現実
「あ、この辺でいいわ」
「いいのか?家の下まで送ってもええけど」
「まぁこの辺も暗いわけじゃないしな。支那美1人ならまだしも俺もいるし大丈夫でしょ」
「…刈谷1人は逆に心配になるけどな」
「まぁそれは…同感だけど…」
主に身体能力面で心配になる。犯行者側が。
そりゃぶん殴って病院から家まで飛ばされたくらいだしマッハ超えてる時点で人は軽く殺せる。(1章後半のお話)
「まるで昔の白柊を見てる気分だよ…」
「ん?なんか言ったか?」
いいや。別に独り言だよ。と先生は返した。
「…んじゃ」
「…あぁ」
自分で言ってて割と素っ気無さすぎてほとほと自分のトークスキルの低さを身に染みて感じてしまうが今回ばかりは無理だ。
自分だって何が起きたのかわからない。
もしかしたら、支那美が死んだ所も全て夢だったのかもしれない。
もしかしたら、影魔なんて元からいなかったのかもしれない。
ここ数日の出来事が突拍子もないことだらけで何も考えられない。
だが。
「…わかってるとは思うが、5人は死んだ。これは紛れもない事実だ。実際に俺は警察を呼んだし、テレビでも報道されたくらいだ」
ま、犯人はわかってない扱いだけどな。
先生は俺の心を見透かしたかのように言う。
現実を受け止めろ、とも言われた気がした。
「ただ、刈谷が死んだのが事実だとしても刈谷が蘇ったのもまた事実だ。無駄に考えるより今の現状を考えた方がいいんじゃねぇの?」
「…そうだな。俺らしくなかったわ」
「いやまぁそこまでは言ってないけど」
「それでもキャラじゃねぇよ。俺は俺らしく適当に笑って生きてた方が輝けるわ」
「はぁ…全く…」
呆れた声で、やれやれ、と呟く。
「…刈谷の事、任せてるんだからな。しっかりしろよ」
「おう」
そんじゃおやすみ、と先生は来た道を帰っていく。
まさか先生から任せられてるとは思わなかったけど。
「…そうだよな。支那美の事は守らねぇと」
俺の今背中にいるすーすーと寝息を立てた美少女。
彼女は必ず守りきる。
今度こそ。これからもずっと。
「頑張りますか」
気がつけば輝く恒星も地平線から顔を出し始めていた。
「で、お前らはいつまでこの物語を見届ける気だ?」
少年はこちらを振り向き、冷たくそう言った。
「まぁ確かにこの話はとても奇怪だ。時戻り系の話なんてあまり聞くようなものでもない」
ましてやこんなアホらしい話なんてな。
「でも俺らはこの物語で生きている。動いている。
なのにお前らは面白おかしく指を指しながら笑い続けるか?」
まぁ別にそれでもいいけどよ。俺は支那美にしか興味ねぇしな。
「だが。そんなお前ら全員が望むようなエンディングを用意する気なんてさらさらねぇ」
分かるか?
「分からなくてもいい」
面白いなら笑えばいい。
だけど。
「この物語の意味すら理解出来てない連中は今すぐにこの物語の閲覧をやめろ」
それだけだ。と少年はマンションへと歩んでいった。
5章のラストは全部こんな感じにする気なので楽しみにしててね(全てなるとは言ってない)