《お知らせ》
ダンジョンをアップデートしました。
!皆様待望の『エンドコンテンツ』を実装します!
『天・エンドオブザワールド討滅戦』
日光ダンジョン666階層ラストボス、エンドオブザワールドの強化型とのレイドバトルです。
天・エンドオブザワールドは非常に強力なモンスターで、レベル666の冒険者24人と等価の強さを持ちます。
この時のみ、冒険者パーティの上限数を24人まで拡張することとします。つまり、24人までならば、ドロップ率や経験値倍率も下がりません。
『アルテマドラゴン討滅戦』
『ユグドラシル討滅戦』
『白面九尾討滅戦』
『天魔大帝討滅戦』
『フェンリル討滅戦』
『アダマンゴーレム討滅戦』
『キングヘラクレスカブトクワガタ討滅戦』
『フェニックス討滅戦』
以上のレイドバトルも追加します。こちらは、レベル100程度でもクリア可能です。
『コロシアム』
どれほどのダメージを受けても死ぬことのない特殊なフィールド、コロシアムを解放します。
コロシアム内では、純粋に戦いの技術を磨くことが可能です。
相手は人間同士でも可能ですが、モンスターを召喚することもできます。
ランキングによって景品があります。
『モンスターバトルキングダム』
ペットモンスター用のコロシアム、バトルキングダムを解放します。
自分のペットモンスターを戦わせて、最強のペットモンスターを目指しましょう。
ランキングによって景品があります。
『秘伝レシピ』
クラフト系の新レシピ、秘伝書を解禁します。
秘伝書では、最上位クラスのクラフトスキルを持つ者のみに製作を許された究極のアイテムを作り出すことが可能です。
『アイテム合成』
アイテム同士を合成する合成窯を販売します。
アイテム合成のレシピは完全に非公開です。意外な組み合わせでレアアイテムを作れるかも?
『冒険者ランク』
冒険者ランクの実装を行います。
今まで、冒険者の評価基準は順位による相対的な評価でした。
今後は、独自の能力査定により絶対評価に切り替えます。ランクの分け方は以下の通りです。
木→石→鉄→銅→銀→金→ミスリル→オリハルコン→ヒヒイロカネ
『亜人傭兵』
亜人の傭兵を雇用できるようにします。
亜人傭兵は、冒険者の一人としてダンジョンシティで生活するようになっています。
適切なダンジョンポイントや、分前の約束をすることにより、共同でのダンジョン攻略が可能です。
また、何度も雇っていれば、パーティメンバーとして雇用することもできます。
おっ、アプデだ。
早速俺は、レイドボスの天・エンドオブザワールドを一人で殺しに行った。
十日かけて何とか倒したぞ。いやあ、気持ちがいい戦いだった……。
数年くらいはこいつの相手で暇を潰せそうだな!
……などと、某田舎剣士がいい笑顔で笑っている夏のある日。
迷宮端末に届いたお知らせの通りに、ダンジョンに新要素が開放された。
それは、通常四人から八人までと定められている冒険者パーティが、二十四人で攻略する前提の大型で強力なモンスターと戦う「レイドボス」との戦い。
これは、後で分かることだが、経験値の実入りも、手に入るアイテムも全てが上等で、大ヒットの一大コンテンツとなった。
他にも、一大興行となるコロシアムや、亜人の冒険者である亜人傭兵など、数多くの新要素が追加され、それにより日本は更に変化した……。
ダンジョンの総数は300を超え、一つの県に六つものダンジョンが設置されて。
亜人も当然のように人間社会で生活し、人間と結婚した。
日本人の国ではないが、外国人の国でもない、それどころか最早人間の国ではないおかしな国。それが今の日本だった。
福祉という言葉が消滅して久しい日本だが、最近はそれが復活しつつあった。
しかしそれは、相変わらずに「生活保護」や「失業保険」などはなく、要するに「冒険者として働きやすくなった」という話だ。
この国の新たな思想である『実力主義武士道』により、底辺層でも金銭的な余裕は大きいが、代わりに仕事は基本的に命懸けで、それなのに生命が軽視されている。
例えば……、偏向放送を法で禁じられたマスコミだが、今度は世論の誘導を始めたこと。
それにより書店には、江戸時代の武士道について書かれた本である「葉隠」が並び、アニメーションやドラマでも戦国物などが露骨に流行らされる。
全て、武士道精神の流布のためであった。
女子供を守り、戦って死ぬ事は名誉である、と。
そういう言論が罷り通っている。
福祉方面は壊滅的だが、唯一の大きな国民保険として「ダンジョン死亡保険」という、ダンジョンで死んだ人間の遺族に多額の保険金が払われる制度なども、それを後押しした。
とにかく、国や家族のために戦って死ぬ事は名誉だぞ、と。
全然日本のような価値観になっていた。
では、この日本の福祉とは何だろうか?
ダンジョンで働きやすくなったとは?
長崎のとある街を見てみよう。
ブラック企業で心を病み、鬱病で退職した青年の話だ。
床屋に行く気力も持てず、伸ばしっぱなしの黒髪で顔を隠す、倉井という青年。
彼は、今日も市の職員に呼ばれて、小さなマンションからのそりと出てきた……。
「はい、倉井さん。武装は……ああ、困りますよ!ちゃんと防具を着てきてください!」
「……いえ、でも、僕はもう、別に」
「死にたければ好きにしてください。でも、貴方の担当の私に迷惑をかけるのはやめてください!」
「は、はい」
職員にどやされた倉井は、防刃コートを着込み、ショートソードを腰に帯びた。
かつては、鬱病故の粗食でガリガリに痩せ細っていた倉井だったが、ダンジョンでのレベルアップや、度重なるポーションの服用により、身体はキュッと引き締まって、腹筋が綺麗に割れていた。
その肉体に、ダンジョンのモンスター……低階層の獣型のモンスター革で出来たコートのようなものを羽織り、魔鉄の剣を持つ訳だ。
これでもレベルは20程度、冒険者として見れば、そこそこ、普通の腕前だ。
「では倉井さんは454班ですから、85番のカウンターでお待ちください」
倉井が言われた通りに、市の冒険者ギルドの受付に行くと、そこには、倉井と同じような社会からの脱落者、落伍者がいた。
「あ……、っす……」
三十そこらになるまでニートをしていた小森という女性。倉井と同じく、伸びた髪で顔を隠し、猫背で、目つきが悪い。芋ジャージの上にプロテクターをつけ、杖を持っている。
「おあようごじゃいあす!!!!」
こちらは沼田。何らかの障害があるであろう、坊主頭の大柄な男だ。着るタイプのサーコートのような鎧と、大きめの盾にメイスを装備。
「おーっす!」
伊丹。幼少期から虐待を受けて育ち、半グレをやっていた小柄な男。ハチェットとバックラーを持ち、胸当てと手甲をつけている。
鬱病患者、ニート、障害者、半グレの地獄のようなパーティを監督するのが……。
「おはよう!儂が監督官のブラウンだ!」
ドワーフの亜人傭兵であった。
そう、今や、福祉の一切は亜人がやることとなっている。
介護職やサービス業などの現在無駄な三次産業は、全て一次産業たるダンジョン攻略をやれというのが政府の見解である訳だった。
「さあ!今日も元気に頑張ろう!」
「は、はい……」
「……っす」
「あいいー!」
「うぃーっす!」
そう、これが、今の日本の福祉なのだ……。
もうそろそろ書き溜め君が……。