「でもこれでやっと手がかりが掴めた…はいいけど…」
流石に時を超える、という概念ばかりは自分自身ではどうしようもない。
結局八方塞がりのままか、と思っていたが。
「あの…よろしければこの件、お手伝いできるかもしれません」
「…ほんとですか?」
半信半疑であるのが事実であった。
実際時を超えるなど現科学の段階では不可能に等しいから。不可能はどれだけやっても不可能だ。零に零をかけるのと同義である。
ただし、さっきも言った通り半分信じているところもある。
今は何にもすがるものがない。信じるも信じないもこの話を聞かなければ1歩も前に進めない。
「ええ。そこは安心してください。必ずお役に立てますから」
彼女の笑みには何故か安心感があった。底知れぬものを持っているにも関わらず安心できる何かがそこにはあった。
「…ありがとうございます」
「いえいえ」
俺は信じてみることにした。50/50なら今したいことのために信じる道を選ぶのが正しいと思ったから。
それが第三者から見て正しいのかはわからない。けど俺が信じなければいけないのだ。
「では私は一旦帰る準備をしますね。教職員用の門の前でお待ちしております」
「はい。こちらも巡回を終わらせてすぐに向かいます」
約束を交わし、八島先生は職員室へと足を運んだ。
俺もさっさと巡回を終わらせるか。
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門の前では言葉通り八島先生が待ってくれていた。
帰る前に教頭に捕まってしまったため少し遅れてしまっていたので、もう帰っているのかと思ったが、杞憂だったようだ。
「すいません…教頭に小言言われてまして…」
「お気になさらず。5分も経っていませんからね」
さぁ行きましょう、と八島先生は歩みを始めた。俺もその後ろについて行くことにした。
「ところでどこに向かうんですか?」
迷いなく商店街の方へと入っていくので少し心配していた。こんな所に中村の情報があるのだろうか。
「…水原先生は隼人君がいつ、姿を消したか覚えてますか?」
「えぇ、勿論。92日前、おおよそ3ヶ月前から欠席していました」
最初は風邪だと思っていた。あいつにしては珍しいなと思いつつ、人間なのだからそういう日もあるだろうと思い心配はしていなかったのだが数日、1週間と経つ事にその感情は膨らみ始めていた。その後、家にも伺ったが反応はなく、今に至る。
「実は隼人君が行方不明になったと思われるその日から、不可思議なものが建っていたんです」
こちらです、と歩みを止め、向いた方は古ぼけた店。
「え…これって…」
俺はきょとんとしていた。こんな店、ここを通った時には無かったはずなのにいつの間に…
「…水原先生もそうでしたか」
彼女はやはり、という顔をしていた。
「どうやらこの店は周りからの反応がない限り、誰からも認知することが出来ないようです。先日、すぐ近くの八百屋の店主にも伺ってみたのですが同じ反応でして」
「…何か特別な力が働いていると?」
「それどころか、今回のこの事件に関係してると思います、私は」
…今日は意味がわからない事だらけだ。だが、もしそんな不思議パワーが働いていたとしたら中村を攫っていても不思議ではないのかもしれない。
「…中には誰かいるのですか?」
「無人です。骨董品店のようですが」
無人ならば大丈夫だろう。さっさと中を調べてしまおう。
「…入りますよ」
「はい」
古ぼけた扉を開け、中の探索を始めた。