平凡な男と白髪の少女   作:ふれあすたー

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起きて

「ん……」

ここは……

「あれ…」

身体をゆっくり起こすと見覚えのある部屋であった。

「あっ…そっか…あのあと……」

校長先生から変な事聞いちゃって…そのあと寝ちゃったんだっけ…

 

『2人で性交渉でもすればすぐに…』

 

「………」

違う違う!!!何考えてるの私!!!

そんな…その…えっちなことなんて…私には出来ないよ……

「うぅぅ……」

確かに私のことを妹としてじゃなくて1人の女の子として見てもらいたい気持ちはあるけど…

だけどそういうのってやっぱり元の積み重ねがあるから成り立つのであって…

そもそも私はいつでも隼人の隣にいれるとは限らないし…

「…そうだよね」

私は隼人の事が好きだ。紛れもない真実だ。

だけどそれは所詮私の片想い。

隼人だって好きな人は必ず出来る。

そして、その隣に立てる人は私ではないこともわかってる。

隼人からしたら私は妹。

多分今もそうだしこれからもずっとそうなのであろう。

私は好きでも、彼は私の事を見ない。

わかってるはずなんだけどな…

「…?あれ…?なんでだろ…?」

目頭が熱くなる。どうやら自分では抑えていたつもりでも本能は抑えることが出来なかったらしい。

感情が雫となり、頬を伝う。

わかってる。わかってるから。

だからせめて今は。

今だけは素直にならせて。

________________

「支那美まだ起きねぇな…」

少なくとも昨日から10時間は寝ている。

まぁ健康的といえばそうなのかもしれなくもないが。

それでも8時間程度。いつもより若干遅いとはいえ心配にもなる。

…それかもしくは疲れたって可能性もあるか。そりゃ少しの間とはいえ自分の肉体から離れてたんだからな…

「…にしても魂の癒着、ねぇ…」

正直支那美が生きて帰ってきた時点で信じられないことではあるがまさか性交渉しろ、とはねぇ…

あいつが言うには留まれる程度の思い出ならなんでもいいとは言ってはいたけど。

「どうしたもんかな」

勿論俺は自分の体で支那美の事を穢したくはない。

…欲がないといえば嘘にはなるが支那美に欲情するだなんて変態もいいところである。同い歳だしそういう意識持っても変態ではないけども。

でも妹に欲情するのはなぁ…いや妹ではないけど。

「むぅ…どうするのが正解なのか…」

悶々と考えていると玄関の扉からノックの音が聞こえた。

「ん?はーい」

朝から誰だかは知らんがここに来るということはまぁ誰かしら俺らに用があるということなのだろう。

待たせまいとさっさと玄関の扉を開ける。

「お待たせしま…した?」

「あ、どうも」

思いがけぬ客に思わず言葉が少し止まってしまった。

「なんでお前いんの」

「あの女性にここに住めって言われたので」

相手はコスモス。従順に生きたのに、壊された存在。

「住めってもしかしてここに?」

「はい。住所も渡されまして」

「うん。帰って」

「嫌ですよもうここにいますから」

「帰れよ!」

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「ふーん、直してもらったついでに管理がめんどくさいからここに住んだ方がいいって言われたの」

「まぁ簡単に言えば」

「今すぐあいつを墓に埋めたい」

「私目線から見てもあの人は丈夫そうなんで何しても死なないとは思いますけど」

「機械でもわかるってあいつやべーな」

とりあえず経緯だけ説明してもらったがまったくもって理解はできないし賛成もしてない。が。

「…まぁええか。幸いにもお前の眠るところもあるしそのまま放置ってのは性にあわん」

「ほんとに良いんですか?貴方達を、というより1人手にかけてしまったのに」

「いいよ別に。お前だってやりたくてやったわけじゃないのは知ってる。それに支那美は蘇ってるし俺は何も言わねぇよ」

「優しいんですね」

「甘いと言ってくれ」

それに支那美が許さなければ即刻追い出すつもりだ。お嬢に限ってそんなことはないと思うけど。

「とりあえずお嬢起こしてくるわ」

「えぇ。行ってらっしゃい」

________________

「…ふぅ」

感情を流せる限り流しきったらびしょびしょになってしまった。

服も若干透けてるし早く着替えないと。

と、着替えを始めると隼人の声がドア越しから聞こえる。

「お嬢〜起きてる〜?」

「あ、ごめん。起きてるよ」

「あ〜そう〜?じゃあご飯食べたくなったら出てきて〜」

「着替えたらすぐ行くね」

「お〜う」

意図を最初から読み取ってくれたのかドアは開けないでくれた。

さっさと着替えてご飯食べちゃお。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ?まだ見てたの?」

少女は振り向く。

「別にサービスショットはないよ?貴方達の為に動いてないし」

まぁ別にいいけどさ。

「私達を見てて、楽しい?」

私は見られてて楽しくはない。ずっと監視されてるような気がするから。

「この物語を読み切るつもりなのかな」

この物語は多くの謎が交差してるのに。

「ま、なんでもいいよ」

だけど、私たちの邪魔はしないでね?

貴方達は所詮傍観者なんだから。


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