ハードオンの楽しい思いつき集   作:ハードオン

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蒸し暑い。


92話 俵藤太の領域

「と、言う訳で、物質創造装置を手に入れた」

 

「……愛しているぞ、息子よ!」「……流石私のムチュコタンね!」

 

キッモ。

 

とりあえず、親に物質創造装置を投げ渡して、俺はしばらく休暇に入ることに。

 

「いやあ、これでお前もご先祖様に並ぶ剣士になったんだなあ。父は感慨深いぞ!」

 

「はあ?」

 

「ん?聞いていないのか?」

 

何のことだ?

 

「……ソラ様と話していないのか?」

 

「あー、最近はなあ」

 

仕事もあるしなあ。

 

大体にしてあいつ、神様なんだろ?

 

自分のことは自分でできるだろうし、過干渉するつもりはねえよ。

 

「あー、そうか。あのな、俵藤太の逸話は知っているよな?」

 

「ああ、まあ、うちのジジイから嫌ってほど聞かされたな」

 

「名前の由来は分かるか?」

 

「あー?そりゃ、龍神の依頼で大百足を始末して、その礼に、『米が無限に出てくる米俵』を……、って、まさか」

 

「うん、それだよね」

 

俺が担いでいる円筒状の……、この物質創造装置が!

 

俵藤太が龍神から譲り受けた宝物である、『米が尽きない米俵』『切っても減らない反物』『食べ物があふれてくる鍋』の元ネタってことかよ!!!!

 

ってことは、物質創造装置で米作ってたのご先祖様?!!

 

「つまり、俵藤太と同じものを手にしたお前もまた、俵藤太と並ぶ剣士なんだよ」

 

「そうか……、そうなるのか」

 

まあ、うん。

 

特に思うことはないが。

 

 

 

『ですから、大規模な表現規制を今こそ……』

 

『それに何の意味がある?市場を収縮させ、多くの人々から仕事を奪い、形骸化した国連とやらに盲従することにより、何が得られると言うのだ?』

 

『総理は女性の権利を何だと思っているのですか?!!!』

 

『貴様こそ何を言っておる?我が国には、女子であっても、守られねば生きていけぬ弱者など居らぬわ!』

 

『の、望まずに性産業に従事する女性の〜……』

 

『そんなものがいるのか?今の我が国の経済状況においては、週に三回ほど、死なぬ程度にダンジョンに潜れば、最低限生活していくには困らないはずだ。そこから更に良い生活を望むのであれば、学を積み資格を取り、自らを研鑽し、良い仕事に就けば良いだろう?』

 

『で、ですが!レイプ被害者など〜……!』

 

『それは仕方のないことだろう。我が国にも、どうしようもない下衆はいる。どんな犯罪もゼロにはできん。だが、我が国は、野蛮な海外よりもよほど犯罪は少ないぞ?何故、海外に倣おうとする?倣ったとて、犯罪が減ると言う明確な根拠が提示できるのか?』

 

『そ、それは』

 

『……今、部下から連絡があった。貴様は、どうやら先日、弁護士など複数名と会談していたな?内容は、アダルトビデオやテレビゲーム、アニメーションや漫画などに、表現規制のための監査委員会を設置して、監査すると言う名目で売上の上前をはねようという……、そういう陰謀だ』

 

『な、何故それを?!!!』

 

『ふざけおって……!そのような中抜き構造は許さぬと言っておるだろうが!最早、悪巧みで私腹を肥やせる時代ではないと、何故理解できんのだ、貴様らは!!!連れてゆけ!!!』

 

『や、やめなさい!離せ、離せえーっ!!!』

 

国会中継、略して、「バカの公開処刑場」は、今日も時城のジジイがノリノリでギロチンを落としている。

 

マスコミが規制され、舐め腐った偏向報道や切り抜きができなくなった今、生の国会が全国に中継される。

 

そして、生の国会の、忖度なしの放送ともなれば、今まで何かの間違いで国会議員になっていたアホどものアホっぷりが可視化されるって訳だ。

 

馬鹿な提案、サボりやら居眠りやら、そういうふざけたことをやる議員は、この国会中継で全国民が見ている最中に、時城のジジイに吊し上げられちまう。

 

で、あっさりと首を切られて消えていく。

 

今回も、表現規制?とか言って、自分の用意した監査委員会とやらを色々な業界に潜り込ませて、上前をはねようとしていた、馬鹿な女議員が吊上げにされているようだな。

 

アレももう終わりだろう。政治家生命ってやつが。

 

時城のジジイ隷下の御影流門下生が、犯罪行為をすっぱ抜いてきたからな。

 

表現規制だとかなんだとか、俺は難しい政治の話は知らん。だがまあ、当たり前の話だが、犯罪をする奴が悪いので……。

 

 

 

で、他はどうだろうか?

