平凡な男と白髪の少女   作:ふれあすたー

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研究所

「まぁまぁまぁ、落ち着きなさんな」

「アホかてめぇ!裏切った組織に易々と入れる程あそこの警備は甘くねぇぞ!」

「じゃ、諦めるかい?」

「…!!それは…」

諦める訳では無い。むしろ諦める気なんかさらさら無い。

「…でもまぁ、確かに忍び込み方ミスったら入れなくはなるだろうね。

だからこそ、君に頼むんだろ?」

私はあの場所は全然詳しくないしさ…と校長は言う。

確かにこの中じゃ組織に入っていた俺が一番詳しいのかもしれない。

校長はこの言い方をする限り1度しか行ってなさそうだし、水原なんて論外だ。

となると必然的に俺が詳しい事になるが…

「1人で忍び込むってのは些か荷が重過ぎませんかね」

「そうだね、確かにあそこは見た感じでも相当な広さがあった。場所は特定できてもそこまで行くのにも大変だし、帰りなんてそれを持ってこなくちゃいけないから余計…」

「せめて入口に近い部屋にあればなぁ…」

時空間干渉装置。

その名の通り時空間を自在に操ることの出来る未来の装置。

まず『時空間観測研究組織』自体が俺の住んでいた時代より遥か先の時代で作られた組織である。

過去から未来までこの組織、通称ヤイカルが存在する。

しかし、未来の研究所でも時空間干渉装置は生産力が低く、あまり置いてはいない。

この時代は組織内で『過去』と呼ばれているため、時空間干渉装置は現代や未来以上に置いてはいないだろう。

影魔が研究室に置いてはいるがあれも貴重な1台だろう。その他の装置はもっと最深部にあるはずだ…

ならば…

「…ルートが決まった」

「お、随分決めるのが早いねぇ。

もう少し考えなくていいのかな?」

「いいや、これでいい」

影魔の研究室に忍び込む。これが一番だろ。

他のところは場所すら知らない。それに影魔は今回の件で上層部に呼ばれている可能性があるしコスモスは破壊されたはずだ。

今から行ったほうが確実であろう。

「よし、じゃあ水原、行くぞ」

「なんで俺」

「こっからじゃ少し遠いんだよ。大きさ的にはあの車でも積めるから移動するのは楽な方がいい」

「…分かったよ。刈谷の為だ。何だってやるさ」

「そうか…ありがとな…」

「バーカ、礼は終わってからだ」

「…せやな」

「じゃ、私は刈谷支那美をしっかり入れておくから、出来るだけ早くね?」

「おうよ」

___________________

「…さて、着いたのはいいが」

俺らは研究所付近のコンテナの近くまでやってきた。

「…デカすぎねぇか…?」

「まぁそれは分かるな。よくこんなんで騒ぎにならないもんだ」

「この街に住んでたが初めて見たぞ…」

水原も驚きの声をあげている。

(…そうだよな、なんでこんな所にあるのに今まで大きな騒ぎにならなかったのだろうか…)

まぁ今は関係の無いことだ。

そんな事より。

「水原…入口近くにいるあの見張りはあと6分であそこから30秒間居なくなる。そこを見逃さずに潜入するぞ」

「オーケイ…!!」

水原は突入する気は満々の様だ。

勿論、俺も。

「…あ」

「あ?」

言い忘れていたことがあったの忘れてた。

「…この研究所内には『時の観測者』という称号を持った幹部クラスの奴がいるらしい…

なんでも、すべてを知っているのだとか」

「…は?」

時の観測者。この研究所内屈指の実力を持つ人間だとか。実際にアホみてぇにプライドの高い影魔でさえ認めている、影魔の憧れの様な人間だ。

そんな奴がこの時代…

いや、すべての時代に存在するらしい。

さらに、そいつの正体を知るやつは研究所のトップに立っていたもの、灘 芙佳しか知らない。

しかし灘 芙佳も『過去』の時代で亡くなってしまったが故に、そいつの存在を知り得るものは誰一人としていない。

「もしかしたらそいつが襲ってくるかもしれない…

周りは十分、警戒しろよ」

「いやいやいや…

すべてわかってるなら無理だろ」

御最も。


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