度で、あの時城総理が納得するはずもなかった。

 

時城政史郎は、元々は外交官から政治家としてのキャリアを積んできた者だが、さりとて経済に明るくないという訳ではない。

 

時城総理が次に狙っているのは、「他国に対する経済的優越」である。

 

観光業は、日本でも数十兆円を稼げるドル箱ではあるのだが、主力はやはり、車などの優れた工業製品の輸出が主なもの。

 

しかし今、ダンジョン技術に舵を振り切った日本は、これといって輸出しているものがない。

 

ダンジョンショック以降、食べ物も、エネルギーも、原材料も人手も何もかもを自弁できるようになったので、世界経済から一歩引いた立ち位置についている。

 

しかし今回、再び世界の経済に影響力を持つために、時城総理は新たな政策を打ち出した。

 

それが、『横浜租界』である。

 

それは、ダンジョンを大量に配置して、極めて巨大な異界とした横浜を、丸々全て外国に貸し付けるという荒業であった。

 

租界とは言うものの、主権は日本にある。ただ、大使館のように外国領土扱いとなる借用地という話だ。

 

一見すると、いきなり土地を他国に売り渡す売国行為に見えるが、そんな生易しいものでは無い。

 

まず、時城総理は、この租界を全世界に貸し付けて膨大な借用金を受け取ると同時に、領域の区割りや広さは外国間でお互いに話し合い決定しろと通達した。

 

そうすると外国は当然、ダンジョンという無限の価値を生む場所を少しでも多く確保しようと争い合うことになる。

 

そう、つまり、日本へのヘイトを他所に向けて、外国同士が争うように仕向けたのだ。

 

わかりやすく言えば、二虎競食の計であり、離間の計である。

 

全世界が歩調を合わせて日本を陥れる?あり得ない、そんなことができれば世界大戦が三度も起きる筈がない。

 

図々しくも租界のダンジョンの半分以上を要求するアジア連合国、それに対して声を荒げるアメリカ、国連が管理すると称して上前をはねようとするヨーロッパ……。

 

横浜租界の区分けについての話し合いは地獄の様相だった。

 

しかもそこに、「租界の区分けについては届出の変更と借用金の支払いさえしてもらえればいつでも変更を受け付ける」と時城総理が宣言したものだから、もう大騒ぎだ。

 

つまり、金さえ払えば土地を殺し合いで奪って良い、ということ。

 

露骨過ぎる「殺し合え」というメッセージに難色を示し、警鐘を鳴らす知識人は、もちろんどの国にも存在した。

 

だが既に、新出島ダンジョンで各国が手に入れたDマテリアル関連技術の生み出す富の旨味を知ってしまった政府と世論に、口を出せる者はいなかった……。

 

 

 

そして更に、時城総理の策は、ただの離間策だけでは当然ない。

 

先ほど触れたように、この策の本質的な目的は、経済的な優越を作り出すことにある。

 

即ち、ダンジョン経済圏に外国を取り込み、ダンジョン先進国として日本を覇権国家にするつもりなのだ。

 

具体的には、日本産のダンジョン技術を使った製品……武具や薬品などを、これからダンジョンの攻略に臨む諸外国に販売して、今や日本人冒険者がやるには採算性が取れないような低級ドロップアイテムの収集などの下請けをさせる。

 

……東洋のカエサルなどと論じられる時城総理だが、この男はそもそも覇権国家になるなど望んではいなかった。

 

だが、この世界経済の低迷や人心の乱れ、治安の悪化などを鑑みると、最早新たな覇権国家として世界を牽引する他ないと気づいてしまったのだ。

 

今や、かつての覇権国家であるアメリカも、法曹関係者か軍人にでもならない限りまともに食っていけないほどに経済が低迷している今の時代、世界を牽引する新たなリーダーのような国が必要だった。

 

そして、そのリーダーができるだけの力と金がある国は、今や日本だけだった……。

 

海外メディアでは、まるで昭和のロボットアニメの悪の独裁者か何かのように語られる時城総理だが、二次大戦時のトラウマを思い起こす覇権主義はどうやら本気でやりたくないらしく、珍しくも曾孫の紗夜にほんの少し愚痴を溢すほどだったという。

 

……覇権国家とは、軍事的か、経済的か、文化的か、いずれかの圧倒的な力を持っていなければならない。

 

幸いにも日本は、冒険者という他の追随を許さぬ圧倒的な軍事力がある。

 

覇権安定論(Hegemonic Stability Theory)という言葉があるように、覇権国家がその圧倒的な力を以ってして、他の国家に強制力を行使することにより安定を図る……。

 

分かりやすく言えば、かつてのアメリカが、強大な経済力と軍事力によって「世界の警察」となり世界を安定させていたように。

 

今度は日本がそれをするのだ……。

 




オリジナル聖杯戦争ものを書きたい。

主人公は歴史は浅いが金だけはあるアメリカ出身お嬢様魔術師。相棒はアーチャーのサンダンス・キッド。

ラスボスはアベンジャー楠木正成で。

ライダーのライト兄弟も出そう、ガガーリンでも良いかもしれない。

キャスターはガリレオ・ガリレイとか?

セイバーはチェーザレ・ボルジア。

ランサーは……真田幸村?

バーサーカーはヴァイキングのハルフダンで。

アサシンは蝶々夫人でいこう、オペラの。

最初は「聖杯に願うもの?はっ、俺はただ、また昔みたいに強盗をしたいだけさ!」と嘯くキッドだが、本当は死なせてしまった相棒を想っていて、「人生のやり直し」を望んでいるんだよね……。

それで内心は意外とウジウジしてるキッドを、無敵陽キャお嬢様魔術師が、「ウダウダ言ってないで、行きますわよ!」と強く引っ張ってくれるんですよね。

それを見て、キッドの新たな相棒になっていく、みたいな。

……やっぱり、設定調べるのとか大変だからやらない。

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