ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ウギャアアアア!!!

ひ、昼の辛いものがケツを破壊してるよォ〜!!!


102話 湿っぽい話

受勲だの何だのを終わらせて、俺の中で今一番アツいコンテンツである「レイドボス一人で殺すやつ」を楽しんでいる年の瀬。

 

俺は、嫁達の実家の方で親戚付き合いをしていた。

 

「久しいな、婿殿」

 

「おう」

 

会いたくないジジイにも会わなきゃいけない。

 

普通に困る。

 

「婿殿のお陰で、国政は安泰よ。我が家も玄孫が産まれて、これまた安泰。世は並べて事も無し、よの」

 

「世の中を騒がせてるジジイが何言ってんだ?」

 

「クハハ……、見解の相違だな?儂は何もしておらん、世の中の方が勝手に騒いでおるのよ」

 

「じゃあ、並べて事も無しとは言えねえんじゃねえのかね」

 

俺はそう言って、Dマテリアルから作られた焼酎をぐっと飲み干した。

 

かぁーっ、効くなあこれは……。

 

時城のジジイに無言で酒瓶を向けられるので、器を出す。

 

酒が注がれる。

 

注がれたからには返さにゃならん、俺も酒を注ぎ返す。

 

するとジジイも、酒を飲み干した……。

 

「くぅ……、五臓六腑に染み渡る……!このような飲み方は、老いた身ではできぬからな」

 

そう言って、ダンジョン産の塩を肴に、ウォッカのように強い焼酎をパカパカ空けていくジジイ。

 

急性アルコール中毒で死なんかなこいつ。

 

……いや、死なんな。

 

これくらいのステータスになると、死ぬのにも難儀する。

 

丈夫過ぎてメスも通らないし、髪も切れない。上位の冒険者は大変だ。

 

「……いや、誠にな、ありがたく思っておるのだ」

 

「何がだ」

 

「婿殿のお陰で、我が国がどれほどまでに救われたことか……」

 

「俺は単なる、殺し合いが趣味の狂人だ。俺は何かを作ることはしない、壊すだけだ。だから、俺の通った道に何かができているのなら、それは俺の背後をついて来た奴が勝手にやったことだな」

 

俺はそう言って、寒空の下、月を眺めた。

 

良い、月だった。

 

杜和のような、美しい白色の月だった……。

 

「クハハ……、よいよい。婿殿はそれでよい。気炎万丈の『もののふ』でよいのだ。だからこそ、皆がその背を追えるのだ」

 

ハ、そうかい。

 

「婿殿が、正に言葉通りに切り拓いたものは、この国の未来だったという訳よな」

 

「だから、救った覚えはないと言った」

 

「いいや、救われた。老人故に何度も同じ話をするが、婿殿は英雄なのだ。儂なんぞより、よほど国になくてはならぬ、英雄……」

 

「柄じゃねえよ」

 

「婿殿がどう思うかではない。皆、婿殿に憧れておるのだ。聞いたか?今、子供達に最も憧れられているのは、週末の朝にやっている特撮ヒーローではなく、婿殿であると」

 

はあ?

 

「俺は覆面ライダーより人気なのか?」

 

「そうだとも」

 

「世も末だな、おい」

 

「クハハハハ!そうだな!全く、世も末だ!」

 

そう言って更に盃を空けていくジジイ。

 

そして、一息ついたところで……。

 

「婿殿、分かるか?」

 

「だから何がだよ、主語を言え主語を」

 

「婿殿がどれだけ、この国に貢献したか、だ」

 

「知らんて」

 

「婿殿が月に一度持ってくる『星の炉心』は、恒星一つ分のエネルギーを永遠に放つ。お陰で、日本では、全国どこでも電気代が無料になった」

 

ああ、そうらしいな。

 

なんかそういう話を最近聞いた。

 

「婿殿が持ち寄ったモンスター、『マザーマシン』は、量子コンピュータすらをもはるかに超える、天文学的な演算力がある。これに任せておけば、日本では永久かつ絶対にサイバー犯罪は起こり得ない」

 

そんなこともあったな。

 

「婿殿が持ち寄る、深層の大量のポーションもだ。現在日本には、障害者が一人もおらんのだ。重度の知的障害すら完治とは言わずとも治すのだから、言い方は悪いが足を引っ張る者もいない」

 

らしいな。

 

流石に、本当に何でも治るレベルのポーションは貴重だし、俺も使うから回せていないが、半身不随やら部位欠損やら脳障害やらを治す程度のポーションなら、余ったDポイントで買って国に売ってやっている。

 

年間百万本くらいは売ってるんじゃないか?

 

「婿殿の流派のお陰で、邪魔な政敵を全て消せた。儂のシンパのみで周囲を固め、事実上の独裁ができておる」

 

そんな事も聞いていたな。

 

うちはそもそも暗殺や破壊工作は大得意だから。

 

国が滅ぶかどうかという時に、即応性の低い民主主義をやるよりも、できそうなカリスマがある独裁者に間違えない独裁をやってもらった方が良い……、みたいなことを杜和が言ってた。

 

「婿殿の齎したブランチダンジョンのお陰で、ガス代やガソリン代はダンジョンショック以前の半分まで値下げできた。そもそも、魔力炉心を使った新しいインフラを作るので、今後は無料になるだろう」

 

ああ、それも聞いた。

 

ブランチダンジョンで無限に取れるから、採掘料と輸送料だけしかかからないのでめちゃくちゃ安いんだとか。

 

「あの時、儂がどれだけの無念を抱えていたと思う?偉大なる先人が汗水を流し、大戦で若人が血を流して得た、神州日本の未来……。棺桶に片足を突っ込んでいるような老人は、どう思ったか、分かるか?」

 

「知らん。俺はあんたじゃない」

 

「ふ……、そうだな。だが、儂は……、儂だけでない、皆が、婿殿に心から感謝していることは忘れんでおいてくれ」

 

 

 

そんな湿っぽい話、長々聞いていられない。

 

俺は早めに寝た……。

 

そして、三が日が終わって初めて、自宅に帰れた。

 

挨拶回りで三日潰れた訳だな。

 

しばらくは正月休みということで、家で過ごすこととした……。

 

俺がソファに座ってだらけながらテレビを見ていると、嫁達が集まって来て、膝の上に座ったり、隣に座ったりして団子になる。

 

テレビは……、ニュースだな。

 

『ニュースです。新出島ダンジョンにて、未確認の人型モンスターが出現したとの情報がたった今出て来ました。現地の冒険者である倉井影人氏は、モンスターによって重傷を負うものの一命を取り留め……』

 

大したことがないニュースだ。

 

んん……、だがまあ、未確認の人型モンスターか……。

 

気になると言えば、気になるが……。

 

けれどどうせ、新出島に出現するようなモンスターだろ?

 

最近俺の中で流行っているレイドモンスターよりは確実に斬りごたえがないはず。

 

まあ一応、ネットで調べておくくらいはするか。時城のジジイもニュース見ろ見ろ五月蝿いからな。

 

「ニュースサイトを開け」

 

俺は、スマホにそう言った。

 

「先輩……、迷宮端末はネットに繋がってないっすよ?」

 

っと、杜和が言う通り、こっちは迷宮端末だったな。

 

『こちらが検索結果です』

 

……あれ?

 

なんで、迷宮端末がインターネットに繋がっているんだ?

 




田舎剣士、二週間くらいは続けられると思います……。

その後はもうマジで書き溜めが本当にないのでどうしよう……。

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