 

「なぁんで儂がこんなことせにゃならん?」

 

「テメーが一番上手いからな」

 

うちのジジイは、御影流の指南役として、門下生に武技を教える教官になっていた。

 

「儂はお前に当主の座を譲ったはずじゃぞ、このクソガキ!」

 

「じゃあ当主命令だ、死ぬまで働けクソジジイ!」

 

「あ"あ"?!生意気じゃぞクソガキ!」

 

ジジイの飛び蹴り。

 

こりゃ、御影流拳法の『殻穿』か。

 

爪先に一点集中した破壊力を叩き込み、眉間などを穿つ技だ。

 

食らうと、銃で撃たれたかのように穴が空く。

 

が、まあ、殺す気は六割くらいだな。

 

この程度はじゃれあいに過ぎない。

 

「うるせぇーな、やれっつってんだよボケが。金持ち様である俺が、貧民に仕事を与えてやろうってんだ!頭を地面に擦り付けて感謝したらどうなんだ、あ"ぁ?!!」

 

俺は、魔力を圧縮して杖を作り出し、それで、御影流杖術の技である『星砕』を放つ。

 

ジジイの鎖骨に杖が振り下ろされるが……。

 

「手前ェの孫に仕事もらうジジイがおるかボケナス!!!儂ゃ、手前ェの食い扶持くらい手前ェで稼ぐわい!!!」

 

そう言って、ジジイは魔力を圧縮して作り出した手裏剣で俺の杖を弾き、宙返りと共に手裏剣を放ってくる。

 

この動きは、御影流手裏剣術の『飛燕返』と……。

 

投げた手裏剣の影にもう一枚の手裏剣。

 

なるほど、『陽炎』の合わせ技か。

 

やるな、ジジイ。

 

俺は、一本目の手裏剣は弾いたが、二本目は避けきれないので、杖を捨てて掴み取った。

 

それを、手首の返しだけで軽く投げ返す。

 

「いいからやれカス。俺は門下生の指導なんざやりたかねぇんだよ」

 

御影流拳法、『礫送』である。

 

が、所詮はジジイの魔力の塊。

 

ジジイに直撃する前に、ジジイが魔力を霧散させてノーダメージだ。

 

「お前は当主じゃろうがこのアンポンタン!」

 

ジジイは、魔力で分銅を作り出し、鎖を叩きつけるかのようにぶつけてきた。

 

御影流分銅術、『痛衝蛇』か。

 

当たれば、相手の皮膚に蛇ののたうつような腫れができ、激痛でショック死させる。鞭系の技だ。御影流の拷問技術の一つでもある。

 

軽く避けるが、鎖が当たった地面は抉れた。

 

「おーおー、素晴らしいね。俺は『壊す』のは得意だが、あんたみたいに『壊さないように痛めつける』のは苦手でねぇ?そのあんたの拷問の腕を買って、指南役を押し付けてやるって言ってるんだよ!」

 

御影流槍術『藤光』……。

 

「後進への指導も当主の仕事のうちじゃ!できんからと言って毛嫌いすることは許さん!!!」

 

御影流小刀術『走鐵閃』……。

 

「才能ある奴はチラッと見てやっただろうが!」

 

御影流柔術『時逆巻』……。

 

「才能がない奴もものにする指導を覚えんか!」

 

御影流弓術『日輪貫』……。

 

「才能がない奴は御影流やらねぇだろうが?!!」

 

御影流薙刀術『死風』……。

 

 

 

しばし、殺し合いをしたところで。

 

「ご、ご指導、ありがとうございます!」

 

「「「「ありがとうございます!!!」」」」

 

勝手に見物していた門下生達が喜んでいた。

 

「「……何の話だ?」」

 

「えっ、いや、わざわざ道場の前で実戦訓練を……」

 

「「殺し合いだが」」

 

「えっ……?え?えぇ……」

 

そんなこと言われても、俺とジジイはいつもこんなもんだし……。

 




はーい、田舎剣士の書き溜め終わりでーす。

満月の狂人か、新作か。

どうしようか?

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