「さて、着いたはいいが…」
まぁ深夜帯だ。人通りもなく、それでいて物静かなのも仕方がない。
「…これ今更だけどガッチガチの防犯システムとかないよな?25年前だしないと信じてるぞ?」
警備巡回の人がいたらその時はその時だ。今日くらいはいい夢でも見てもらうことにしよう。校舎内で見る夢は最高に寝覚めの悪い夢になりそうだが。
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「意外に何も無かったな…」
警備の人がいるわけでもなく、また何か霊的な物が出る様子もなかった。
うんまぁ用事があってここに来たわけだし邪魔されても困るけど深夜帯の学校に来てアクシデントの一つもないとそれはそれで見てる側もシラケるだろうに。
ここに来るまでの道程を全部端折られてそうでなんか無性に腹が立ってきた。単なる予想だけど。
全くもってどうでもいい所で怒りを抱えながら扉に手をかける。予想通り鍵は閉まってなかったようだ。
「…ま、そうでしょうな」
あいつは襲われたんだ。外から見た限り窓を破壊された様子もなかったし多分律儀に扉から出ていったんだろう。余計な騒音も立たずに出られるし賢いといえば賢い。
扉を開け、隙間から中を覗く。
「うわ…」
これも半ば予想通りと言うべきか。
部屋の中はあちこちに傷がついており、床には血の跡がべったりと付着している。部屋は死臭で満たされていた。
血の跡はよく見ると研究室の方に続いていた。
「こっちの扉はやられてないみたいだな…」
という事は多分あいつが帰った後にこの中に入っていった、というのが正しいか。
研究室への扉を開けようとしたが、扉が重たく開けられない。
「鍵でもかけたか…?」
見たところ鍵のような物はなさそうだったが今からゆっくり探してる時間もない。ちょっと荒業だが強行突破で行かせてもらおう。
「せーのぉ!」
1人掛け声をし、思い切り扉を蹴破った。やってて少しばかり恥ずかしかったが誰もいないし問題もないだろう。
「…あー、そういう」
扉が重たかった理由もよくわかった。
その原因は扉を蹴破られた衝撃で吹っ飛び、目の前で横たわっている血塗れの女性であった。
「…もう4人、か」
この物語のメインメンバーも俺、シナ、先生、コスモスの4人となってしまった。
きっと校長の死は楓花の言っていた通りならば輪廻の理には何も影響がないのだろう。関係があるのはあくまで俺、シナ、先生のうちの誰か一人以上の死だ。コスモスだって、きっと破壊されても先の未来には関係ないと思われる。
それでも、だ。
「例えこいつでも、人の死には慣れないもんだ…」
今回で6回目だ。茉莉花、愎華、シナ、コスモスの破壊、楓花、そして校長。
この数ヶ月間でこんなにも死体を見ることになるなんて思っても見なかった。てかタイムリープ系とかもっとこういい感じのほのぼのした感じだと思っていたのにどうしてこうも惨劇の場ばかり見なければならないのだろうか。
「…でも、立ち止まれもしない」
ここで立ち止まってしまえば今までの、ここまでの犠牲も全てがなかったことになってしまう。もう無駄な犠牲は懲り懲りだ。
「なにか、1ミリでもいいからなにか探さないとな…」