ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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ラーメン食いてえ。


101話 鬱病患者は見た

元社畜の鬱病おじさん、倉井。

 

子供部屋おばさん、小森。

 

二人は、先日のシルバーウルフの件以降、コンビを組んで福祉依頼を受けていた。

 

陰気で無気力な二人は、とにかく性格が一致しており、いい友人として付き合うようになっていた。

 

「ぼ、僕は、その……、昔、ブラック企業で……」

 

「ゎたしも、あの、その、学校で、ぃじめで、不登校で」

 

弱者同士の傷の舐め合いだが、しかしてそれこそが彼らに真に必要だったもの。確実に二人の状態は快方に向かっていた。

 

倉井も、相変わらずの鬱病だが、最近は月に一度しか自殺しようとしなくなった。

 

小森は、少しだけだが喋れるようになった。

 

福祉依頼こと、「政府委託依頼」を受ける回数も増やして、政府からのレンタル品ではない自分用の武器と鎧を買った。

 

彼らは、少しずつだが確実に、前に向かって進んでいた……。

 

 

 

そして遂に、「政府委託依頼」をやめて、普通の冒険者として働くようになった。

 

倉井は、異常に高いVITを当てにして、あえて軽装の鎧を着込み、両手持ちの大剣を武器とした。

 

福祉の一環として配布されたスキルスクロール、『剣術』を活かす為だ。

 

低階層のモンスターを倒し、自力で『硬化』や『突進』『斬撃』などのスキルも得て、オーソドックスな大剣使いへと成長している。

 

小森もまた、魔法のドレスを着込み、ミスリルを少しだけ埋め込んだワンドを持ち、魔力増幅のネックレスを首に掛け、万全の装備だ。

 

また、『闇魔法』に加えて、『連続魔法』『速攻魔法』などを覚え、純攻撃魔法使いとして鍛えに鍛えた。

 

当然、ドロップアイテムも二人で山分けのため、実入りは信じられないほどに良くなった。

 

たまたま手に入れた『木工』のスキルスクロールなど、百万円近くの金額で売れたものだ。

 

金を稼ぎ、装備を揃え、レベルを上げて。

 

いつしか二人は、レベル50の大台にまで乗っていた……。

 

薬ももう飲まなくて良くなったし、死にたい気持ちも無くなった。外の世界を怖がる必要も。

 

むしろ……。

 

お互いに見つめ合う倉井と小森。

 

「小森さん……」

 

「は、はい!」

 

「け、け、結婚!僕と、結婚……、してください!」

 

「……喜んで!」

 

やっと、二人は。

 

人並みの幸せを、掴めた……。

 

 

 

一般的な冒険者として、資産と力を得た二人は、家を建てることにした。

 

頭金などとは言わず、一括で一軒家を購入できるほどの金を稼いだ二人は、物件を探す。

 

今、一番地価が安いのは、東北のど田舎でもなく、新出島だった。

 

何故か?

 

やはり、国民感情だろう。

 

嫌いな外国人がいる土地だから、住みたくないと言う訳だ。

 

もちろん、倉井達を含めて、大多数の人間はそこまで気にしてはいないのだが、テレビやインターネットでの「嫌外国」の風潮は実に痛烈だった。

 

不動産屋もそれを知っているので、地価を釣り上げることはできなかったのだ。

 

ダンジョンの近く、「ダン近」の物件は、信じられないくらいの高騰ぶりを見せていた。

 

地価の向上は、ある程度ならば政府機関もそれを望むところ。

 

かつてのバブル経済も、土地の価格の高騰が原因の一つだったのもある。

 

が、しかし、バブル経済とは違い、地価の高騰には「ダンジョンが近い」という明確な評価基準があるので、実態から乖離した数字上の金額だけが膨れ上がることはなかった。

 

さて、とにかく、ダン近は地価が高い。

 

よって、ダン近だが地価が安い新出島に新居を構えた倉井夫婦。

 

新出島のダンジョンはドロップ品があまり良くないのだが、それでも、レベル50付近の二人ならば、五十階層でやっていける。

 

五十階層ならば、ドロップ品が良くないダンジョンでも、それなりの生活は望めるだろう。

 

そうして、二人の、新出島での生活が始まった……。

 

 

 

新出島の家は、そこまで大きなところではないが、二人暮らしには十分過ぎるほどの広さがあった。

 

そして小森も、アラサーとは言えまだ三十歳手前ほどなので、子供を作ろうという話になる。

 

今の日本では、ダンジョンでの死傷率が高い為に、多産が推奨されている。

 

産んだだけでも六桁程度の補助金が出されて、その補助金は子供が増える度に増額し、更に子供が十五歳になるくらいまでは補助金が継続的に出るのだ。

 

それを抜きにしても、今は、亜人によるベビーシッターや保育園の類が山ほどあるのだから、子供が増えない訳がない。

 

酷い話だが、最悪、産んでくれさえすれば捨ててもらっても構わないのだ。そうしたら、政府が引き取って教育し、優秀な冒険者にするだけの話。

 

とにかく、今は人手が足りない。

 

一次産業、二次産業を、海外や外国人の手を借りずに充実させねばならないのだから、人手はいくらあっても足りないのだ。

 

そして、まあ、やることをやれば当然に妊娠するもので。

 

妊娠したことにより、妻の小森は冒険者を休職した。

 

倉井は、ダンジョンに亜人傭兵を雇って入り込み、仕事に励む……。

 

 

 

……その道中の事である。

 

「な、何だ、あれは……?」

 

倉井は、新出島のダンジョンで見たのだ。

 

五十階層ツインヘッドシャークの首を捩じ切る、大男を!

 

「フッフフ!フッフフフ!ハッハー!」

 

「人間じゃ、ない……?!」

 

超越種でも、人間でも、ましてやモンスターでもない。

 

アジア連合国の軍服を着た、異形の人型を……!

 




書き溜めはここで終わりです。

俺にはもう何もありません。

……なんか適当に新作投げて良いですか?マジで今ピンチです。

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